3-4リズム

「リズム」#掬することば

※2月4日の「World Cancer Day」に向けて、豆本詩集『汀の虹』の詩を、noteに1日1篇ずつ置いています。
23篇目は「リズム」です。

Flowers 「 千日紅」×「 フィンランドモス」(2017.11 花店note)

「このつらさは誰にもわからない」

一番追い詰められていた頃、「つらい」が溢れだすと、部屋の隅からこんなことばを夫へ投げつけては、殻の中にこもっていた時期がありました。

ことばで伝えることも、ことばで理解してもらうことも限界がある。ましてや妊娠も流産もがんも「わたしの体の中」だけで起こっていること。心身の後遺症を引きずる日々が続くほどに、そのつらさを一番身近な人にぶつけてしまっていたのだと思います。

パートナーの立場に立てば、本人からこのことばをぶつけられることほどつらいことはありません。距離をとったり、離れてしまっても仕方のない状況。それでも夫は、近すぎず遠すぎずという距離を変えずに「ただそばに立つ」ということを続けてくれました。

「リズム」はそんな頃の記憶のひとつです。昼間はことばすら交わせなくても、本当にかなしい夢を見て夜中に泣いていると「ひくひく」という音に気づいて「ポンポン」と頭を撫でてくれたり。

本当に小さく肩を「とんとん」と叩いても、すーっと手を伸ばして「とんとん」とふた撫でしてくれたり。「とんとんとん」「とんとんとん」と、強弱も拍子もぴったりあわせてくれる。ことばよりもよっぽど「届いて、返ってきている」という実感があって、よく頼っていました。

最後に添えた歌は、そんなやりとりが増えた時期、ふと思い出した歌です。「あのさ、今日この歌聴いてたの」と夫に話しかけると「そういうことです」と得意気に一言。

「この14年、みちさんに対して感情でものを言ったことは一度もない(みちさんは“感情でしかない”けれど)」が口癖の夫ですが。

がんになってから改めて色々聴きなおすと、夫の言動の8割くらいはMr.Childrenの歌で出来ているんじゃないかと思う今日この頃です。

余談ですが、夫の「みちさんの(は)~」シリーズは色々あって、自分ひとりでは気づかないことばかりです。一番なるほどと思ったのは

「みちさんの『わからん』は『考えるのが面倒くさい』」

「みちさんの『しらん』は『考えたくもない』もしくは『答えたくない』」

ポロポロと泣いたあとは大抵「わからん」と「しらん」を繰り返すわたし。「わからん」「しらん」の波が落ち着いて自分の気持ちと向き合う準備ができるまで、いつもそばで映し続けてくれる夫に感謝です。

リズム【rhythm】
1 強弱・明暗・遅速などの周期的な反復。
2 音楽の基本的要素の一つで、音の時間的な変化の構造。アクセントが規則的に反復する拍節的リズム、アクセントの継起が不規則な定量リズム、音の長さに一定の単位をもたない自由リズムなどに分類される。
3 詩の韻律。
(デジタル大辞泉)
『汀の虹』のみちしるべ 
『汀の虹』は、がんによる孤独の中で握りしめていた“ことばの欠片”を道標に制作しています。握りしめていた“ことばの欠片”の大半は、それまでの人生で大切な人から贈られたことばや、何度も触れた本や音楽、映画のことばでした。

そこからことばをひとつ手にとってはタイトルとして置き、心の奥に沈んだ治療前後の記憶を一つずつ掬い上げ、重ね綴っています。この本や歌、映画の中にあることばや情景をみちしるべにしていたような…という作品のタイトルだけ、最後に添えていきます。(以下、敬称略)

「リズム」
Mr.Children『Mirror』

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ZINE作家。“大切な記憶”を小さな手製本に綴じています。「記憶のアトリエ」/ 連載「まなざしを綴じる」(日本看護協会出版会) / 希少がん(絨毛がん)経験者 #AYA世代 #zinester https://michi-siruve.com/
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