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ふとした瞬間に思い出す春の短歌

徐々に暖かくなり、桜も満開の今週末。3月29日の今日、関東は大雪です。もしかしたら桜は散ってしまうかもしれません。

東京都は外出自粛要請が出て、例年のようにお花見をできるような状況ではなくなってしまいました。お花見で人が集まる場所は、通行止めになっているそうです。
うーん。ちょっと、寂しいですね。この季節の、この時期にしか楽しめないことを自粛せざるを得ないのは、仕方ないけど切なくなります。
事態が収束していくことを願うばかりです。


そんな中、Twitterでは 「短歌でお花見」というハッシュタグのツイートがちらほらみられます。好きな桜の短歌を紹介する企画です。短歌でお花見!いい企画ですね。
私も、「ふとした瞬間に思い出す春の短歌」をご紹介します。



夕光(ゆふかげ)のなかにまぶしく花みちてしだれ桜は輝(かがやき)を垂る
(佐藤佐太郎)


夕光は、夕方の光、夕陽のこと。
しだれ桜が光って見える。水が滴るように、光を滴らせている。
明るい光の中の桜もいいけれど、黄昏時の時間の桜には魔力があるような気がする。

この歌の表現を思い出すたびいつも唸りたくなる。「まぶしく花みちて」「輝を垂る」という表現が、桜の生命力や存在感を際立たせていて素晴らしい。



夕闇にとろりと門は融けはじむ背に膨みてゆくさくらばな
(永田和宏)


薄暗くなった夕方、闇の中に門はとけ込むようにまぎれていく。背後の桜の花が、浮かび上がって白く膨らんでいく。
薄暗い時間、ぼうっと桜の存在感が増していくあの感じが浮かぶ。



今どこにいますか何をしてますかしあわせですかもう春ですか
 (たきおと) 


もう会えない人がいる。今どこで何をしているか、分からない人がいる。
かつて一緒に過ごした時間を、繰り返す季節の中でふと思い出すとき、届かなくても、心の中で呼びかける。
しあわせですか。

この歌は、なんとなく、もう二度と会えない人のことを遠くから思っている歌のように思える。「もう春ですか」が効いてるんだろうなあ。
永くて遠い時間とか、夢から覚めるような感じとか、
まだ夢の中にいるような感じとか、
前世とか、来世とか。
いろんなことが心に浮かんでくる。
 


お別れと「お」をつける時永遠に君に会えないことに気がつく
 (有村鹿乃子)
 

たしかにそうだ。
「別れ」は日常の中にある。点線のように途切れるけど、いつかまた繋がる可能性がある。

ただ「お別れ」はどうだろう。お別れにはそっと息を飲むような、断絶と覚悟の気配がある。
そのことにはっと気づく歌。門出の春に読むとより一層寂しくなります。

 


春だねと言えば名前を呼ばれたと思った犬が近寄ってくる 
(服部真里子)

春だなあって思ったときに必ず思い出すのがこの歌。
春がくると、心の中に犬がやってくるんです。

何気なく口にした言葉に、呼ばれたと思った犬が反応する。
いいなあ。柔らかい幸せに満ちている。


短歌ではないのですが、最後に「桜」で思い出す松田俊彦さんの川柳を3つ。

にんげんの弱いところに咲くさくら
(松田俊彦)

返盃をしよう離れてゆく花へ
(松田俊彦)

出ておいで桜はみんな散ったから
(松田俊彦)



あなたが春に思い出す歌は、どんな短歌ですか?

なかなか外出できない状況なので、じっくり歌集や句集を読んで過ごすのもいいかも。


Twitterにて、毎日好きな短歌を紹介しています。よければそちらもお楽しみください!



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