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michitekuが考えたいテーマ、Shared Decision Making 〜Shared Decision Makingとは(基礎編)

michitekuの大野(看護師)です。michitekuは社内ニックネーム制でチームメンバーからは「ゆーみん」と呼ばれています。
michitekuはがん患者さん、お一人お一人の「納得のいく意思決定」を実現したいという思いを持って活動を行っています。

実現するための方法はたくさんありますが、その一つとして今回は「Shared Decision Making(シェアードディシジョンメイキング:以下SDM)」を考えていきたいと思います。
michitekuはがん患者さんのためのサービスを展開していますが、SDMはがん患者さんに特化したものではなく、どの疾患の方にも適応されるものです。
あまり堅苦しくなく、でも真面目に「SDM」について書いていきたいと思います。
まずは、第一弾、基本編としてまとめてみました。


1. 意思決定支援の歴史

 医療における意思決定は時代と共に変わっています。
その歴史は、医療における全てのことを医師が決定する時代「パターナリズム(父権主義)」から始まります。
 そこから、患者の「知る権利」「治療の選択の権利」の高まりにより、「Informed Consent(インフォームドコンセント:以下IC)」の時代がやってきます。医師は専門家として情報と意見を患者に与え、決定するのは患者というかたちです。「患者の意見が尊重されるようになった!」と喜んだのも束の間、「専門的な医療情報を患者が完全に理解して決定することは難しいよ…」「一人でなんて決められない!」いう問題が発生しました。
 そこで、「じゃあ医療の専門家である医療従事者と患者さんで一緒に決めていきましょう」という考えが生まれました。これが「SDM」です。SDMでは一緒に決めていくメンバーとして、医師だけではなく医師以外の医療従事者(看護師、薬剤師、社会福祉士、など)と患者の家族も含まれており、対象となる人が広がっています。
とってもとってもざっくり言うとこんな感じの歴史。

michiteku作成

2. Shared Decision Makingとは?

 SDMとは「医療従事者と患者が協働して、患者個人の関心・嗜好・目標・価値観に沿った、患者にとって最善の医療上の決定を下すに至るコミュニケーションのプロセス」と定義されています。これにも色々な定義がありますが、共通していることは、医療従事者側からは「医療的な情報」を、患者側からは「価値観や人生観」を共有すること、そして、両方の情報を照らし合わせながら、患者が「これだ!」と思える方針を患者と医療従事者が一緒に見つけ出していくことです。実際には「これだ!」とまで思えることは稀で「これでいいかな、こんなもんかな」と思える状態だと思います。
 ICとの違いは様々なところで説明されていますので、ここでは詳細は割愛しますが、ICは患者と医療従事者とのやりとり(矢印)が1回ずつなのに対し、SDMは同じ方向を目指すために何度もラリーを行うイメージかなと思います。
 さらには、「一緒に」ということも要素の一つであり、患者か医療従事者かどちらかだけで成り立つものではなく、両者の理解と協力があって成り立つものだと思います。
 そのままですが、Shared・Decision・Makingは患者側と医療従事者側が情報をShareしてDecisionをMakingすること。(ルー語。分からない世代の方はごめんなさい)
ですが、実際には「価値観」て、簡単に話せるものでも共有できるものでもないよなぁ…と思ってしまうところもあります。

引用:患者の望みを支える「患者主体の医療」 実現のための研究会 報告書 ~医療従事者と患者の共有意思決定が成り立つ社会の実現に向けて~
太枠で囲われているところがSDMの対象。

3. Shared Decision Makingの現状

 最後に、そんなSDMは現在、日本の世の中でどのように取り扱われているのでしょうか?
 まずは、国。上の図でも引用している厚生労働省の「患者の望みを支える「患者主体の医療」 実現のための研究会 」内ではSDMを行うことでの診療報酬加算が検討されています。(まだまだ実現には遠そうですが…)国としても推していきたい考え方のよう。
 臨床現場としては、「大腸癌治療ガイドライン医師用」において2019年度版では「インフォームドコンセント」であった記載が2022年版では「Shared Decision Making」に改訂されています。また、各学会でもSDMをテーマとした演題が多く発表されており、SDMをテーマとした論文数はICの論文数を超えているそうです。
 そして、患者さん、ご家族向けには市民公開講座でテーマとして取り上げられたり、新聞のコラムでも話題にされている方を見かけたりするようになりました。
 ここまでは一部分を取り上げてみましたが、インターネットでSDMを検索するとたくさんの情報がヒットします。
SDMは一種の流行りなのか、それとも常識となっていくのか…の見極めは難しいですが、注目されている理想の考えではあるのかなと考えています。

Googleでの検索画面。「SDM 医療」などと検索ワードを入力しないと、「SDM」だけでは医療以外にもたくさんヒットしてしまう。山Pの某ドラマも…。


堅苦しくなく…と前置きをしておきながら、読み返してみるとガチガチの内容になっていました。難しいことをやさしく書くのって難しい…
 
ただ、めげずに書き続けたいと思います!
第二弾はなぜmichitekuがShared Decision Makingを考えるのか?すでに定義されているものを考えるって何?そもそも納得って何よ?みたいな視点で書いていきたいと思います。
 
引き続きよろしくお願いします。