見出し画像

酸化防止剤のはなし

今回は酸化防止剤を取り上げようと思います。成分表などでもよく見かける項目なので、ご存じの方も多いと思います。その働きは「酸化の防止」という事なのですが、酸化の何が問題になるのか、それを防ぐにはどのような物質を用いればよいのか、その安全性はどうかといった辺りが話題になるんじゃないでしょうか。酸化防止剤が添加されているものは、なにも食品ばかりではありません。化粧品などにも用いられているんです。今回は食品添加物についての記事を書いていますので、食品に用いるものを対象にしようと思います。

食品が劣化する理由としては「腐敗」が大きな問題の一つになっていますが、じつは酸化もまた、問題の一つなんです。酸化って、食品が空気に触れているだけで起きてしまう、捉え方によっては厄介な現象なんですね。身近な例を挙げると、「リンゴを切った面が茶色くなった」とか、「淹れたお茶がマズくなった、色が変わった」など、多くの人が経験しているんじゃないでしょうか。他にも食品自体の栄養価が下がってしまったり、有害とされる酸化物、あるいは発がん性物質が出来てしまったりと、碌な事が起きないようです。

もう一つ、油分(油脂)を多く含む食品が酸化すると、過酸化物というものが発生します。変な臭いがしたり食品の風味や味に影響を与えて悪くしたりします。また、それを食べた人が食中毒を起こしたり消化器系の臓器に何らかの不具合を起こす要因になる可能性も指摘されています。とくに「油焼け」と呼ばれる現象には必要です。

こういったことを防いで、食品の質が下がらないようにするために添加するものが「酸化防止剤」なんですね。酸化防止剤には食品の酸化を防ぐことによって食品自体の品質を安定させる働きがあります。また、それによって食品が長期間貯蔵出来るようにもなります。つまり、食品をよい状態で長く持たせる効果という事ですね。

では、こういった問題を防ぐために用いる酸化防止剤には、どのような働きがあるかが気になるところです。羅列すると、
・果実やその加工品、漬物類などの変色(褐色化など)を防ぐ
・有害な物質(過酸化物、発がん性物質など)の発生を防ぐ
・油脂を多く含む食品の酸化による劣化(色が褪せる、風味が落ちるなど)を防ぐ
こんなところでしょうか。

酸化防止剤は使いたい食品に応じて二種類存在します。水溶性のものと脂溶性のものなのですが、一般的には水溶性のものが多く目につきます。よく見かける表示では「酸化防止剤(アスコルビン酸)」といったものでしょう。アスコルビン酸と聞くとなんだかわかりにくい名称ですが、ビタミンCのことなんです。このビタミンC、実は非常に強い還元性物質なんです。還元とは酸化と反対の現象を指します。酸化防止剤として、お茶などの飲み物なら大抵含まれています。

この還元作用がどれくらい強いかというと、医療機関を受診して尿検査を行った場合、ビタミンCの摂取を普段から積極的に行なっている人ならば、時として「潜血反応」が隠れてしまうことがあります。本来なら陽性にならないといけないような場合でも、そのビタミンCの働きでその反応が消されてしまって、陰性になってしまうことがあるんです。場合によっては医師の診断などにも影響を与えかねないというほどの問題も含んでいます。摂取したビタミンCが尿に出てしまうのは、過剰に摂取したことで不要な分を体外に排出したという事なので別に心配しなくてよい事なのですが、医師の判断に影響を及ぼしかねない状況を作り出すかもしれないとなると、これはちょっと困ったことですね。過剰な摂取は控えた方がよいでしょう。

あと、脂溶性の酸化防止剤としてはビタミンEなどがあります。食品の素材が油脂成分の多いものであれば、こちらの方が使いやすいわけです。天然のものもありますが、化学的に合成されたものが多く用いられています。

酸化防止剤に限らず、合成されたものでも構造は天然のものと変わりありません。ですが、化学的に合成して作ったものですから、どうしても気になる人は出てくるでしょう。そして安全性の話になるのですが、酸化防止剤に限らず、食品添加物として使用するためには、いろいろと基準が定められています。安全性なども確認されたうえで使用されていますので、あまり心配しなくてもよいのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?