見出し画像

[書評]せめて死を理解してから死ね! 〜孤独死のススメ〜

保江 邦夫『せめて死を理解してから死ね! 〜孤独死のススメ〜』(ヴォイス、2019)

画像1


素領域理論に立脚した生死についての実用書——死ぬときにこそ大いに役立つ現実的・実践的な内容

著者は理論物理学者であり、本書は素領域理論に立脚した生死についての実用的な見方を説く。著者のこれまでの著書でふれられている話題もあるが、本書では一歩ふみこんでいる箇所が多く、実用性が高い。

湯川秀樹博士が晩年に提唱した素領域理論そのものの理論的枠組みは本書では説明されていないが、その形而上学的側面は例えば著者の『神の物理学』などに詳しい。本書は結論だけをあくまで実用性に徹して述べるので、かえって分りやすいかもしれない。

その結論は第2章の〈「素領域理論」から見た「生」と「死」と「魂」〉(47-50頁) に書かれている。特に50頁の〈素領域の考え方から見た霊体と肉体〉の図解は分りやすい。

空間を構成する素領域と素領域の間の隙間の部分が永遠につながっており、魂はその隙間に存在している。生きているときは隙間と素領域とは重なっているが、死ぬと魂は抜けてゆく。

魂は雛形であるので、それが去ると、「素領域にある素粒子でできている身体は生命維持ができなくなり、身体は朽ちていく」のである。「つまり、魂があってはじめて生命活動が機能する」というのが素領域理論における生死の捉え方である (49頁)。

この考え方から本書におけるさまざまの話題が派生する。ただ、生死の実用的な捉え方には、いろいろの側面が出てくる。そのほとんどは根拠が書いてあるが、中には根拠の書いていないところもある。

例えば、第2章の〈魂が姿形をとると、24歳のときの姿になる理由〉は、本書では「こればかりは状況証拠しかない」と書かれているが、著者はある講演で、これはルドルフ・シュタイナーに由来する捉え方であることを明かしている。

題名にある「孤独死のススメ」という言葉は決して「一人で寂しく死んでいこう」ということを目的とするものではないと明言されている (172頁)。そうではなく、「あの世」をより身近に受け入れることができる物理学的世界観をもとに、「さあ、生きよう!」というメッセージを伝えている。

以下、本書で特に銘記すべきと思った点を抜き書きする。

・翌朝にすっきりと目覚めるためには、睡眠中の魂が肉体を離れた本来の姿で、この世からあの世までを縦横無尽に飛び回ることで、霊的なエネルギーを補給しておかなくてはなりません。(21頁)

・「闇はすべてのものが誕生する源であり、愛の源泉でもある。従って、闇を恐れるなかれ」(谷川俊太郎の詩「闇は光の母」引用の直後の34頁)

・カトリックの総本山のバチカンを取り囲む国、イタリアでは悪魔に取り憑かれる人が年間約3万人[医師が精神の病ではなく正式に悪魔憑きだと認めた件数]といわれています。(62頁)

・人が死にゆく瞬間に、お迎えの人がやってきて彼らのサポートのもと、ボレロの音楽が鳴り響く中、肉体を脱ぎ捨てた魂は、この世からあの世へ続く花道を威風堂々と胸を張って戻ってゆくのです。(84頁)

・この世界でただのモノとして扱われている家具や日用品なども、素領域理論の考え方からすれば、ワンネスの中でつながっているものであり、きちんと魂があるのです。(180頁)

・素領域の考え方を用いれば、「この世」のいたるところに「あの世」が入れ子になって接するように存在しているということが理解できるのです。(191頁)

西元啓子さんの編集のおかげか、本書の校正は素晴らしい。本を出すならこういう出版社から出したいものだ。

#書評 #保江邦夫 #死生観

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?