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引きこもりは野球場で宝石を見た


引きこもり、外に出る

私は昔、引きこもりだった。何年も何年も家で過ごし、外が怖いと泣いていた。とても辛かった。一言の〝辛い〟という言葉だけでは表すことはできないほど藻掻き苦しんだ。

でも、ある日そんな自分に嫌気がさして、外に出たいと思うようになった。このままは嫌だな。そう、強く思う時が私にやってきたのだ。

そして、私は外に出て知った。外の世界は輝くダイヤだと。

高校卒業後も引きこもり

とにかく辛かった。

中学生時代に頑張りすぎてしまったせいで精神疾患になり、高校からは不登校。思うように外に出られない日が増え、気が付けば引きこもりになっていた。

私は人生はもう終わったと思った。

このままダメ人間のまま、生きていかねばならないのかと死にたくて仕方なかった。

でも、主治医や家族の力のおかげで時間はかかったが、自分の病気と向き合うことができた。治療していくうちに少しずつ回復し、熱中できる好きなことが出来たり楽しいと思える時間が増えた。でも、まだ自分ひとりの力で外に出ることは出来なかったし、人と話すことは怖くて勇気が出なかった。

しかし、私は好きなことがやっと出来たのだ。引きこもりの毎日何もない無の、楽しいも感じることが出来ない生活だったが、気が付けば毎日楽しみに決まって夕方十八時。点けるチャンネルがあった。

「さあ、今日の先発は菅野……」

そのチャンネルを点けた直後に強い声で語るアナウンサーと実況解説が今日のワクワクを増やしてくれた。そして、画面の中で盛り上がる世界に私は引き込まれて、時には心が明るく咲くような感動を貰い、私に力を与えてくれた。

「満塁ホームランです!」

その光景に感動してひとり部屋で立ち上がり喜ぶ日もあった。時には父と抱き合って、楽しく盛り上がった。

私は、野球という心が熱く燃えるスポーツと出会ったのだ。

最初は父がただ毎日見ているつまらないスポーツだと思っていたのに、野球を熱く語る父を見て、私もその世界へとのめり込み始めた。

ハイタッチがしたい

しかし、いくら応援歌を覚えようが楽しい試合を見て感動しようが、私の隣にはテレビの画面に映る応援席のように、隣でハイタッチが出来る沢山の友達は居なかった。

毎日試合を見れば見るほどそれが羨ましくなった。

だから、気が付けばスマートホンで行き先を調べていた。

「ここから二時間……交通費五千六百円……」

引きこもっていたのでお小遣いなんて少ないけれど、五年間使っていなかったのでなんとかなった。

「チケット二千五百円」

当日券も買えそうだった。

遠いけれど、そんなものどうでもよかった。

私は久々に私服というものに着替えて、太陽の照らす地面を歩き始めた。これが、五年ぶりのちゃんと目的をもってひとりでお出かけをした日だった。

引きこもりの五年間、ひとりであんな遠くには一度も行ったことが無かった。急に飛び出すなんて良くできたなと思う。今でも信じられない。通院と父とのスーパーへの買い物、気晴らしの散歩はリハビリがてらやっていた時もあったが、それとあの頃の行動は桁が違う話だ。

それくらい私は野球に外の楽しさを教えてもらったのだろう。

外は輝く宝石だった

あの日、目的地に行くために電車を幾度も乗り継いだ。乗り換えの駅でわからないことがあると、駅員さんに勇気を出して聞いた。

「どっちが東京方面ですか?」

「こちらからみて右側の一番線です、三分後に来る電車に乗れば大丈夫です」

「ありがとうございます!」

すぐに対応し、丁寧に道順を教えてくれた。

「なんだ、怖くなんかないじゃん」

人と話すのが怖い事ではないと分かった。目的地に近づくほど、外はキラキラとした楽園に見えた。たくさんの知らない人が行き交う楽園だ。

そして、誰も私を敵だと攻撃することもなかった。人は怖くなんてなかったのだ。むしろ、外の世界の全てが新鮮でドキドキした。

大きな建物、どこまでも高い背のビル。知らない大きな駅。

全てが私をワクワクさせたのだ。

そして、目的地に到着するとチケットを買って一人で席に座った。

「プレイボール!」

どこまでも響く掛け声で試合が始まった。私の心がドキドキ揺れた。

そして、テレビで見るのとは違うキラキラとした光景に心を奪われた。いつまでも見ていたい、目の奥からダイヤの宝石が生まれそうなほどの新しく麗しい世界だった。応援する人の綺麗で輝く声が、私の心に刺さった。

そして、得点が入ると隣の人がハイタッチをしてくれた、お菓子をくれた、好きな選手を教えてくれた、連絡先を交換してくれた。

友達になれた。

そして、好きな選手がまた……虹を描くホームランを打った。

二度と忘れない景色

私はあの日を二度と忘れない。忘れることは出来ない。

私が怖がっていた外の世界は、実はとても輝いていて素晴らしかったのだと初めて知り、感動したからだ。外は輝き、ダイヤのようにキラキラしていた。

あの日見たあの景色と感動を忘れることは、これから絶対にないだろう。

そして、私はあの日初めて友達ができたのだ。私は誰かと話すことが出来たのだ。誰かと笑うことが出来たのだ。誰かと、あの、熱く心を動かせる、虹のアーチを見ることが出来たのだ。

それが、何よりも嬉しくて人生を頑張ることが出来た。

あのおかげで、勇気を貰い外をやっと楽しめるようになった。父とふたりでどこかへ出かけることが増えたり、ひとりで出かけて映画や野球観戦を楽しめるようにまでなった。野球以外の楽しいと思える出来事も増えた。たくさんの友達も作れるようになった。社会で働けるようにもなった。

今では、全国の球場をたくさんの仲間と回っている。北から南まで、皆と見に行く景色がいつも宝石だ。コロナの時期は出来てはいないけれど、旅をすることでまた、新たな仲間とも出会っている。

キャンプだって飛んでいく。九州まで飛行機で好きな選手を見に足を誇んではドキドキできる。

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野球のおかげで、私の人生はやっとキラキラと明るく輝き、毎日が幸せだと言えるようになったのだ。

野球というスポーツがきっかけで、こんなに変わることが出来た。

私は野球に感謝している。ありがとう。

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▽大切に生きるをテーマに執筆中▽

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