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RuiYamaguchi「芸術が本質的に地域に還元するもの(6日目)」

前日はかなりグダッていたが、ポラロイドカメラで撮影はじめてから急に吉原の色んなことに興味が向く様になり(おせぇ)、新しいフィルムを買って、朝から広見公園に。プチャーチン提督と日本の漁夫の「友好の像」を撮った。

吉和商店街には「3776type」という富士山のふもとの美味しい食材を使った「ピロシキ専門店」があったらしい。

富士山の標高とかけて3776種類のピロシキを作るとHP上で意気込まれており、自分のホットサンドと似たバイブスを感じたのと、ロシアは今何かとアレなのでぜひ行きたい!と思ったが、残念ながら閉業していた。別の人に聞き込みをしたら、ピロシキ専門店の元店主は富士市内で別のお店をやっているらしい。

今も残っている公式サイト

なぜ富士市で「ピロシキ」なんでしょう。 ー その背景には、富士とロシアを結ぶ歴史的な出来事があったのです。 その出来事とは…?

こんな気になる文言があり調べてみたら、上述のプチャーチン提督の像に繋がるのだ。

ロシア軍艦ディアナ号は、海軍中将プチャーチン提督が乗り込み、日本に開国と通商を求めて来航し、嘉永7年(1854年)10月に、伊豆・下田港に入港しました。しかしこの時、安政大地震に遭遇してディアナ号は大破。修理のために戸田港に向かいましたが、途中強い西風により漂流し、富士市の三四軒屋沖に沈没したと伝えられています。

ロシア軍艦ディアナ号とその錨

富士とロシアの奇妙な繋がり…こういう土着の歴史や寅話から作品のアイデアが生まれたりする。リサーチは大切だ。入場料タダだし5分チラ見して帰ろうと思った「富士山かぐや姫ミュージアム」に気づいたら1時間もいた。

その後は富士駅前の商店街へ。吉原商店街に滞在していたため、他の駅やエリアには実はそんなに行ってない。

昨年通っていた現代アートの学校の主催者が「するがのくにの芸術祭富士の山ビエンナーレ」のディレクターを務めており「もし富士駅の商店街行くなら"イケダはきもの店"の池田さんによろしく言っといて」と言われたので、よくわからないけどとりあえず突撃することに。

平日昼間に怪しい無職が訪問したにも関わらず、色々お話しを聞かせてくれた。イケダはきもの店さんのビルは富士の山ビエンナーレの展示会場になっているどころか、参加アーティストが滞在制作できるよう数ヶ月泊めさせているそう。

2020年の大野公士さんの作品。ビエンナーレ終了後作品は撤去されるが残されている

「作品が0から出来上がっていく様子を見れるのは特権」

「仕入れで月に1度東京に行くから、受け入れたアーティストが展示やっていたら見に行ったりする」

と言っていたのがかなり印象的だった。

日本で(世界中で)勃興する芸術祭は本質的な意味で地域に何が還元されるのかと以前から疑問を抱いていた。例えばアーティストが制作した作品をその地域に展示し、他所から集まったアートラバーが作品を見て回り、地域にお金を落とす。芸術を観光資源とすることで経済効果は生まれるかもしれないが、金銭以外でそこに何が還元されているのか。アーティスト、地域住民、訪問者は本当の意味で連携できているのだろうか。

そうした疑問から今夏、テーマが「Lumbung(インドネシア語で米倉=共有)」、スローガンが「No art, Make friends」となったドクメンタ15を観に行った。総合ディレクターはインドネシアのコレクティブ「ルアンルパ」が担当し、これまでの西欧中心且つ個人主義的なアートの世界を、別の視点から乗り越えようとする試みに興味を抱いた。

ドクメンタに日本人として唯一出展していた栗林隆さんが「ドクメンタはカッセルの住民にとって5年に1度やってくるUFOのようなもの」と語っていたのが印象的だった
はじめてのドクメンタだったので過去回と比較できないが、至る所に椅子やテーブルが置いてあり、話しやすい(=友達を作りやすい)設計になっていた

このドクメンタ15が正しい回答なのか分からないが、単発で芸術祭が終わるのではなく、持続的な関係を築いていくという意味では、池田さんとアーティストの関係性はその理想なのではと感じた。

他の商店街の人たちは保守的な人が多く、芸術祭に対して難色を示していたらしいが、「どうして池田さんはそんなにオープンなんですか?」と尋ねたら「大学でずっと演劇をやっていて、みんなで何かを作り上げる楽しさを知っていたから」と言っていた。近所の中高生に、上述した大野さんの作品を見せたりするらしい。

イケダはきもの店の隣の店舗は別のアーティストがスタジオとして利用している

ドイツではなく、意外なところで意外な収穫があったように思える。また、このプログラムもそういう意味で、そうなのかもしれない。

富士商店街に行ったら行くべきと聞かされていた「名花堂」が定休日だったので池田さんにオススメされた「金時」へ
茶そばも美味かったが名物「かつ皿」が美味しかった(デカいの頼めば良かった!)