突撃!隣のファイナンス|ヤプリIPOの「新しい挑戦」についてCFO角田さんに聞いてみた
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突撃!隣のファイナンス|ヤプリIPOの「新しい挑戦」についてCFO角田さんに聞いてみた

スタートアップの気になる資金調達、IPO、M&Aをシンカ代表の金坂が直接インタビュー!

今回は、2020年12月22日に東証マザーズに上場された株式会社ヤプリのCFO角田さんにお話をお聞きしてきました。

突撃!隣のファイナンス ヤプリ IPOの「新しい挑戦」について CFO角田さんに聞いてみた。 (1)

金坂が気になったのは「IPOでの新しい挑戦」

旧臨報方式では過去最大の機関投資家比率・海外投資家比率などのトピックをメインに、詳しくお話をお聞きしてきました!

旧臨報方式で機関投資家比率7割 & 海外投資家比率5割

金坂:今回のヤプリのIPOでは、新しいことに挑戦しているということで、この投稿を見た方も気になっていると思います。ぜひ具体的に教えてください。

角田:実はストラクチャー自体は目新しいものではなく、オファリングも旧臨時報告書方式です。ただし、最初から「臨報史上過去最大の機関投資家比率・海外投資家比率」で、臨報の限界まで攻めたいと思っていました。証券会社には比率はもちろん、バリュエーションやバイネームで必ず入って欲しい投資家について伝え続けていました。

結果的に、時価総額500億円未満でありながら機関投資家比率はオファリング全体の7割、且つ海外投資家比率が5割(正確には49.9%)になりました。後者については、英語の目論見書が無い中で過半数を超えるのは流石に難しいという判断で、需要としては大幅に超過していたのですが49.9%に抑えました。

これはどちらも、主幹事証券のみずほ証券・大和証券から、過去最大の比率と聞いています。

金坂:海外投資家比率が「機関投資家の」ではなく「全体の」5割なんですね。では、機関投資家も国内より海外の方が多いんですね。

角田:そうです。全体のオファリングサイズが180億弱だったんですが、そのうちの半分が海外です。全体の5割が海外、3割が国内機関投資家、2割が個人投資家という感じですね。

金坂:その方針は角田さんが提案されたんですか?

角田:はい。僕のワガママ…ではないですが、せっかくやるなら中長期を見据えて意図を持ったIPOにしたいという思いがありました。

本当は、グローバルオファリングをやりたかったんですが、やはり英語の目論見書となると、弁護士費用などで数千万から1億円ほどコストがかかることもあり、今回は見送りました。

そこから「じゃあ臨報でどこまでできるんだろう?」と思って調べてみると、臨報でも海外投資家比率の上限はないんですよね。しかし、流石に英語の目論見書が無いのにあまりにも多過ぎると証券会社からストップがかかるだろうということで、5割に。

そもそもオファリングサイズなどが違うので比較は難しいのですが、グローバルオファリングでも、海外投資家比率が半分以上という日本の事例は多くない状況です。直近だと、プレイドさんは海外投資家比率が高いですけどね。

その中で、僕たちが500億円未満の時価総額で、かつ臨報で5割の海外投資家比率を実現できれば、日本の多くのスタートアップにとって良いケーススタディを示せるんじゃないかと思いました。

先ほども話したように、グローバルオファリングって実務だけでなくコスト的にもとても大変なので。

金坂:オフレコかもしれないんですが、米国の投資家も入っていますか?

角田:入っています。

金坂:おお。臨報で米国を入れられるのはすごい。

角田:米国の投資家には、リーガルにも確認しつつノンディールのIM(インフォメーションミーティング)で積極的に会っていました。各証券会社にもバイネームで「あなたはこの投資家を入れてくださいね!」と少しプレッシャーをかけたりも…。

金坂:そんなこと言っても、最後は発行体の役割ですよね(笑)

角田:発行体ありきなので、まあそうなんですけどね(笑)。ただそこは、みずほ証券はもちろん、大和証券の皆様にも強力にサポートいただきました。

前提として、発行体である僕たちが主体的に投資家と話をしてきたので、各投資家の目線なども肌感覚があったんですね。「発行体として、彼ら(投資家)は◯◯円までいける確信がある。僕たちがここまで話を持ってきているんだから、あとはなんとしても売ってください!」という感じで。

結果的に、入ってほしかった投資家にはほぼ全部入ってもらうことができました。名だたる海外機関投資家にも希望通り入っていただき、グローバルのピカピカなディールが臨報でも実現できるんだと実感しました。

VC分の9割 売り出し規模約150億円

金坂:ポストバリュエーションは、フルダイリューション目安で約420億ということでしたが、VCにはどれくらい売り出してもらったんですか?

角田:VCには9割くらい売り出してもらいました。

金坂:それはすごい!

角田:制度ロックアップ分を除いてですが、売れる分はほぼ全部売り出してもらいました。

金坂:なぜ皆さん応じてくれたんですか?

角田:それはもう、事前にずっと言ってたからですかね。シリーズBぐらいから、初めて出資する時点で「IPOの時には売ってもらいます」と伝えていました。最初は半分冗談みたいなトーンですけど(笑)

金坂:それは「契約」ではないけれど「約束」という感じですか?

角田:明示的ではないですが、VCの方々も期待値として「角田はIPOで売らせる気でいるぞ」というのはあったと思います。

あとは、目論見書価格が出る前に、直近のIMなどに基づき株価と売り出し比率の目線を合意していましたね。「これくらいのバリュエーションになりそうなのでこれくらい売って欲しい」というのを具体的に伝えていました。

VCのみなさんとしても「リターンを考えるとこれだけ必要だから…」という話もあったんですが「では、◯◯億なら9割、◯◯億なら8割、◯◯億なら7割。少なくとも7割は売ってもらわないとディールが成立しない。その代わり、バリュエーションは絶対にこれ以上にします」というように話をしていきました。

金坂:ちなみに、先陣を切って「私はIPOで売り出します」と言ってくれたVCの方はいましたか?

角田:GCP(Globis Capital Partners)の今野さんとエイトローズ(旧フィデリティ・ベンチャーズ)の村田さんですね。GCPさんにはVCラウンドを複数回リードしていただいており、ステークホルダー全員にとって良いディールにするために、と今野さんにご賛同いただけたのは大きいですね。村田さんはシリーズCで入っていただき、制度ロックの割合が多いので、可能な範囲で最大限貢献すると言っていただきました。

目論見書価格のタイミングでも少し交渉はあったのですが、オファリングの規模で150~200億あれば良いだろうということで落ち着きました。

金坂:150~200億でもかなり超過需要が出たんじゃないですか?

角田:ありがたいことに、一瞬で埋まりましたね。ロードショーが終わった後は、ブックビルティングを開始する前に海外のロングだけで枠の2倍くらい入りました。仮条件出してすぐ上限で数十億円の札がどんどん入るような状況で。

金坂:ヤプリのクライアント企業を対象に親引けもされたんですね。

角田:はい。TSIホールディングス様、アルペン様の2社で、各2.5億円で合わせて5億円ですね。

金坂:親引けって、どのタイミングで行うんですか?ブックビルディングのタイミングで「何株買いたい」と先方に希望を出してもらうのか、それとも上場承認されるタイミングで「この会社に何株」と決めるのか。

角田:詳細の確定はブックビルディングの後、公開価格が決まってからではあるんですが、実質的な投資判断は限定的な開示で事前に行ってもらう感じですね。もちろん、すぐに判断できる投資金額ではないですし、先方社内で決裁を整える必要があるので、こちらとして「金額はこれくらいを想定していますが、株価はまだわからないんです。どうでしょうか?」とお話することになります。今回は、各社さんに2.5億ずつで決裁を取ってもらって、公開価格確定後に「結果的に何株です」という感じでお願いをしました。

金坂:そこまで手間をかけて親引けを行った理由ってなんでしょうか?先ほどの話からも、需給の観点では不要なようにも思うんですが。

角田:そこはクライアントとの関係値ですね。TSIホールディングス様とアルペン様はヤプリのトップクラスのクライアントなので。上場前の情報だけで数億規模の投資判断をしていただくとなると、先方における判断も難しいので、今回は社数を絞ってお話させていただきました。

金坂:説明コストを考えると、なかなかやれないですね。

角田:ヤプリは中立的なプラットフォームなので、基本スタンスとして資本関係で特別な対応をするということはありません。ただ我々の成長が彼らの利益に直接的につながるので、今後も引き続き関係性を深めてやっていきましょうという意味で、やって良かったと思っています。

ロードショーは120社超え

金坂:ちなみにロードショーは何件くらいされたんですか?

角田:ロードショーは120社以上やりましたね。朝6時から夜24時まで1日11~12件とかやってました。

金坂:それはすごい…。普通は40~50社でもけっこう入ったなという感じですが。

角田:オンラインだったというのもありますけど、証券会社にも「こんなにやった会社無いですよ」と言われました。ちょっとやり過ぎた感じもします(苦笑)

金坂:各会に角田さんは全部出たんですか?それとも代表の庵原さんと手分けしたんでしょうか?

角田:今回はチームを分けなかったんですよ。日英で庵原・角田の比重は変えていましたが。当初は僕がメインで話していたのですが、途中で海外投資家から「(英語なので角田さんがメインで話していたが)CEOがもっと話すべきだ」というフィードバックが来て。そこからは、英語でも最初に庵原パートを作って、スクリプトを準備して話してもらうようにしました。

金坂:なるほど。そこから庵原さんは英語の勉強をされたんですか?

角田:あまりしていないと思います。庵原は米国に留学経験があって、もともと通訳が必要なレベルではなかったんです。会話の7割ぐらいはわかって、僕も全て説明する必要がなかったので良かったです。話すのも後半は慣れてかなり上手くなっていましたね。これが通訳必須となるときつかったと思います。

金坂:以前から海外IRはしてましたよね。Twitterでも「エジンバラにいます」みたいな投稿を見たことが。

角田:海外IRは2018年くらいからずっとやってますね。現地に直接行くのは大変ですが、彼ら(海外機関投資家)ってコロナ前は4半期に1回日本に来ていたので、そのタイミングで証券会社にいる友人に紹介してもらって会ったりしていました。2019年頃からは証券会社のカンファレンスも出ていました。ヤプリの資料は基本的に英語がベースなんです。英語で作成して後から日本語に訳しています。そういうわけで、ロードショーもIMも特別な準備なく普通にやっていましたね。

まとめ

金坂:客観的に見て、今回のIPOは大成功だったんじゃないでしょうか。株価も順調ですし、その前提として、成長可能性などの資料もわかりやすくてストーリーもシンプル、プロダクトも良いし、素晴らしいですね。

角田:ありがとうございます。海外機関投資家を含め希望していた投資家にも入っていただけましたし、証券会社の方からも「バンカー人生でmemorableな案件になった」、「興奮している」と言っていただけたのは嬉しかったです。VCの方々にもお約束したリターンが出せ、この形でやりきれて良かったと思っています。

今回のヤプリのIPOが1つの事例になって、海外からのファイナンスが広がるといいなと思います。

「臨報で海外投資家比率5割」というのはこれまで無かったので、証券会社としても不確実なところがあり不安もあったと思うんですが、事例が増えれば当然慣れてくると思うんです。そうなると、証券会社としても、面白い発見やトラックレコードも欲しいし「海外でもこれくらいできますよ」と逆に提案してくれるようになると思います。

スタートアップ企業の中でも、グローバルファイナンスを行う人が増えて、新しい機会が創出されるようになるといいですね!

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(角田さん、貴重なお話ありがとうございました!)

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文・構成/苞山美香

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