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シーンスケッチ『ニンジャ・ボルケーノ』

(これまでのあらすじ)サクラジマ・アイランドの噴火により命を落とした青年は、邪悪なるマグマ・ニンジャのニンジャソウルに魅入られ、ボルケーノとして復活した。灰にうもれた旧カゴシマ市街の一角に己の王国を築く彼の元に、一人のニンジャが現れる。


ただいるだけで命が削られる”熱い”灰地の空気を全身で味わいながら、ボルケーノはかつて一度死んだあの日を思い出していた。

十年前、月が砕けたあの日以来、この地はサクラジマ・アイランドから噴出した致死性の火山ガスと灰に塗れ、彼も含めた市民は山中都市へと押し込まれることとなった。

ほどなくして両親は死に、彼は自分の吸う空気を買うため、危険な都市外の復興作業員に志願せざるを得なくなったのだ。

だが作業に慣れてきたある日、あっけなく火山ガスの突発的噴出事故により死んだ。そのはずだった。

「ドーモ、ボルケーノ=サン。ジゲンリュウです」

「ドーモ、ジゲンリュウ=サン。ボルケーノです。貴様さてはネオカゴシマの防衛局の手の者。一人で来るとは、舐められたものだな」

素早くアイサツを交わしたボルケーノは天を突く様に腕を掲げ、身につけた特殊カトン・ジツ、カザンダン・ジツの構えを取る。先ごろネオカゴシマから王国繁栄のため、資源と人とを拝借し、ついでに邪魔をした者を数人ばかりを灰と化さしめたが、その追及であろう。そういう推理である。

そう、王国だ。ようやくガスの薄れ始めた旧カゴシマシティ南部、かつては市民で賑わったレジャー施設跡地に、自分の王国を築くのだ。

「否。だが、そうだ。防衛局ではなく、私の意思でここにいる」

ジゲンリュウは、まるでなんでもないように自然体でボルケーノに対する。

「ハッ、よくわからんがまあよし。大方最近ニンジャになって正義の味方気取りか」

「貴殿は殺し、奪いすぎた。そして、これからも殺し、奪うのであろう。貴殿のソウル、此処で断つ」

「何を馬鹿な。俺は返してもらっているだけだ!俺を、親を、多くの知り合いを見殺しにしたシティから、すべて返してもらうのだ!」

ジゲンリュウは腰のタチ・ブレイドを抜きはなち、大上段に構える。

それを見たボルケーノは、弱敵!と心中で叫ぶ。およそ近接戦闘では、カラテ生成した大質量灼熱岩石火球を無数に射出する彼のカザンダン・ジツを破ることはできない!

「イヤーッ!」「チェストーッ!」

しかし、イクサの結果は一瞬であった。

「な、馬鹿……馬鹿……な……サヨナラ!」

雷光よりなお疾い斬撃がボルケーノを真っ二つに両断し、射出直前のカザンダンも地に落ち砕けた。

「この地、守るべし。いずれ私も同じ地獄へ向かうゆえ」

寂しげにジゲンリュウはつぶやき、タチ・ブレイドを納刀した。

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。