見出し画像

Just Like Honey ④

延期になる前の予定通りの日程でのライブだったら、ケイトとは出会ってなかった。

なぜって、後日きいたところによると、知り合うきっかけとなったシマ君が前年冬の間は仕事で違う街へ行ってたから。
だから延期にならずにいたら、シマ君は関東で、私とケイトは関西で、それぞれライブハウスに来てはいたけど、シマ君がいなかったせいで、ケイトと話すきっかけもなくすれ違うだけで終わってたってこと。

このことを思い出すと「袖擦り合うも多生の縁」って言葉が浮かぶ。映画の「パストライブス」かなって。
もし前世の縁ってものが本当にあるんだったら、そこでも私の片思いだったのかもしれないね。


結局その日は半径50m以内の狭いエリアで何件かハシゴした。
最後に辿り着いたのは、古くてカオスな雑居ビルの地下にあるミュージックバー(こんな言い方あるのか知らないけど、これが一番しっくりくる気がする)だった。

音楽好きが集まる感じのお店だったんだけど、私は学生時代のライブ&飲み友達からそこを教えてもらって、何回か遊びに行ってた。
ハナとも時々遊びに行くうちに、マスターが私たちの話からシマ君の友達だって察して、彼も近くに住んでるしよく来るよって教えてくれたんだよね。
シマ君との偶然が過ぎるくない?ってハナと笑いあってた。

閑話休題、初めてみんな揃ってそこに飲みに行ったんだけど、確かまたタニ君の計らいでケイトの隣に座った。
My Bloody ValentineのTシャツの上から、手ぶらでいたいからって理由で、物販で買ったジザメリのTシャツを重ねて着てたケイトに、うっさすぎる重ね着だって笑ったりして、相変わらず楽しく飲んでたな。

ハナとタニ君が来月、友達カップルと相撲を観に行ったあとご飯行くから、3人もきたら?って誘ってくれた。
この2人の共通の趣味、渋いよね。最高だと思う。
ケイトとの予定を無理にでもぶっ込んでくれようとしたのかは謎だけど(多分違う)、きっと今日みたいに楽しいよ!ってなったから、私とケイトとシマ君もスケジュールにメモした。

翌日も仕事だからとケイトは終電で、ハナとタニ君は近いから歩いて帰って行ったけど、シマ君は残っていた。

せっかくの連休だからと私も残ったものの、電車ももう終わっていたしあいにく自転車でも来てなかったので、近くのシマ君の家に泊まらせてもらうことになった。
帰る段になってマスターが「シマ、がんばれ!」なんて言ってたのを余所目にお店を出てからもお互いに、今更何も起こらないから〜、なんて話しながらとりあえず朝まで過ごさせてもらうことだけを目的に、チャリンコ2ケツでシマ君の家へ向かった。

彼女と同棲を解消してまだそんなに経っていないという、Nevermindのポスターが部屋の真ん中の壁に貼ってあるシマ君の家は、なんか予想通りすぎというか「らしすぎて」ちょっと面白かった。
ポスターの写真をハナに送ると、即レスでIkeaのぬいぐるみに缶ビールを持たせてる写真が送られてきた。
それを確認して、あーあ明日で連休も終わりだな、なんて考えながらベッドの隅っこでうとうとし始めた。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?