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<4>新しいお客さん

連載小説【週末カフェ2510】

そして着いたのは、大きな服屋さんだ。
「こんなのどうでしょう?」
と言って見せたのは、淡いピンクのワンピース。
試着してみることに。
「どうですか?」
「すごく可愛い!これに決めちゃえば」
「じゃあ、これにしようかな」
会計を済ませて、お店を出ようとした時だった。
一花ちゃんが、
「あれ?あそこにいるのって……」
と言いながら指さす先には、なんと竹中くんの姿があったのだ。
「え!?どうしてここに竹中くんがいるの?!」
私は驚きを隠せなかった。
彼に声をかけることにした。
「竹中くん!!」
すると、こちらを振り向いたので、手を振る。
「あー、やっぱり!竹中くん、なにしてるの?」
「いや、ちょっと買い物しに来ただけだけど、
まさかここで会うなんて思わなかったよ。偶然だね。」
それから、私たちは3人で近くの喫茶店でお茶を飲むことにした。
「お2人は付き合って長いんですか?」
「うん、もう2年かな」
「結婚しないんですか?」
「まだ考えてないんだ。お互い忙しいからなかなかタイミングがなくてね」
「へぇ〜、そうなんですか。なんか意外です。」
「そうかなぁ……。あ、そういえば一花ちゃんは、どんなデートしたい?」
「私は、普通に公園とか散歩したり、一緒にカフェ巡りしてみたいなぁ〜」
「いいねそれ」
「普通がいいよね」
「でも、その前に夏バテに気をつけないとね」
「そうだね、お互いに頑張ろうね」
「はい」
そう言って、この日は解散した。
また明日から仕事、がんばろう。

そして土曜日カフェ営業の日になった。
今日は新しいお客さんが来た。20代前半くらいの男性で、大学生かな。
「あの、ここってコーヒーが飲めるところですか?」
「はい、当店ではコーヒーだけではなく、
クリームソーダなどもございます。」
「じゃあ、コーヒーをお願いします。」
注文を受け、コーヒーを作り始めた。
コーヒーを作っている間、店内を見渡していた男性はこう言った。
「綺麗なお店で落ち着きますね」
褒められて嬉しい気持ちになった。
コーヒーができたので男性の元へ運ぶ。
「コーヒーお待たせしました。」
「ありがとう」
「ごゆっくりどうぞ」
男性は美味しそうに飲んでくれている。
その後、会話もなく、
「ごちそうさま。また来ます」
と言って帰って行った。
また新しいお客さんが来た。
40代後半くらいの女性で、 スーツを着ていることから、
どこかに「行く」のか、「帰る」のかわからなかった。
店内を見渡していた女性はこう言った。
「落ち着いた雰囲気で良いわね」
「ありがとうございます」
「あら、あなた若いのね」
「今年で31になりました」
「私は、42歳になるわ」
「そうなんですね」

いろんなお客さんが来るな。
でも、やっぱり一番多いのは常連さんだよね。
そんなことを考えながら、次のお客さんの接客を始めた。
30代前半の男性。この人も常連さんだ。
名前は知らないけど。
彼はカウンター席に座り、コーヒーを頼んだ。
しばらくすると、彼が話し始めた。
「あの、ちょっと相談に乗って欲しいことがあるんですが……」
「私にですか?」
「はい。えっと、まずは自己紹介から。
僕は34歳の会社員なんですが、ある人に恋をしてまして……」
「はぁ」
恋愛の話か。まあよくあることだよね。
「僕が好きな人は、仕事ができる人で尊敬してたんですよ。
でも、その人が最近ミスが多くて心配になってきて……」
「なるほど……」
「もしよかったら、アドバイス貰えないでしょうか?」
「うーん、難しい質問ですね。
その人のことよくわからないんでなんとも言えないんですが、
とりあえずその人の仕事ぶりをよく見てみたらどうでしょう」
「わかりました! 頑張ってみようと思います!」
「応援してます」
そして、男性は会計を済ませ、帰っていった。
今日はたくさん接客したので、疲れた。早く寝よう。

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