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下半身裸の幼児がいたから落語が好きな俺がいる

僕の人生を良い方向へ向かわせてくれた大きな要素の一つに、間違いなく落語がある。

落語を聴き始めたのは、高校生の時から。大喜利で座布団を取り合う番組、「笑点」。初見は正直古臭いなぁというイメージが拭えなかったのだが、観ているうちに面白くなり、気づけば勉強の合間に毎週欠かさず観るようになっていた。ちなみに教養ある皆さんは当然ご存知とは思うが笑点でやってる大喜利は落語じゃないよ。違うからね。「落語って、笑点の座布団取り合うやつでしょー?」とか言ったりしたらグーパンかチョキ目つぶしかパービンタだからね。

そんな笑点を観ていた中で生まれた素朴な疑問・・・

「この人たち、本職ではどんなことやってんだろ」

さすがに座布団の取り合いだけで食ってるわけではあるまい。ネットで調べるとこの人たちは落語家という職業であることが分かった。落語を演じるということで飯を食う職業。寿限無寿限無とかああいうやつか。

実際に聴いてみりゃどんなもんか分かるだろ、というので初めて聴いた落語が、三遊亭円楽師匠の「初天神」。爆笑こそしなかったものの、一人の演者が複数の登場人物を演じるという他に類をみない芸能は、当時の僕をそこそこ魅了した。同年代のやつらが知らない、新しい世界に飛び込んだ感覚だった。もっともっと落語というものを知りたくなった。

高校の頃のテスト勉強や受験勉強は、よく地元の図書館でやっていた。現在はどの図書館にも設けてあるCDコーナー。息抜きがてらに聴くCDを借りてから帰るのがルーティーンとなっていた。過去にはロックの名盤を漁ることが多かったが、落語を知ってからはもっぱら落語コーナーに置いてあるCDを片っ端から借りていくようになった。春風亭昇太師匠、林家たい平師匠といったおなじみ笑点メンバーから、志ん生、文楽、円生といった名人、人間国宝柳家小さん。小さん師匠は「柳家小」という名前の落語家だけど人間国宝だから「さん」づけされてんだな、なんて最初は思ってた。今考えるとアホだな。そして、今でも僕の心の師匠である、立川談志に出会って衝撃を受け、これまで以上に落語にのめり込むこととなった。というよりむしろ談志にのめり込んだ。本題の落語に入る前のマクラを40分、噺の最中にも関わらず脱線。どこか斜に構えている、異端なものが好きな僕には家元の落語はズックリ刺さった。落語や落語家の知識が多ければ多いほど家元の落語は面白い。まさに落語界のタランティーノ、とか勝手に思ってる。

話を少し戻すと、僕の落語にハマるきっかけは笑点だったことになるが、そもそも笑点を観始めたのはなぜだろう。

そういえば、「笑点」は、弟が見ていたのである。5つ下の弟が当時ハマっていた番組だったのだ。

では、なぜ弟は笑点を観始めたのか?それはなんとなく想像はつく。

おそらく、当時やつが集めていた漫画の影響だ。

ジャンプで連載されていたギャグ漫画、『いぬまるだしっ』

見た目は子供向けの絵柄ではあるが、年齢の幼い子供には分からないようななかなかに高度かつハイセンスなギャグが展開されてゆく。この主人公であるいぬまるくんは終始下半身が裸だか、そこはそんなにイジられることもない。あたかも周知の事実としてストーリーは展開されてゆく。考えてみたらそれもシュールで面白いよな。

この主人公いぬまるくんの好きなテレビ番組が、笑点だったのだ。弟はきっとそこから笑点を観ようと思ったに違いない。因果関係の証明完了、QED

『いぬまるだしっ』がなければ、落語と出会うことはなかった・・・と考えると、うーん、これを表す感情はとても難しい・・・

きっかけを深堀りして深堀りして、としていくと、案外予想だにしないところが発端だったりするから面白い。「風が吹くと桶屋が儲かる」は、案外信ぴょう性があるのかもね。

そんなこんなで落語にハマり、ひねくれたまま高校を卒業した僕は、大学にて落研という唯一無二のコミュニティへ足を踏み入れることになるのだが、

それはまた別のお話でよろしくお願いします。




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