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失恋した日にバカな女が読むnote

新垣結衣に生まれたかった。

ツンとした冷たい風が、頑張って伸ばしていた髪の毛をそっとなぞって、わたしはいまもまだロングヘアのまま、そんなことを思う。

べつにガッキーじゃなくても、誰でもいい。佐々木希とか石原さとみとか。誰もが羨む美貌と、美しいサラサラの髪で、この世の男子全員が告られたら好きじゃなくてもオッケーしちゃうような女に、生まれたかった。

そう、わたしは失恋した。

冷たい風が、秋と冬を行ったり来たりして、余計に1人が寂しくなった夜に、たまに思い出したりして。


「好きだけど…」

そのあとに続く言葉を、聞かなくても容易に想像できた。目にはいっぱいの涙を浮かべて、泣いてたまるものかと強く歯を食いしばって聞いていた。

「好きだけど、俺と付き合ってもきみを悲しませてしまうから」
「好きだけど、いまの俺はきみを幸せにする責任を負えない」

そんなことを言いながら困ったように優しく笑うきみのことを、充血した真っ赤な目でわたしは強く睨んでいた。


なんなんだそれは。優しさの暴力か。新手の暴力なのか。

あるいは詐欺か。相手のことを思いやってるふりをして自分の事を優しく取り繕う詐欺なのか。

そんなのただの言い訳だよ。バカらしくて笑っちゃう。

いや、バカなのはどっちなんだろう。こんなろくでもない男に長年片思いをしていたわたしのほうかもしれない。

あぁ、だけど、ほんと。自分がちょっとは賢い女でよかった。

いま目の前にいる大好きだった男が、優しさを言い訳にして、人の気持ちに向き合おうとしないろくでもない男だと気付けたし。こんなバカみたいな優しさのせいで、このひとのことを忘れられない、なんてこと思わなくてすむし。ほんと、よかった。

好きなら、悲しませないように努めてほしかった。
好きなら、責任をもって幸せにしてほしかった。

結局のところ、あなたはわたしのことを好きではなかったのだ。

ガッキーとか佐々木希とか石原さとみだったら、好きじゃなくても付き合ってくれていたけれど、わたしのことは好きじゃないから付き合ってくれなかったんだ。

つまり、そう。好きじゃないってことでしょ。距離とか歳の差とか仕事とか、そんなの関係なく好きになってほしかったけれど、ならばせめて、好きじゃないって言ってほしかった。せめて、本当のこと知りたかった。でも、それすら教えてくれないんだね。

ぜんぶ伝えてしまえば、こんな重い女なはずじゃなかったのに。なんて後悔してしまうのもわかっていて。

もしもわたしが、賢い女じゃなかったら、きみの優しさに甘えて、ずっと好きでいたのだろうな。

だから、「好きだけど」なんて言い訳は言わないで。

「気が済むまで好きでいてもいいんだよ」とかそんな、どこまでも優しいきみでいてくれたら、強がりもプライドもぜんぶ捨てて、バカな女になれたのに。

こんなぼさぼさの髪を撫でてくれたその手の優しさに、わたしはもう触れることはできない。


新垣結衣とか、その類の女になりたくて、あの秋空が底なしに晴れた10月に、わたしは髪をバッサリ切って。

顔面は変えれないから仕方ないと諦めて、それからずっと彼女たちのように誰もがうらやむ美しい髪に憧れたわたしは、いまもまだロングヘアのまま。

美容室でバッサリ髪を切ったら、次こそはちゃんと伸ばそうと思うみたいに、いつかまた誰かに恋をして、次こそはちゃんと幸せになりたい。なんてことを、思うのだろうか。


もしも許されるなら、ちょっとだけバカな女のふりをして、まだきみのこと、こっそり好きでいてもいいですか。



#日記 #エッセイ #小説 #note #幸せ #恋 #失恋 #忘れられない恋 #旅と写真と文章と #深夜に誰かが読む日記  #美しい髪

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