TOC(制約理論)まとめ 基本的な考え方1

TOC(制約理論)の知識定着を目指し、学習したことをアウトプットしていきます。前回までスループット会計についてまとめていましたが、スループット会計の突っ込んだ話をするまえに、TOCの基本的な考え方を整理しておいた方がよいと思いました。そのため、今回はTOCの基本的な考え方を可能な限りイメージ化して、まとめてみようと思います。

全体の能力はボトルネック工程(制約条件)に依存する
まず、TOCの基本となる考え方になる上記についてイメージ化して整理します。説明のモデルとして下の図を用います。(Image 01)

基本的な考え方_Image01

ある工場では、製品Xと製品Yを製造しています。製品Xも製品Yも市場では大人気で飛ぶように売れています。作れば作るほど売れる状態です。ですので、製造数量=販売数量だと考えて下さい。

製品Xの製造過程は、工程1(X) → 工程2(共通) → 工程3(X) → を経て、市場に出荷されます。

製品Yの製造工程は、工程1(Y) → 工程2(共通) → 工程3(Y) → を経て、市場に出荷されます。

どちらの製品も工程2を通る必要があります。

製品X、製品Yの両方を処理している工程2は、生産能力に限度があり、ほかの工程と比べて処理量が劣ります。2つの製品を処理するのだから他の工程と比べたら倍以上の処理能力が欲しいところです。しかし、技術的な制約があり、それは難しいという設定にしましょう。そのため、工程2(共通)がボトルネック工程という設定にします。

TOCの考え方「全体の能力はボトルネック工程で決まる」
「全体の能力はボトルネック工程で決まる」というのがTOCの基本的な考え方になります。これがイメージできないと先に進めないので、可能な限り図を用いて説明したいと思います。また、基本的に会社は利益を得ることを目指しますので、ここでも利益を得ることを目指に設定したいと思います。

①市場で飛ぶように売れるので販売機会を増やした場合

製品Xと製品Yは市場で大人気なので、飛ぶように売れます。飛ぶように売れるのでもっとたくさん販売すればもっと利益を得ることができます。そこで拡販戦略として、販売店を増加したり、販売員を増員したりして販売数量を増加させたとします。(Image 02)

基本的な考え方_Image02

最初は問題ありませんが、そのうち、製品在庫が底をつき、品切れ状態になってしまいます。(Image 03)

基本的な考え方_Image03

なぜ、製品在庫が底をついたかというと、工程2がボトルネックとなり、工程3の仕掛在庫が減少し、製品を完成させられなくなったことが原因です。(Image 04)

基本的な考え方_Image04


②製造量の増加を計画した場合

販売に対して、製造が追いつかないため、製造量を増やすことにします。製品Xも製品Yもどんどん作れということで、材料を大量に調達し、すべての工程で能力の限界まで製造を行うことにしました。

しばらくすると問題が起こります。工程2の仕掛在庫が大量に増加し、工程2の処理が追い付かなくなります。(Image 05)

基本的な考え方_Image05

ここからは先ほどと同じような現象が発生します。工程2の処理が滞ることで、工程3の仕掛在庫も使い果たします。(Image 06)

基本的な考え方_Image06

工程3の仕掛在庫が減少するため、製品が完成せず、製品在庫も枯渇します。(Image 07)

基本的な考え方_Image07

そして最終的には、製品を販売できなくなります。(Image 08)

基本的な考え方_Image08

これらはとても基本的な考え方になります。ボトルネック工程を考慮せずに販売数量を増やしたり、増産を計画した場合、結局ボトルネック工程を軸に問題が発生します。
生産全体をここまでシンプルにして説明すると非常に当たり前の理屈です。しかし、実際の企業運営ではこのようにシンプルに考えることなかなか難しいのが現実ではないでしょうか。

実際には個別最適の意思決定がされてしまう
実際の現場では、機能別に部署が分かれており、部署ごとの管理がされていることが多いです。例えば、今回説明してきた工程1、工程2、工程3を設計部、製造部、品質管理部などのように置き換えて考えてみてください。部署ごとに評価指標が用意されていて、たとえば部署内の稼働率だったり、品質だったり、コストだったり、とにかく部署内の評価基準を中心に意思決定が行われていることが容易に想像できます。部署間で喧嘩しているような会社もよくありますし。しかし、部署内だけの意思決定は企業全体からみるとただの部分最適です。いくら各部署で効率を高めたとしても、ボトルネックの改善には繋がっていないのであれば、全体の利益には貢献していないということです。

利益を最大化するためには
利益を最大化するためには、ボトルネック工程を最大限活用することが必要です。ボトルネック工程の能力を高めるとか、ボトルネック工程の時間効率を最大化するとか、とにかくボトルネック(制約条件)を軸に意思決定をする必要があります。
その方法については次回に繰り越したいと思います。

この辺りの話がひと段落したら、スループット会計に戻る予定です。回り道のようで近道だったりします。引き続きお付き合い願います。



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