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清流にゴミ放置 地に落ちた川遊びのマナー


 高知県須崎市の「新荘川」で、水遊びに来た人たちによるゴミの放置が後を絶たない。県内有数の清流として知られる新荘川では1979年、絶滅した「二ホンカワウソ」が最後に目撃された。地元の人々が誇りにし、みんなが訪れる川をなぜ汚すのか。最低限のマナーすら守れないなら、水辺に近づいてほしくない。

河原は処分場か?

 新荘川は津野町の鶴松森(標高1000㍍)に源を発し、24本の支流の水を集めて須崎市の須崎湾に注ぐ。長さ24.1㌔の小さな川だが、アユやハヤ、ヨシノボリなど多くの命を育んできた。
 須崎市で生まれ育った私は、夏になると川に通い詰めた。体が冷え切るまで泳ぎ、夜はライトと手網を持ってテナガエビやモクズガニを追う。高校時代には、子どもが集まる水泳場で監視員の仕事もした。
 四万十川や仁淀川のように知名度が高いわけではない。しかし、自分自身が二ホンカワウソを目撃していることもあり、親しみを感じる存在だ。


新荘川に架かる橋


橋から川を見下ろす。緩やかに蛇行している


橋の下は水泳に最適。子どもでも安心して遊べる
水の透明度は高い。さまざまな生き物がいる

 水遊びをする人たちは、車で川に乗り付ける。大半は県内在住者だが、時には外国人の姿も見かける。連日の猛暑が続く中、みんな川で涼みたいのだろう。海水浴だとシャワーが欠かせない。泳いだ後、そのまま帰れる川は水遊びにうってつけなのだ。

犬も走り回る。川遊びは気持ちがいい

 そんな新荘川が今や、ゴミ捨て場に化している。自宅から車で5分ほどの河原に行ってみたら、あちこちにゴミが放置されていた。
 弁当の空き箱を詰め込んだビニール袋。数十個のビールの空き缶。ジュースのペットボトル。持ち帰るのがそれほど面倒なのか。自然の中に、大量のごみを放置する神経が理解できない。

弁当の空き箱が入ったビニール袋


投げ捨てられたお菓子の袋


ビールの空き缶もそのまま放置

 水辺を見ると、ここには金網が積み重なっている。近くには焼けた炭が捨てられており、明らかにバーベキューをした跡だ。さんざん肉や野菜を食べた後、邪魔になった金網を置き去りにしたのだろう。驚いたことに、包装されたままの新品まで落ちていた。

捨てられたバーベキュー用の金網


炭がまき散らされている。
これは新品の金網。持って帰れよ

 川遊びの食事といえば、バーベキューが定番だ。仲間と火を囲み、酒を飲めば盛り上がる。私もキャンプ先でよく楽しむが、ここまでひどいゴミの放置は珍しい。
 犬のふんや少量の残飯と違い、金属はいつまでたっても朽ちることがない。金網が川に流れ込めば、子どもが足をけがする危険だってある。いいかげんにしろと言いたい。


子どものゴーグル



破れて用済みになった手網


折れたテントのポール

 ゴミはこれだけではない。河原には子ども用のゴーグルや手網、折れたテントのポールなど、ありとあらゆる遊び道具が散乱している。
 ピンクのゴーグルを手にしたら、どこも痛んでいなかった。きっと、女の子が使ったのだろう。うっかり忘れてしまったなら、まだいい。もしも親が「捨てていきなさい」とでも命じていたら、世も末である。
 この時期、100円ショップやスーパーに行けば、この種の遊び道具がたくさん並んでいる。安い品だと愛着はわかない。使い捨てのため買ったから、その場に放置するのが当然ということなのか。
 水の中をのぞくと、栄養ドリンクの瓶が沈んでいる。瓶が割れたら、だれかがけがをする。そんな想像さえせず、投げ捨てたに違いない。
 子どもは親の行動をよく見ている。河原の惨状に接していると、子どもの教育に悪いのではないかと心配になる。


川底に沈んだ栄養ドリンクの瓶


水遊びに来た人たちの車。どうぞ、ゴミは持ち帰って

 高知は台風の通り道だから、新荘川も度々増水する。以前は堤防が未整備だったこともあり、時には水が流域の田畑に押し寄せた。水の勢いは強く、何もかも流してしまう。子どものころ、大水の後の河原に立つ度、川の怖さを思い知った。
 川はゴミも飲み込み、須崎湾まで運ぶ。昭和40年代までは、増水を狙って家庭ゴミを捨てる人たちがいた。環境保全に対する意識が低く、それが当たり前だったのだ。
 しかし、今は時代が違う。増水でゴミが流されようと、次は海が汚されるのだ。無責任な人たちが捨てたごみが環境を破壊し、多くの生き物を苦しめることを忘れてはならない。
 川遊びに出かけたら、来た時よりもきれいにしてほしいとは言わない。ただ、自分たちが出したゴミだけは始末してほしい。
 それができないなら、どこかの有料プールにどうぞ。はっきり言って、迷惑ですから。

新荘川には多くの生き物がいる

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