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音楽コラム/レビュー

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アーティストや楽曲のレビュー。じっくり考察するのが好きです。
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記事一覧

あの日、ELLEGARDENの音楽があったから

あの日、ELLEGARDENの音楽があったから

音楽と出会うには、おおよそ文脈がある。兄弟が好きなアーティスト、映画やドラマで流れる主題歌、クラスメイトに借りたCD。聞いているうちに、好きなバンドが生まれて、なんとなくの系統ができていく。

私にとってELLEGARDENは、そのどれでもなかった。まるで突風のごとく。ある日ケーブルテレビの音楽チャンネルに流れる「Red Hot」に釘付けになった。一瞬にしてぐっさりと射抜かれてしまったのだ。

M

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眠れない夜の隙間に聴きたい、the HIATUSの音楽

眠れない夜の隙間に聴きたい、the HIATUSの音楽

駆け抜ける日々の中では後悔さえも消え入りやすい。日常はできるだけ前向きに、やるべきことをこなしながら一定のテンポで進んでいく。不甲斐なさによる落胆も、心が絞られるような悔しさも、交わらなかった気持ちも、大人になればなるほど封じ込めるのが上手くなる。

30度近くあった気温がひゅんと下降し、夏の名残りと冬の気配が混ざり合う。普段は冷静さを装える心が妙に揺れ動くのは、ひんやりとした空気の中で、いつかの

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Cメロを制すものはエモを制す説

Cメロを制すものはエモを制す説

突然ですが、Cメロはお好きですか。

えっ、Cメロってなに???

私も細かい定義はよくわかってないのだけど、最後のサビ(大サビ)に入る前の旋律とでも言ったらいいのでしょうか。AメロでもBメロでもない、突如変則的に登場するメロディですね。いまピンとこなくても、実際に曲を聞いたら「あぁ、あの部分ね!」と理解していただけるはず。

かねがね思っていました。

Cメロの効果すごいよな、と。

いい曲はA

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秋山黄色、瑞々しい反逆心が鳴らす音楽と鼓動

秋山黄色、瑞々しい反逆心が鳴らす音楽と鼓動

秋山黄色の快進撃が止まらない。昨年12月25日に映画『えんとつ町のプペル』の劇中挿入歌「夢の礫」をリリースしたばかりだが、1月末には『約束のネバーランド』Season 2の主題歌となる「アイデンティティ」を発表、3月には2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME 』の発売が決定している。

デビューからまだ一年足らずにも関わらず、最も動向が注目されているアーティストの一人だ。

1996

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優里「ドライフラワー」の恋は、たぶんやさしい

優里「ドライフラワー」の恋は、たぶんやさしい

音楽を聴いていると「こんなところに眠っていたんだ」と思いもよらぬ感情の蓋が開く。それは、たった一度だけ歌詞やメロディを耳にしたのでは到底辿りつかないほど、記憶の海を深く深く潜った先に在る。

優里の『ドライフラワー』を聴いて呼び起こされたのは、恋の終わり、のはじまりを予感したあの日だった。

恋の終わり、とはどの地点を指すのだろう。反省も後悔も数えきれないほどあって、一体いつ何月何日に戻ればこの瞬

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ロスジェネ女子を支えた  #音楽の履歴書

ロスジェネ女子を支えた #音楽の履歴書

ビーマイベイベー、ビーマイベイベー、ビーマイベイベー……(エンドレスリピート)(エンドレスではない)

童謡をすっ飛ばし、最初の記憶に残っている音楽は何だと聞かれたらこのフレーズ思い浮かぶ。天井から聞こえてきたんか???ぐらいの囁き声で男の人がひたすら繰り返す「ビーマイベイベー」。
ご存知、いや30歳以下の方は存じないかもしれないCOMPLEX。吉川晃司と布袋寅泰の伝説ユニットだ。

当時、9歳ぐ

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BLUE ENCOUNT「ユメミグサ」が包んだ青春の情景

BLUE ENCOUNT「ユメミグサ」が包んだ青春の情景

生きている中で、いくつもの「さよなら」が通り過ぎた。

前を向けよ。大人になれよ。どこからともなく聞こえてくる声に押し潰されそうになる。
次第に、未練や後悔はかっこ悪いものだと擦り込まれていったように思う。年齢を重ねるほど、経験を積むほど、見えないしがらみは強くなった。

人間は大人になるにつれ、なにも感じないフリがうまくなっていくようだ。それは、時に生きやすさにも繋がるのかもしれない。けれど、本

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米津玄師、 刹那に宿る光を見つめて

米津玄師、 刹那に宿る光を見つめて

一つずつ集まったピースがいつのまにか新しいパズルの絵を描くみたいに。バラバラに散らばる人生の断片を、音楽が結び目となって引き寄せるときがある。
過去、現在、未来は地続きであり、ひっくるめて人生と呼ぶが、時折それらが交差する瞬間に出会う。

米津玄師の歌声を聴いていると、何かに似た胸の痛みを伴うと気付いた。その感覚を追いかけてみたら、夏終わりの空気だった。
冷たい夜風がふと腕肌に触れたときに、遠い過

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エモーショナルな夜明けが見せてくれた音楽との未来

エモーショナルな夜明けが見せてくれた音楽との未来

午前3時40分、目覚ましが鳴る。
子どもたちを起こさないようにそーっとベッドを抜け出した。2階の寝室からリビングまで忍び足で階段を降りる。

しん、と静まったリビングは主役不在のステージのようだ。眠気覚ましに淹れたコーヒーのコポコポコポという音が緊張を溶かしていく。

10分前。YouTubeから届いたメールを確認して、テレビ内蔵のアプリをオンにした。

「ELLEGARDEN_OFFICIAL

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BUMP OF CHICKENが歌う「強さ」と「強がり」の境界線

BUMP OF CHICKENが歌う「強さ」と「強がり」の境界線

人の強さってなんだろう?

頭の隅にずっとありながら答えが出なかった問いだ。誰かの言葉で簡単に傷ついたり、誰かをむやみに傷つけたりしない強さを持った人間になりたかった。
なのに、そうあろうとすればするほど本当の自分を置き去りにしているように思えた。強さの意味を履き違えていた。

BUMP OF CHICKENの音楽と出会ったのは、そんな自分を持て余していた10代と20代の狭間だった。

うだる暑さ

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等身大を越えてゆけ

等身大を越えてゆけ

好きだとか惚れたとかという感情を言語化するのは、なんて難しいんだろう。だからお気に入りや大切なものについて文章にするのはいつも怖い。これが言いたいこと全てだと思われたくない。

でも下手だろうが恥をかこうが、何度でもやってみたらいいよ、と生き様で教えてくれた人たちがいた。その言葉を糧に今これを書いている。

出会いの夜撮り溜めた日常を繰り返し再生するような日々だった。社会人になってすぐに意気揚々と

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