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ヤクザの鉄砲玉は悪魔を撃ち抜けるか?

「コータ、こいつ消せ。報酬二千万。半分は前払い。サポートも出してやる」
「ヤスさん、すみません、素顔じゃないと本人確認がちょっと……」

 俺の任されてる古本屋にわざわざ現れた真伐組若頭 富康二……さんが前置きも無しに差し出したのは滅茶苦茶気合の入った特殊メイク姿の女? の写真だった。
 バチっとスーツこそ着ているが、肌は青。白目が黒くて瞳孔は赤。遅めの中二病か?

「いや、それが素顔だよ」
「えーっと、どういうことでしょう」
「悪魔なんだよ」

 いやだからどういうことよ。

 そう言いたい気持ちを抑えて、伊達メガネを直しながら中坊の頃から見慣れた顔を無言で見つめる。

「あー……そうか。お前ここ一年くらいこっちの仕事してないもんな」

 昔からは指の数が減った左手でヤスさんは頬を掻いた。昔と変わらない めんどくせえゲージが高まってる合図だ。ここでもう一押しするとキレる。

「太夫町の北な、ここ一年悪魔が仕切ってんだよ」
「……はい?」
「お前も本好きだしキン肉マンくらい読むだろ? あの悪魔だよ」

 いやその悪魔じゃねえんじゃないかなあいつら超人だし。

「で! さ! その、連中の幹部で、安藤とかなんとか名乗ってる女らしい。担当はクスリ。じゃ、後は頼んどくな」

 そして遂にめんどくせえゲージが切れたのか、そう言ってヤスさんは出て行ってしまった。
 その後にもらった資料によると、アンドロマリウスだった。もしかして72人いるのだろうか。

✙ ✙

 翌日。
 頼まれたことは仕方ないので例のサポート役と顔合わせをする。

 組の息が掛かってる喫茶店のカウンターで深見真を読んでいると、カランと音が鳴って扉が開く気配がした。

「……今日は休みですよ」

 が、入ってきたのはパーカー姿の白人女子大生(推定)。最近は真っ当な営業もしてるらしいので、間違えたのだろう。

「アータがコータ様でスね!? 一緒に悪魔をブン殺しまショウ!!」

 おう?

 そいつの頭には、光る輪っかが浮かんでいた。

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。