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思想家の休日

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2021年5月の記事一覧

健やかな足

健やかな足

夏の空は近いようで遠い、と海辺で濡れた君の髪が理想的な角度に揺らぐまでに起きた風のことを数学的に考えているあいだに降り注ぐあいまいな紫外線により出来たシミの意味を考える。宇宙空間に飛び出して、地球の表面のザラザラに触れる。あらゆる悲劇もちいさく纏まり、とりとめのないものが跛行し、さらなる苦痛を巻き込んでいく暗黒物質もよく見れば餡子みたいだね、と懐かしむ彼女の横顔の質感が恒久的に敷衍して、裁かれるだ

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どこまでも追ってくる君

どこまでも追ってくる君

どこにも月なんて出てないじゃないか、と泣く彼女を慰め続ける日を過ごす。月が出ていても、出ていなくても泣き続ける彼女。月の引力によって情緒が不安定になるとかというわけでもなく、たぶん夜になれば泣きたくなるだけであるし、それは月があってもなくても、泣くという行為によりカタルシスに至るだけである。赤黒く迫る宇宙の果て、宇宙の花のような銀河、陰鬱な少女たちが結う髪、艶のある髪のあいだからは、宇宙のインフレ

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物質の終わり

物質の終わり

よどんだ季節に浮かぶ真っ赤なトマトみたいな目をしている金魚、浴衣からのぞく宇宙が空間的なものを排除し、自らを哲学的に昇華させるために物理学を捨てる、と叫んでいる狂った夏の午後、蝉の声や、ゴーゴンの蛇頭、頭蓋を刺激する落雷のイメージが、なんかバッドブレインみたいだね、とハードコアパンクな連中が履き潰したスニーカーが転がる裏通り、林立するラムネや、景気の良い屋体などが並ぶ懶惰な日々、焦熱するためにニキ

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快音

快音

ムチムチとしたオートチューンにゆれるパイナップルの木、気概すらないから慣らされた無知な頭ゆえに柔軟な発想に至らない、と見下す連中が示唆する史観なんてものを噛み砕く強靭な顎、バロックの世界に溶けた天体、歴史上の地部に触れては、散漫な意識を毛繕いする猫の仮想カオスに住まい、VR世界で体感する流動的な本質の枷を外し、没入していく意識が敷衍し、普遍的な日常にぬいつけられた悲しみを解く優しい手のぬくもりが加

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雨のための供儀

雨のための供儀

世界終末時計の秒針が一秒進む。悪魔みたいな女の子たちの集合体たるSNS、耽溺する男たちの欲がむさぼる森羅万象を駆逐するために蹴落とした奴らが餓鬼に変わるためのルサンチマンを売りつける情報商材のクソ、乱立する兵器的なアイロニーがセンチメンタリズムを事務的なものに変えるための世界的な終わりを飛び越えるためのしなやかな筋肉、頭が硬いから退化するわけではなく、対価を求めるばかりで、事実がなんであるかも分か

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縛られないために

声の輪郭が包み込む原始宇宙と神の住処、あらゆる荘厳な歌劇により縁取られた永遠という宿たる身体、乱立する数字や科学の終わりから、からみあう精神が産んだ最初の子供が始めた政治により、この宇宙とは整然としていたのに、その政治により混沌に至ったのだ、と語る川のヌシ、あいまいな正義でカタルシスに至るいつわりの青春が生み出す喜劇や悲劇の隙間風により凍りついた大地、磔にされた過去からここまでの距離を測るマチルダ

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鉄の国

鉄の国

甘い卵焼きで出来た車、飼い主を傷つけないために爪を噛む猫、やさしい妻が待つ家、荘厳な風景にまじわる罪、あまりある意味の中では、ほとんどの意味などは無意味なものに転換し、少数の意見に騙されているだけの人々が騒ぎ立てる正義などに清潔さなどはないから、そのようなものには懐かずに思い出なんかは走り去る夏、似合わぬ水着を来た人々、順序よく記憶をむしばむ白髪のおばあさん、あらゆる悲劇を噛み締めたが故に擦り減っ

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狂騒

虚像の後ろ姿、浮腫んだ自分の顔、曇り空から現れた曙光、はじまりは同じ種からである、とあいまいな理想を建築した神のおざなりな思いが弾け飛ぶまでの軌跡、毛深い闇が迫る。サプリメントに閉じ込められた宇宙を飲み込む彼女の喉の動き、機械だらけで熱がこもった部屋、乱立する数字が夏と混ざり、乱気流を作り出すまでの未明の距離、リリカルな焦土から生まれた夏の花、あらゆる悲劇を詰め込んだ自転車のカゴがゆらぎ、風で震え

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浮遊する生命

価値観もチクチク痛む、と歌う凡庸な童謡が嬲る朝、鳴り止まない警報機がひびく薄暗いアパート、朽ちた乳母車に乗せられた数年前の新聞紙や、よくわからないチラシが散乱する廊下を足を引き摺りながら歩く老人たちの群れ、亡霊たちが居るアパートに住まうベンゾ系の姫、その姫のヒモ、その男の有機溶剤で溶けた歯から覗く宇宙の波形、経過していく力とはこのような昏倒したケモノから生まれるのだよ、と左派をかじった精神科医の差

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しなやかな雨

毒々しい森でゆらぐ果実、実像などは、ぼやけて見えるばかりだし、誰かに煽られて踊る猿たちの連帯感に引きずられる憂鬱すら体系化され、病名をつけられて、生きづらさを加速させたり、生きることから解放されたりするような情愛や錠剤などにより罪状を与えられ、その場で身動きすらとられなくなる。自分たちの保身のためだけに動く傀儡たち、即座に溜め込まれた怒りをぶつけるための権威や権力をねつ造し、集中砲火を続けたりする

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優雅な散歩

すべてを塗り替えるために生まれた愛の隘路、逸脱する影を追う十全とした閃きの加護、道理が不埒なものを引きずって、破瓜型の希望が幼稚な同期を終えて、脳内で直接に接続されたアノミーにより、基盤などを破壊し尽くすバンダリストを次々と複製するあいだに、大罪なんかを謳い、自らの罪で恍惚としている複雑な真理に寄りかかる幽霊たち、立場を謳い、負債なんかにより塞ぎ込んだ怠惰な世界を切り取る私小説的なものが、湯呑みか

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ブヨブヨとした大気

生きていく意味などは、はなから無いのだし、だから適当に生きろ、と儚く散ったミュージシャンたちの辞書を読み耽り、あたかも生きてることは素晴らしい的な言葉で今を騙すことはしないで、生きるも死ぬも勝手であり、身勝手にいきいきと生き死ぬよろこびに尽きる、と語る父親の酒気、照らす夏の太陽が待ち遠しく、猫の首輪の鈴や風鈴の音が鼓動と混ざり、孤独なんかすぐさま、かき消してしまう。遠い空から外国の音楽が流れて来て

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雑念

截然とした欲望が出迎え、簡単に消費される日々が歪に苛み、最たる意味すら今に退廃し、たちまちに現れる緻密な意味が君を繰り返しいじめる。無作為な悪意が彼らの信仰をうばうまでの距離、はしたない今の質感に物質的な猶予や、不躾な質問が飛び交う最中、採決される罪が女々しく折り重なり、感じる意味を自覚する前に、たちまちに君の意思と乖離していく自分との距離を詩的な翅で一気に距離をつめ、自らの意思が断絶される前に、

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忘我でゆらぐ亡霊

退屈な破壊者たちが退化させる世界、求められる退屈の中での贅沢、奪われるための時間は、退屈を楽しむことすらできずに骨と皮になり、理論上での老化を受け入れるためのためらいの雨が降り注ぎ、その雨に混ざる毒素により溶けていく身体を受け入れ、左傾化していく思想がやがて中庸を求め、中毒性があるリベラルなまやかしに毒され、やがては右傾化し、戦争による大義と対価を求め、持て余すだけの兵隊を整列させ、自らの快楽を保

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