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だるいせつないこわいさみしい

boy(14歳息子)の、中2のときの国語の
教科書が転がっていたので、
今の中学生の国語って、どんなだろうな、
どらどら。
とページをめくってみる。

歌人、穂村弘の短歌が載っていた。
ああもう、いつのまにか、穂村弘は、
教科書に載るほどの
重鎮になってしまわれたのだな。
載せられていた短歌は一句だけで、こちら。

ゼラチンの菓子をすくえばいま満ちる
雨の匂いに包まれてひとり 

穂村弘

空気感、を感じる。
急に、ひき、で撮った映像みたいだ。
梅雨感のある。
たくさんの短歌の中で、これ、だったんだな。
と思う。


babyちゃん(17歳娘)が中学生のとき、
朝、学校で、読書タイム、と言うのがあり、
それはすきな本を読んでもいいタイムだった。
babyちゃんは、よく、その選書を
親に委ねていた。めんどくさいのだ。

なに読んだらいい?選んで。

と。
わたしがよく選んでいたのは
江國香織と穂村弘の本だった。

読了。次の穂村弘。読了。次の穂村弘。
たまに江國香織。時々ムーミンとか。

結果、babyちゃんは、15歳までに
家にあるだいたいの穂村弘を読んでしまった。
おもしろいとも、おもしろくない、とも
言わなかった(もろもろ、表情に出さない、
無口っ子)が、あるとき、中学校の図書館に
置いて欲しい本をリクエストする
取り組みがあったとき、

「穂村弘 絶叫委員会」

と書いたようだった。
しばらくして、

「図書館にあった。絶叫委員会が。」

とbabyちゃんが、言った。

かくして、家族ぐるみで、田舎の小さな
中学校の図書館に、絶叫委員会を置くことに
成功したのである。
やったな。わたしたちは。

わたしが、教科書に、穂村弘を載せていい、
と言われて選句を頼まれたとしたら。
何にするかなあ。
と、頼まれてもいないのに、
勝手に選んでみる。
わたしなら。

ねむりながら笑うおまえの好物は
天使のちんこみたいなマカロニ

サバンナの象のうんこよ聞いてくれ
だるいせつないこわいさみしい 

このばかのかわりにあたしが
あやまりますって叫んだ森の動物会議

「美」が虫にみえるのことを
ユミちゃんとミナコの前でいってはだめね

穂村弘

うんこ、ちんこ、動物、虫。
このあたりが入っていれば、まちがいない。
小中学生などは大喜びだろう。
すでに、2番目の句などは
小学生には人気の句のようだ。

この中には、
「手紙魔まみ、夏の引越し」
という本の中から引用した句がある。

まみ、という女の子から、穂村弘宛に
送られてきた手紙に書いてあった句、
という設定で、すべてそれはまみの作った句、
とある。
わたしは恥ずかしながら、
ずっとそれを、実在するまみが作った句、と
信じていた。

しかし、著作は、穂村弘、となっていたので、
これは、まみの作ったものではないの?
と思っていた。

しかし最近、どうやらこれは
まみになりすました
穂村弘が作った句であるようだ。
と気づいた。
だまされていたのはわたしだけか?
ふつう、わかるか。

驚愕した。
震えあがる。

ほんとうに、本の中に、まだ少女と大人の間
である
「まみ」
が存在していたのだから。
あとがきに至るまで、完全にだまそうと
されていた。

どの句もすごいなあ、と思っていた。
すごい女の子。
それはそうだ。
まみ、は、穂村弘、なのだから。

とんでもないことをする。
少女のこころを持った、とんでもないおじだ。

ある境地まで行くと、誰かになりすました
こころで、短歌が作れたりするのですね。


くらくらします

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