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スタートアップ経営者の皆さん、忠義の臣である広報担当をつぶさないで


この1年は、激おこな出来事が立て続けに起こっています。

最近、知人のスタートアップ広報担当者が次々と会社を辞めています。
この働き方改革がすすむ世の中において、体を壊しかけてという方々が多いです。

家入一真さんの「社員数人フェイズでも広報・PRは入れよう」ツイート以来、広報を雇う経営者が増えましたが、はじめての採用が故に、家入さんの伝えた意図を理解せずに、本来と違う期待を広報にしているからかもしれません。

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https://twitter.com/forbesjapan/status/1060453456945700864?s=20

これだけモノやサービスに溢れた世界の中で、「意義」に欠けたものは、誰からも選ばれない。哲学や思想を持った起業家が語る「物語」のいち登場人物になりたくて、ユーザーや社員は集まるのではないでしょうか。
そういった意味で、起業家はストーリーテラーであるべきだし、それを広く伝える役目である広報は、熱量という圧力が最大に高まっている小さな組織のうちから、むしろいるべきであると僕は思います。

広報は起業家のストーリーを広める拡声器です。記事掲載数のみを稼いだり、社内の何でも屋になるために入社するのではありません。

さて、体を壊すまで働いてしまうのは、スタートアップ広報ならでは背景はいくつかあると考えます。

①広報活動は数字で測りづらい
記事掲載数などは測れますが、会社のネタがあるタイミングや世の中のトレンド、メディア側のタイミングなど、複数の条件が合わないとなかなか記事化はできないものなのです。
その背景を無視して、途方もない件数を目標に課せられていると、無茶な働き方を強いられることになります。

メディア露出は恋愛と同じで、付き合った人数よりも、その付き合いの質です。

付き合った人数を重視していると「こいつは誰でも構わず雑な付き合いをする」と認識され、そのうち付き合ってもらえなくなります。

②コストセンターとしてのバックオフィスという引け目
お金を稼ぐ部署ではないためとプレッシャーを与えられたり、振られた仕事をなんでも受けてしまう傾向はあると思います。ただ、広報担当が向上させた認知や作った取材記事経由で問い合わせや受注につながるので、その貢献度が数値化されていないだけの話で、そこに引け目を感じる必要は皆無と考えます。

てか、そもそもバックオフィスじゃないから!

会社を一番に売り込む一番槍であり、トップ営業だから。

③広報と人事、マーケティング、総務、経営企画、営業など複数担当の兼任。
②の兼ね合いで、人材不足からか、よく複数のポジション兼任となります。単純計算で仕事量は2倍となりますから、土日もなく働いてしまう人が少なくありません。

よく考えてください、エンジニアに営業兼任しろと言いますか?言いませんよね?
それと同じことを言ってると考えたら暴力的に思えませんか?

もちろんスタートアップの人材不足は重々承知です。ただ、労務上非常に危険なことをさせているという認識のもとアサインしたほうがいいです。

大企業の場合は、広報に限らず、全体的に分業化が進んでいるため、このようなことはあまり起こりません。

④労務環境の未整備
これは広報だけに限ったことではないのですが、大企業なら残業時間をしっかり管理されます。中にはPCへのログイン時間までチェックする会社もあります。しかし、スタートアップではその辺の管理がザルで、土日問わず働いてしまっている場合があります。

大企業から、また複数社で経験を積んだ広報は「おかしい」と思えますが、スタートアップからキャリアをはじめた広報は「おかしい」と思えず、声を上げることができない場合があります。

⑤経営者の理解者であるがゆえ、必要以上に頑張ってしまう。
広報は経営者の伴走者です。経営者の想いを仲立ちとなって、社外と社内に伝えます。
経営者の想いに寄り添い、力になりたいと考えるがゆえ、担当の兼任や無茶な目標など受け入れてしまいます。文句を言うどころか、不満を持つ社員の緩衝材の役割を知らないところでこなしたりもします。


スタートアップ広報の皆さまへ
働き方改革が叫ばれてからもう数年がたちます。少しづつ状況は改善していますが、未だにブラックな環境で働いている人たちも見受けられます。
例示として正しいかはわかりませんが、オーストラリアやニュージーランドは週休三日、残業なしで働いてる方が増えています。私がイギリスで勤務していた時代、現地社員は2週間の休みを年3回とり、定時上がりは当たり前で、それどころか早めに帰ったり、4時には日向ぼっこを始める人たちもいました。

別の先進国ではそんな働き方があるのに、我慢して体を壊すなんて馬鹿らしくないですか?
ワークライフバランスの取れた会社は必ずあります。転職の際は、面接だけ受けて飛び込むのではなく、採用プロセスと関係ないその会社の人を捕まえて、労働環境を調査して下さい。

過酷な労働条件にNOを突きつけ、まともな会社で働くことは、ブラックな企業の撲滅にもつながり、声を上げられない誰かを救うことにもなります。

スタートアップ経営者の方々へ
どんなにキラキラでイケてる風に見えている会社でも、心ある優秀な広報が離れた会社は「あそこはヤバい」と我々は分かっています。何人広報担当を変えても思った通りの動きをしてくれないなんて感じる事があったら、自分の想定が広報という職種の実態と大きく乖離していないか振り返ってみてください。

いくつかの上場企業を経験してますが、彼・彼女たちのように志高く、泥臭く働く社員はなかなかおらず、酷使したり、手放していい人材ではありません。

数字にばかりこだわり、そこにあるけど可視化が難しい価値を見ないふりするような経営者は、あなたたちが大好きなキングダムや三国志の名将とはかけ離れた存在であると私は考えます。

おわりに
私自身も上司が仕事を丸投げし、手柄は上司、失敗は部下に、そして残業が150時間という職場で体を壊しかけたことがあり、過労問題には人並ならぬ意識を持っています。

当時、世の中で大きな話題となった過労問題に携わっていた私が、過労状態にあるなんて矛盾していると思い、その会社を離れました。

今は、休日にSlack通知が来てもガン無視ですw 経営幹部や上司を教育してあげればいいのです。「ああ、こいつは休みの日は連絡ガン無視なのか」と(当たり前や!)。

時間内に仕事を終え、家族やパートナーと夕食を取り、子供と遊び、趣味に時間を当てる、そんな生活が当然なのです。

それを忘れずにおかしいと思ったら逃げるという選択をいつも持っておいてください。

それでは

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