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[英詩]Bob Dylan, 'Caribbean Wind'

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

英詩のマガジン の本配信、今月3本目です。歌われる詩の2回めです。今回はボブ・ディランのアルバム 'Biograph' (1985年、下) に収められた 'Caribbean Wind' (「カリビアン・ウィンド 」)です。

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録音は1981年4月30日または5月1日 (Clover Studios, Los Angeles, California)。アルバム 'Shot of Love' のアウトテイクスの一つとして、'Biograph' に収められました。


リクスの校訂版によりこの歌を考えてみます。なお、同版は3つのテクストを載せています。以下で扱う版は 'Biograph' での実際の歌唱に基づいており、公式サイト版のテクストなどとは大幅に異なります。

参考文献 は、文字数の関係で別の note にあります。

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(202007)」へどうぞ。

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【内容】〈英詩の基礎知識〉〈歌われる英詩1〉〈歌われる英詩2〉の三つで構成します。
【取上げる詩】2018年3月からボブ・ディランを集中的に取上げています。英語で書く詩人として最新のノーベル文学賞詩人です。
【ひとこと】忙しい現代人ほど詩的エッセンスの吸収法を知っていることがプラスになります! 毎回、英詩の実践的な読みのコツを紹介し、考えます。▶︎英詩について、日本語訳・構文・韻律・解釈・考察などの多角的な切り口で迫ります。

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まとめ

ボブ・ディランの 'Caribbean Wind' は、西インド諸島の島で書き始められ、実際にカリブ海の体験をふまえて書かれた作品。さらに、実際に行われたマイアミ公演についても言及がある。それらの自伝的な要素に黙示的な宗教観をまじえているため、理解しにくい。

動画リンク [Bob Dylan, 'Caribbean Wind'; 'Shot of Love' sessions, 31 March 1981]

1ヶ月後の 'Biograph' 所収の録音とは歌詞がかなり違う。この録音は公式盤では出ていない。

動画リンク [Bob Dylan, 'Caribbean Wind' (Studio Outtake, 1981, Official Audio)]

 

原詩+注+日本語訳+韻律+解釈

Caribbean Wind
Bob Dylan

1連

She was the rose of Sharon from paradise lost
From the City of Seven Hills near the place of the cross
 I was playing a show in Miami in the theater of divine comedy
Told about Jesus, told about the rain
She told me about the jungle where her brothers were slain
 By the man who invented iron and disappeared so mysteriously

(注)
rose of Sharon cf. Cant 2.1「わたしはシャロンのばら、野のゆり」
paradise lost cf. John Milton, 'Paradise Lost' (1667)
the City of Seven Hills 七丘の都(ローマのこと)。the Seven Hills of Rome とは、Tiber 川東岸の Aventine, Caelian, Capitoline, Esquiline, Palatine, Quirinal, Viminal の七つ。古代ローマはこの七丘の上および周辺に建設された
divine comedy cf. Dante, 'Divine Comedy' (1321)

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