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『ねじまき鳥クロニクル』~なんという破壊的創造性

『ねじまき鳥クロニクル』なんという破壊的創造性。ダンスと芝居と音楽の融合という触れ込み、実は期待してなかったのだが、想像を大きく超える世界観。
小説を全3巻、読み直してから観劇。読んでおいた方がいいか?と聞かれれば読むべき。笠原メイや加納マルタが何者なのか予め知っておくだけでも、理解がグッと深まるはず。
村上春樹氏の原作は、もともと意識と身体、抽象と具体、空想と現実の間を曖昧にゆらゆらと進んでいく。舞台では、セリフでは原作の言葉を忠実に、時に無機的に生かして進行し、三部作を凝縮。一方で、小説の心象世界を前衛的なダンス、大友良英氏の音楽と歌、硬質でトリッキーな装置を縦横に駆使して表現する。
それは、身体が意識に恍惚と、麻薬的に入り込んで来るような、原作の感覚に通じる。
マームとジプシーで独自の舞台を提示する藤田貴大さんが、海外のクリエイターとどんな空間を創るのか。結果は期待や想像を大きく超えた。今日は幸運にも前方席を譲ってくれた方がいて堪能したが、二階席から俯瞰するのもいいに違いない。 当日券も多数出ているようだが、安心して買ってよい。3月1日まで。