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酒なんていらないと思っていたのにな。


「誕生日祝いしたいのでどこか行きませんか?」

3月、僕の誕生日にあわせてそう言ってくれた友人に、僕がリクエストしたのはバーでした。

「カクテルとかも勉強しといたほうがいいよ」

とよくしていただいている料理人に言われていたので、たしかにそうだよな、そう思っていたときでした。そしてたまたま食事に誘ってくれた方がバーに詳しい方だったので、いいところがあったら教えてくださいとお願いしたのでした。

連れていってもらったのは代々木上原『カエサリオン』というバーでした。


僕はもともとお酒が好きではありません。

だれかと食事に行けば、なにかしら飲みます。とりあえずビール。そこから数杯なにかを飲みます。

下戸ではないのである程度は飲めます。ですが、べつに飲まないなら飲まないでいいかな、といった感じです。高いし。家ではまったく飲みません。

酒離れが進んでいる現代だから、僕みたいなひとはきっと多いと思います。酒を飲むことしかたのしいことがない世界ではないです。

でも、僕はそう言ってはいられない。

僕は飲食業に従事していて、しかもサービスマンで、酒について明るいに越したことはないのだから。

僕はレストランが好きです。でも、ワインはそれほど好きではない。たいした経験値がないのが原因かもしれませんが、そもそもお酒に対する感動の閾値みたいなものが高いのかもしれないです。

あと、あきらめにもちかい感情。

いいワインを出されても、またワインをおいしいと思えない自分と対面しないといけないんだ、と思ってしまうのです。

そんなこんなでお酒全般が得意ではないんです。

しかし、そうも言ってられないじゃん? というのが正直なところです。すきなことだけをしていられるのは趣味であって、仕事として捉えたら、僕がしていることはただの怠慢です。


そうしたなかで連れて行ってもらったバーはとてもすばらしかったです。

とくにジントニック。そのときはさらっと飲んでおわりでしたが、数日経ってから、あの日飲んだジントニックはおいしかったな、と思い出しました。

お酒をおいしかったと思い出したのは人生で2度目でした。


そういえば、僕がレストランを好きになったのも当時の職場の先輩が食事に連れて行ってくれたことがきっかけでした。僕はそのときのことを一生忘れないし、ずっと感謝しながら生きていくのだと確信しています。それがなければ、僕は飲食業で働いていないとおもうから。だから、


そっか。

もうひとり、忘れたらいけないひとが増えたんだな。

そう思いました。


世の中にはいろいろな物事があります。でも、おそらく人生のうちに触れることができる物事は限られています。

だから僕は、その機会をくれて、触れることができた物事をたいせつにしたいとおもいます。そしてそのひとのことをたいせつにしたいです。

お酒が、すきになれそうです。


ふだん僕が適当なことばかり言っているので、本人に直接言ったところで信じてもらえないとおもったので、書いてみました。たぶんこのnoteにも気づかないとおもうし、わざわざ教えるつもりもありません。だから僕の覚え書きとして。



2021年、5月。飲食店で酒類の提供が許されず、飲食業は厳しい状況ではありますが、緊急事態宣言が解除された暁には、みなさんが笑って食事をし、お酒が飲める、そんなシーンが増えたらいいなとおもっています。

そして、その一助が担えたらいいなともおもっています。



ミチムラチヒロ

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マクドナルドが、世界でいちばんおいしいよね......
12
春からレストランサービスマンに復帰する25歳🍷物書き📚第35回太宰治賞2次選考通過、第99回オール讀物新人賞1次選考通過、第54回北日本文学賞4次選考通過🖋エッセイに挑戦中です!!