見出し画像

【経営】キーエンスの秘密④商品開発

キーエンスの秘密シリーズ第4段です。勤めた期間の70%以上、私が所属していた部署です。
開発のお仕事を通して、キーエンス本社内の様々な部署ともやりとりをしました。今回は開発力について記載したいと思います。

商品開発の流れと役割

まず事業部のお話から始めます。キーエンスでは私が退職するまで8事業部、2020年現在では9事業部に分かれています。

これらは人事部とかという職種の意味ではなく、商品カテゴリー別にビジネスを展開している事業部のことです。別の会社の表現でいうと、”社内カンパニー制”のようなものです。

そして各事業部には、4つのグループがあります。
商品企画、商品開発、販売促進、営業の4つです。ちょうど、この並びの順に商品が生まれていきます。

①商品企画: そもそもどのような商品があれば、顧客の課題を解決してビジネスとして付加価値をあげられる(利益を生む)か

②商品開発: 企画担当の原案を元に、いかにして実現するか(商品力・品質・コスト・納期のバランスの最適化)

③販売促進: カタログやメディア媒体も活用しながら販売戦略を練り、いかに営業担当含めて利益を最大化するか

④営業:担当する商品とテリトリーを考えて、いかに最も高くかつ多く採用してもらうか

それぞれ重要なミッションを持ちながら、商品ができていくわけです。
担当人数については伏せておきますが、期間としては、商品企画0.5-1年、商品開発1-3年という歳月が費やされます。

この中で開発のお仕事というのは、技術的解決、機能仕様の実装、競合優位性・特許による優位性維持、外部の技術活用、生産・検査の方法、原材料コスト交渉、法律規格観点の確認など多岐に渡ります。

担当商品における商品力・品質・コスト・納期のバランスを最適化することが、開発のミッションとなります。これらがどれかが欠けたり質が悪いと発売することができません。

特に、これら全体の責任を持つ物件責任者(プロジェクトリーダー)のミッションはとても重たいと言えます。

開発と設計

キーエンスでは、全員がお仕事に対する付加価値を求められます。誰か上司やリーダーから仕事の依頼があった内容であっても、その内容と目的を考えて最適な進め方や付加価値を求められるのです。

つまり、商品開発においては単なる決まったことを”設計”するだけではダメです。設計とはすでに決まった仕様どおりにものを実現することであって、求められている開発とはより付加価値をつける、またはより安く、より短く仕事を進めることです。

もちろん作るものが決まった後は、そのような作業的なお仕事も出てきますが、そのような内容は社外の人に任せたり、新入社員が仕事に慣れるために担当したりします。

他社とは一味違う付加価値のある商品

キーエンスの業績を支えるポイントとして、価格を自ら決められる付加価値のある商品という説明をしました。(過去記事にあります)
もう少しこの点について整理してみましょう。


まずとんでもないことを企画開発しているのかというとそうではありません。
顧客ニーズというのは、どの時代にもそうそう変化するものではなく、やりたいことは同じなんですね。

例えば、ある金属加工部品を製造している会社があるとして、この会社のミッションはエンドユーザーさんからのお仕事の依頼どおりに安定してものをつくることにあります。
その中で、「できたものを検査する」というニーズがあります。

このニーズは普遍的なもので、手段は変わっても、やりたいことの本質は変わらないのです。検査をいかに早く誰でも簡単に正確に行うか?という困りごとを解決する商品を提案すれば、高くても売れます。

なぜなら、それにより検査時間が半減して、結果的に人件費削減につながったら、それだけの価値があるからです。その顧客すら気づいていないこと(まだその手法を知らないとか)であればよりベストです。

この例における競合は既存の検査方法にあるわけですが、そこにこれまでにない工夫や他社にない機能などを付け加えていくのです。

こういった内容については、正直”センス”が問われる内容です。ですから10人に幕の内弁当を作ってもらったら10種類できるように、商品開発においても担当する物件責任者によって結果が変わってきます。

最後は人

開発の物件責任者や企画担当というのは、その人の考えや行動に依存するため、型にはまった手法というのは存在しません。

ここもまた不思議なことなのですが、キーエンス社内には、このようなことを任せられる人が比較的たくさんいると思います。

それは採用時に何十人、何百人から生まれる確率的なものと思うのですが、企業風土・文化と相まって、それらの職種を担当できる人が生まれてきます。

人こそがキーエンスの強さの根源でもあり、また一個人がいなくなっても問題なく事業が継続できる組織力が背景にあります。

次回は企画についてお話しようと思います。

今後、記事を継続していくモチベーションになります。 よかったらサポートをお願いします。