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moon

むかしむかし

あるいきものが 来る日も来る日もひとり
何もない土地を ただ歩き続けていました

そのいきものは
自分がいつ生まれたのかも
なぜ歩き続けているのかも
分かりませんでした。

あるひ
そのいきものは
まあるく光っているものを見つけました。

そこは むかし
灯台として使われていたようでしたが
今はかえってくるものを 迎えることもなく
忘れ去られたところでした

灯台も 今はこわれ
ただ まあるいあかりだけが
あたたかく あたりを照らしていました

なんにもなかったいきものは
そこではじめて 自分がそれを探していたことに 気づきました

そして初めて
「ここにいたい」と思ったのです

だけど、それは あまりにもあかるくて
みつめることができなかったから

「せめてそばにいたい」と
そのいきものは よりそうように
うしろを向いて座りました

そのせなかには ひかりが反射して
ほかの星を照らしました

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