本当の「平家物語」をそろそろ読んでおくためのブックリスト:ここから篇。至高の灌頂巻をあなたはまだ知らない。
「清盛とか平氏が、源氏に滅ばされるお話でしょ」
なーんて、軽口できません。
徹底的に平氏が滅ぼされしまうんです。
平氏で、最後に残るのは2人だけ。(ネタバレのため書きません)
その2人の行く末を知った後、あなたは必ず悲しくなります。
まさに、「盛者必衰の理をあらはす」。
すべてを読み終えた後では、あの有名な冒頭の一節「祇園精舎の鐘の声 ~ 偏に風の前の塵に同じ」が、以前とは異なるように感じられるでしょう。
構成
12巻と灌頂巻、合計13巻から構成されています。
1巻 (祇園精舍~内裏炎上)
2巻 (座主流~蘇武)
3巻 (赦文~城南之離宮)
4巻 (厳島御幸~三井寺炎上)
5巻 (都遷~奈良炎上)
6巻 (新院崩御~横田河原合戰)
7巻 (清水冠者~福原落)
8巻 (山門御幸~法住寺合戰)
9巻 (生ずきの沙汰~小宰相身投)
10巻 (首渡~高野御幸)
11巻 (逆櫓~重衡被斬)
12巻 (大地震~六代被斬)
灌頂巻 (女院出家~女院死去)
最後の巻だけ「灌頂」になっています。この灌頂巻、実は「平家物語」の最高傑作と言われています。ほとんどの方が最後の巻まで読まれることがなく、この事実はあまり知られていません。「灌頂」とは、わかりやすく言えば、
を意味します。正確には「灌頂」(WIkipedia)にあるように「菩薩が仏になる時、その頭に諸仏が水を注ぎ、仏の位に達したことを証明すること」です。
「免許皆伝の卒業証書」として琵琶法師に唄われる灌頂巻は、1巻から12巻までに至る平家の隆盛・滅亡を振り返り、平家鎮魂を込めて、物語を締める流れになっています。その語りは、和漢混淆文でも随一の格調の高さ・技巧を持っています。美しさ、込められた意味や想いは冒頭文を凌いでいるといってもいいです。その異質さから、後世に、冒頭文に対応させて、付け加えられてと言われています。
平家物語は一般的には軍記物語と知られています。そのために、合戦のような派手さを求められがちです。灌頂巻にあるような、穏やかで、哲学的に深い内容は、どうしても脇に置かれがちです。平家物語の多くの2次作品でも、なかなか灌頂巻が語られません。(唯一例外があります! 後述します!!)
入門編
基礎知識は以上として、内容に入っていきます。
Youtubeなどの動画・アニメ
Youtube: eboard channelさんによる解説。中学生向け? すっかり忘れてしまった大人にも親しみやすい内容です。
語りのうまさは、琵琶法師さながら。当時もきっとこのような感じで人々は琵琶法師の語りを食い入るように聞いたのでしょう。
原作 古川日出男「平家物語」、監督 山田尚子、シリーズ構成・脚本 吉田玲子、キャラクターデザイン:高野文子(原案)
これが一押しです。独自のキャラクターを起用しています。このキャラクターにより、語り継がれるべき物語としての説得力を強固にしています。特筆すべきは、灌頂巻のシーンが美しいこと。女性の監督さんによる演出はアニメでも稀にみる美しさです。最後までみると、きっと平家物語の印象が変わるでしょう。
いつもながらのクオリティ、全体の把握に役立ちます。この回では能の側面から平家物語に迫っています。
児童書
わたしはこの本から読み始めました。高校で習って以降、鎌倉時代にブランクがありましたが、2時間ほどでさっと読めました。源氏寄りの歴史小説に近いです。
同じ講談社青い鳥文庫にも一冊あります。
こちらのほうが、平家物語に近いのでは? 中身を確認したことがありません。
まんが
漫画版平家物語の決定版です。平家物語を忠実に漫画化されています。歴史漫画に近いともいえます。面白いかはともかく、しっかり分かります。
この「マンガ 日本の古典(全32巻)」の執筆者が豪華ですよね。大人買いしていくらいです。
以下は、手にしていません。ごめんなさい。
最後に
次回は本格的に読んでいくための書籍を挙げていきます。
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