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2019 私はファンタジーが書けない

■2019.07 私はファンタジーが書けない

 これは剣と魔法の活躍する異世界のファンタジーではありません。

「ボーイズラブはファンタジー」

 の「ファンタジー」です。

 ボーイズラブが「耽美」と呼ばれていたころ、竹宮恵子さんや萩尾望都さん、山岸凉子さんなどが男性同士の恋愛を描いた作品を書いていらっしゃいました。
 小説ではそれ以前に森茉莉さん、竹宮氏たちと同じころに栗本薫さんなどが書いていました。
 「耽美」のころの作品は、舞台がギムナジウムや海外であったり、ジャンルが家元物や歴史物であったりしました。特殊な環境で男性(少年)同士の生々しい恋愛が描かれたのです。

 「耽美」を経て「JUNE」が誕生しますが、「JUNE」では、以前のように特殊な環境ではなく、現実の世界での男性同士の恋愛が描かれるようになりました。
 このころから、作品の環境は現実に近づきましたが、男性同士の恋愛には、現実から遊離した「ファンタジー」の要素が入り始めました。
 私は、「JUNE」の時代は、現実とファンタジーが入り交じった過渡期だったと思います。

 「JUNE」から「ボーイズラブ」の時代へ入ると、さらにファンタジーの要素が加速しました。
 「JUNE」の時代にはあった男同士の恋愛の葛藤や重さが消え、現実ではありえないゆえに明るく、ハッピーな男性同士の恋愛が描かれます。「花嫁」「結婚」「出産(オメガバース)」などのプラスの要素もあれば、「モブレ」「監禁」「リョナ」などのマイナスの要素もあります。
 舞台も現実から非現実まで多彩になりました。
 が、それらの共通点は「ファンタジー」であるということです。
 ファンタジーであるから、現実にはありえない甘々な恋愛も、受けが激しく痛めつけられる強姦シーンも書けるのです。

 私は古い人間で、「JUNE」の現実ベースの話でなければお話を書くことができません。
 男同士の恋愛の葛藤や同性を愛する苦悩を抱えたうえで、現実にありえるかもしれない奇跡の恋愛が見たいし、書きたいのです。
 ボーイズラブでも現実の重みが描かれた作品があるので、私は、ボーイズラブも「現実ーファンタジー」間のグラデーションのなかで存在するのだと思います。

 これから自分にもファンタジーのボーイズラブが書ける日が来るのかもしれませんが、私は当分、古い「JUNE」の現実ベースのお話を書いていきたいと思います。

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