サバサンドの記憶|旅小説
全ては順調で、今私は幸せだと言える。数年前、本業だと胸を張れる仕事に正社員として就き、今日もその出張で遠方へ向かう途中。ちょっと早めに会社を出て、駅弁でも買って移動時間を楽しもうと売店へ来た。駅弁がぎっしりと並べられた棚の、一番端っこに想定外のものを目にした。“サバサンド”だ。
思わず手を伸ばす、その左薬指にはカットの美しいダイヤのリングが光っている。そう私は今幸せなのだ。で、サバサンドである。まさかこんなところで再会するとは思っていなかったせいで、無防備にある記憶が呼び