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米原晶子「時空を旅した。と感じられた休日」(4日目)

静岡に入って4日目、ちょうど滞在の折り返し地点にある今日は、ようやく傘を持たずに出かけられる良い天気。昨日は天気が今ひとつで写真を1枚も撮れなかったけれど、今日は沢山良い写真を撮りたい。一昨日強い雨風で全く富士山が見られなかった三保の松原を、フェリーで再訪するのも良いかも。せっかく1週間も滞在できるので、土日は自分の活動と結びつけるようなリサーチというよりも、休みの日をどう過ごしたいかその日の気分の赴くままに動いてみようと思っていた。あれこれ考えながら、意気揚々と清水駅へ。

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ホテルに荷物を預けたら、清水魚市場で鮪を食べながら今日の過ごし方を決めようと、銀座通り商店街を抜けて海沿いへ向かう。お目当ての市場に着いた頃には、早速気づいてしまった。清水エリアは、徒歩で移動するにはスケールの大きな地域だと。気温はぐんぐん上がり、市場に着く頃には10分以上歩くと暑さのダメージがかなりある。この日差しの中でフェリーに揺られて、三保を散策するのは少し体調面が不安かも。ということで、急遽行き先を静岡市東海道広重美術館に変更する。便利な場所にあるとは言い難い美術館だけれど、歌川広重の名を冠した日本で最初の美術館であること、また東海道の宿場町「由比宿」の本陣跡地に建っていることもあり、できれば行ってみたかった場所に思い切って行くことにした。

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門構えや庭園など本陣の趣を残す敷地に建てられた美術館では、広重の作品を始めとする日本を代表する浮世絵師の作品が数多く展示されている他、浮世絵の技法や歴史をわかりやすく理解できるガイダンスブース、浮世絵の体験コーナーもあり、見応えは充分だった。9月11日までは、「浮世絵で学ぶ日本史 源平の争いと鎌倉幕府」という企画展が開催されていて、現在の大河ドラマを観ている方には特におすすめしたい。

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美術館の向かいには、趣のある平家がある。ここは由比正雪の生家と言い伝えられているそう。代々紺屋(藍染屋)を営んできた由比家の工房であり染め物の小物や手ぬぐいを販売している。接客してくれた奥様に、「素敵なお店ですね。」と声をかけると、由比正雪のことや紺屋さんならではの家屋の特徴などについて詳しく教えていただく。

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歴史資料館などの再現展示ではなく、江戸時代の人々の生活と現代の生活が途切れることなく続いている場所に、私は初めて身を置いたように思う。飾り気のない穏やかな奥様の語り口からは、幕府転覆の企ての中心人物とされる正雪のことやこの地で何百年も家業を続けてきた凄みは想像もつかず、だからこそ余計になんとも言えない深い感動を覚えた。ありきたりな表現しかできないのがとても悔しい、特別な体験だった。