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【レポート】スタートアップCFOのリアルと、コロナショックへのアクション|ジェネシア・ベンチャーズ×マネーフォワードシンカ勉強会

活躍するスタートアップCFOの「キャリア選択」「現職への参画の決め手」そして、ファイナンスに留まらない「リアルな役割」「具体的な業務内容」とは?

コロナショック下で、CFOとして「期待されること」と「具体的なアクション」とは?

2020年5月12日、ジェネシア・ベンチャーズの投資先企業を対象に、ジェネシア・ベンチャーズとマネーフォワードシンカが共同で、オンライン勉強会を実施しました。

テーマは「活躍するスタートアップCFOと経営チームのリアルとコロナショックへのアクション」

4名のCFOとモデレーター水谷さんのディスカッションは2時間以上に及び、スタートアップCFOのリアル ー参画経緯からその後の役割の変遷、コロナショックなどの環境変化を受けてのアクションなどー が凝縮された会となりました。

限定公開の勉強会でしたが、ぜひ多くのスタートアップ経営者、CFO(候補)の方にお伝えしたく、レポートを公開させていただきます。

少し長くなりますが、登壇者の皆さんの「ぶっちゃけ話」も含めて、エピソードに富んだ内容となっておりますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです!

登壇者プロフィール

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自己紹介|キャリアの経緯は三者三様。入社時の肩書は「CFOではなかった」が大半


◎金坂|スタートアップが市場の勢力図を塗り替える醍醐味。マネーフォワード30名→750名の成長期に、資金調達、IPO、M&Aを実施。

現在のキャリアのきっかけは、ゴールドマン・サックス証券(GS)時代、サンフランシスコで急成長中のスタートアップを担当した時の事件です。僕と一緒に担当していたメンバーが、そのスタートアップの事業が楽しくてそのまま全員転職してしまったんです!その中には、後に同社のCFOになった方もいました。

その時、スタートアップが巨額の資金調達をして、これまでの市場の勢力図を塗り替えるのを目の当たりにして、日本でもこういうことをしてみたいなと思いました。

その1年後「マネーフォワードが日本のベンチャーで1番面白そうだ」と思っていたのと、当時友人がすでに働いていた繋がりもあり、代表の辻とも会って、他社は1社も見ずに入社を決めました。

当時マネーフォワードは30名くらいのまだ小さな会社。実は僕、当時結婚して1週間後くらいで、いきなり転職すると言って、妻の両親にも説明にいきました(苦笑)

財務部長として入社して最初のファイナンス、そこからCFOを務め、CFOを引き継いで、現在はマネーフォワードシンカで、スタートアップの外部CFO的なサポートサービスを提供しています。

◎峰島|スマートキャンプはたまたま?徐々に築かれた古橋さんとの信頼関係。

GSでベンチャー起業を支援する機会があり「ベンチャーって面白い。もっと近いところでファイナンスに関わりたい!」と考え、グリーベンチャーズに入社。スマートキャンプは当時の投資先で、出向をきっかけに、その後入社しました。

キャリアについては、GS時代の先輩だった金坂さんの影響も大きいです。
グリーベンチャーズに入社したタイミングでお会いした時に、お祝いしてくれるかと思いきや「しっかりスタートアップの実務の経験をつんでからVCをする方がいいよ」と説教されて(笑)

おっしゃる通りだなと思ったのと、そのタイミングに、スマートキャンプがSeriesBで資金調達を実施するという話があり、1年間出向しました。その後「こっちの方が楽しいな」と思って、上司に相談したところ、正式入社が認められ、そこから約3年スマートキャンプ、マネーフォワードへのグループショイン後は、『マネーフォワードクラウド会計plus』の事業責任者も兼務しています。

スマートキャンプになったのは実はたまたま。当時、グリーベンチャーズに、適任者が私ともう一人くらいしかいなくて。古橋も最初あまり僕のことが好きじゃなかったみたいで、最初は冷たい対応をされていた記憶があります(笑)2016年から、週2ペースでオフィスに手伝いに行き、そこで仲良くなりましたね。

◎金谷|MBAを退学してスペインから弾丸入社。助太刀には入りたいが「CFO以外で」と提案。

もともと、ベンチャーにとても興味があり「どこにいこうかな?」と考えるようになりました。

大和証券時代に、建設や不動産業界を担当していたこともあり、助太刀のことは一方的に知っていました。不動産系の業界新聞で、ピッチコンテストで表彰された記事が記憶に残っていて。当時スペインでMBA留学していたのですが、我妻さんに働きたいと連絡して、まだMBAの夏休み期間中に弾丸で東京に戻り、そのまま退学して入社しました。

スペイン留学には妻も連れていっていて、当然妻も自分のキャリアを止めて一緒に来てくれていたのに、退学することになり、僕も妻の両親に頭を下げに行きました(苦笑)

入社当時の規模は従業員10名、プロダクト的にはSeriesAからBの間くらいでした。入りたいと思った理由は、建設業界は成功した時の社会的なインパクトも大きく、リターンも大きいだろうと考えたのと、組織規模が小さい方が裁量を持って働けそうだと思ったからです。

実は、入社時は「CFO以外で」と話していたんですが、その話はまた後ほど。

◎広瀬|会計士はこのままではやばい!修行のために監査法人を飛び出した関西のCFO。

公認会計士として監査法人で働く中で「監査経験だけではベンチャーのサポートが十分にできない。修行するためにも関西から出て新しい経験をしよう!」と思い、東京のフィナンシャル・アドバイザリーサービス(FAS)の会社でM&A関連の仕事を経験しました。

そして、監査の時の経理の方との関係性や、FAS業務実施時における財務デューデリジェンス(DD)チームの立ち位置などから、「会計士はCFOなどでキャリアを示していかないとやばい!」と思ってベンチャーに飛び込みました。

その後、事情があって関西に戻る時に、スタートアップ専門の人材紹介会社を通じてACALLへ入社しました。公認会計士、人材紹介サービス経由ということで、今日の登壇者の中では僕は珍しいパターンかもしれません。

関西で探した時に、大学発のまだプロダクトのない研究ベンチャーが多くて、その中で、SaaS、AI、フィンテック等ホットな業界で、上場から3~4年の距離という条件で探して、ACALLに出会いました。

テーマ①|経営チームの構成を踏まえたCFOとしての役割/CEOからの権限委譲を含めた組織運営


◎金坂|ファイナンスとアライアンスに振り切ったCFO。管理系業務は信頼できるメンバーに任せる。

金坂:マネーフォワード入社当時は、CFOではなく「財務部員不在の財務部長」でした。

印象的なエピソードとしては、もともと入社前のうっすらと聞いていたKPIをもとに、売上が数千万くらいあると想定していたんですが、入社してみたら実際は数百万しかなくて「あれ?なにか間違ったかな?」と思って、確認してみたら、社内で売上データがちゃんと管理されていなかったんです。「売上の数字これかな?」と見せられたのが、ただの入金数字だった(笑)

まずは、ビジネスモデルを構造化して、事業計画を作成して、ファイナンスするというのが、当時は必須でした。すでにポスト30億で5億のファイナンスを売上0の状態で実施済で、次のファイナンスのハードルがめちゃくちゃ上がっていた中「売上延びてきたから次はバリュエーション100億くらいでいきたいと!」と当時月商数百万円の社長の辻が話しているという、そういう状況でした。

最終的には、ジャフコさんが再度リードで80億ぐらいなら5億円の追加出資をコミットしてくださり、残り約10億をいろんな方に入っていただいて無事実施しました。ここまでが入社半年くらいです。

その後、おそらく再度ファイナンスが必要になると思ったのと、マネーフォワードのサービス上、金融機関との関係性が重要だと思ったので、いろいろな方経由でネットワークを作って、アライアンスを進めたり、資本業務提携の話をつなげたりという動きをしていました。

なにかあった時にファイナンスを出してくれる方との関係性構築に時間を使って、残った時間で事業関係のアライアンス。これが最初の1~2年ですね。

一方で、管理側はほぼ何もやってないです。僕自身に知見がなく、興味の面でも、僕以外でそこができる優秀な人に入ってもらおうと考え、採用に注力しました。経理部長候補、経理の若手を口説いてつれてきたり。そういうわけで、管理系CFOの仕事はほとんどやっていない、というかそもそもできないという感じです。

IPOは入社して3年後くらいに実施しました。管理系の役員のメンバーと役割分担をして、いろんな条件交渉やエクイティストーリーは僕が、いわゆる審査実務の細かいところは管理系の役員や、当時の経理部長にやってもらいました。

CFOの中でも、ファイナンスとかアライアンスなどに振り切っている。それ以外をやってくれる優秀なメンバーがいたのでやれたという感じ。

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水谷:ファイナンスとアライアンスに振りながら、組織については他にしっかりできる人に任せる。これは事前に辻さんとどの程度話していたんでしょうか?

金坂:事前には何も話していませんでした。とりあえず入社したらファイナンスをやって、「IPO目指そうね」くらいで、実際に入社後にチームメンバーと会社の方向性とすり合わせながら行いました。

水谷:金融機関とのアライアンスを進めるにあたって、事業側チームとの住み分けはどうされていたんですか?

金坂:もともとFintechで、金融機関にOEM(ホワイトラベル)で提供したいという話があり、その営業をやる人がいなかった。資本業務提携という文脈と絡めて、全国の地銀を回って、ファイナンスの話もしながら、アプリも導入しましょう。という話をしたり、実際にアプリの導入が決まった後に出資もしていただくようなパターンもありました(笑)あまり、他社で再現性がないかもしれませんが…。

水谷:ファイナンスの難易度が高かったという話もありましたが、「売上はまだだが、ユーザー数が延びておりデータは取れている」という中で、大型調達を決めるポイントがもしあれば。

金坂:ポイントが2つありました。

1つ目は、ジャフコさんに毎回入っていただけたこと。「ジャフコさんが出資して今回もこの価格で出してくれます」と話せると、地銀さんに納得いただける場合が多かったです。

2つ目は、期限を区切って実施したこと。2016年に、最初に3ヶ月でクロージングしようと決めて、パッケージまとめて7月中に社内の決裁をまとめて、8月に実施としました。議論になるところを事前に固めておいて、あとは意思決定だけですという状況でスケジュールが遅延しないようにしました。当時はマーケットが良かったという背景があるので、再現性は低いかもしれないですが。

水谷:強いリードをしっかり、がっちり固めるところと、稟議を上げる側が進めやすいようにスケジュールを仕切りながらお尻を叩いていくという感じですね。

◎峰島|古橋のやるべきでない仕事を全て引き取る。CxOが連携してCEOの競争力発揮をサポート。

水谷:さっそくですがこんな写真を見つけてしまいました(笑)

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(左からスマートキャンプの取締役林さん、峰島さん、阿部さん。ポツンとしているのが代表古橋さん)

峰島:どこでこんな写真を(笑)

水谷:経営チームがどんな構図で運営されているのか気になります。

峰島:ではこの写真の話もしますね(笑)

私がスマートキャンプに入ったのは、ポスト5億のSeriesAを終えた直後くらいでした。当時は、CFOではなく「無所属の何の役職もない人」として入りました。

正式入社際も、CFOを打診されたんですが、いったん断っています。
僕は当時26歳だったので「こんな若手にCFO任せるのもどうなんですか?」と断って、CFOを採用しようと20人くらい面接したんですが、会社に合う人になかなか出会えず。そこで「自分がリプレイスされるまでしっかり頑張ろう」と覚悟を決めてCFOになりました。

SeriesAの時期 では正直CFOというより、より事業に関わる動きが大きかったです。事業をある意味ドライな視点で見て、見落としているKPIにスポットライトをあてたり、新規事業をやっている時期もありましたし、IPOを目指していた時は、IPO実務もしていました。

管理系も、2018年の後半くらいに良い方が採用できるまでは、僕が管理部長的な立場で内部統制などもしていました。

株式のVC比率が多かったので、安定的に持ち続けてくれるストラテジックパートナー探そうとKDDIとの資本業務提携。そのアレンジやアライアンスなども…。

古橋との関係ですが、私はもともとファイナンス、古橋は事業家気質、良い意味で違っていました。そこで私が意識していたのは「古橋の苦手な部分を全て引きはがす」ということ。古橋が得意なのは、事業づくりであったりチームづくり。逆に言うとそれ以外のところを古橋にさせないということです。

先ほどの写真にも関係するのですが、私以外に林、阿部という取締役がいて、ベンチャーのCxOって、CxO全員で、会社が見なければいけない360度が見えていれば、誰がどこを担当していても良いと思っています。

林、阿部、僕を社内では「トリニティ」と呼んでいるんですが、基本的にはトリニティで古橋のやらなくていいところは完全に巻き取る。古橋のリソースがスマートキャンプの競争力なので、新規事業、事業の非連続な成長に集中してもらうためです。

さらにこの写真について説明すると、CEO(特に創業者)とそれ以外の役員にはやはり差があると思っていて。創業者に対して「こうする方が良いと思います」と意見する時は、役員陣が一枚岩にならないと、社長のエネルギーに勝てない。

そういったことから、古橋以外との役員陣ともかなり密接にコミュニケーションを取るようにしています。週何回か定例の時間を取って今も話すようにしています。

古橋はそれを快く思ってなくて、そしてこの写真が生まれたという(笑)

水谷:そうだったんですね(笑)

古橋さんの苦手なところを引き取るということで、具体的にどんな話をしながら権限委譲、業務分担を進めていったんですか?

峰島:2つパターンがありました。

1つ目は、もともと古橋がやるべきでなかったこと。これは「私がやります」ですんなりもらいます。

2つ目は、やるべきだけどやれてないこと(売上、KPIの正確な把握など)。これは自分で見つけて自分でやります。

古橋は「何でも好きなようにやってみて」という姿勢なので、それを活かして、自分がこれいいなと思ったことはどんどん進めます。

水谷:林さん、阿部さんとも役割分担する中で、CFOとして意識していたことはありますか?

峰島:CFOってある種「投資家目線(冷めた目線)」を持っているところがあって、見落としている視点について「これどうなっているんでしょうか?」と聞いて、確かにそれ考えてないなとなったら、考えるところまで一緒にやるというのを大事にしています。

非連続な動きとか、日常業務の中では思いつきづらいので、ボクシルの価格改定など、プロジェクト化するものは担当するようにしていました。

一方で、財務というより事業に向き合う時に意識しているのは「自分のロジックベースでの感覚を疑わない」こと。

違和感のある数字に出くわした時に、チームの人に聞いたら「こういうものです」と回答が来たとします。最初は「そういうものなのかな?」と思うのですが、やっぱりそういうところに何かしらの問題があることが多い。仮にその分野の経験がある人が「大丈夫」と言っても、なぜ大丈夫なのか?をロジックで納得できるまで聞く。納得できない場合は、ピュアなマインドでみつけていく。

水谷:疑問を疑問のまま残さない、CFOだろうが事業サイドだろうが自身の軸を持って判断する。改めて貴重なお話ですね。

◎金谷|事業を見ていることがCFOとしても強みに。COOとタッグを組んで社内コミュニケーションを再構築。

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金谷:入社時に代表の我妻に伝えたのが「僕は証券やファイナンスのバックグラウンドなのだが、財務系はやりたくない。事業づくりがしたい」ということ。

当時、ファイナンスバックグラウンドの方がベンチャーでCFOとして活躍する事例は多かったのですが、僕は精緻なバリュエーションやモデリングが嫌いで…。もっとダイナミックなことがやりたいから、財務系はやりたくないけど、働かせてくれませんか?とコミュニケーションをとっていました。

「やはりCFO前提で入らない?」「いや、僕はそういうスキルセットないんで」「うちは誰もいないから大丈夫だよ」みたいな感じでやり取りしていたんですが、(実際に入社したら、我妻も諦めるだろう!)と思って入ったら、入った瞬間に、当時の資金調達のクロージングを任されることになり、それが完了してそのままCFOを任されることになりました(笑)

みなさんおっしゃる通り、その時のラウンドが終わったので、いわゆるCFO的な動きはすぐには求められていなくて、アライアンスや、広報としてプレスリリースを書いたり、何でも屋さんとして事業に関わっていました。

今も法人営業のチームは私が見ています。投資家の方と話す中で、事業サイドを見ているのはプラスですね。いかに事業のことを魅力的に伝えられるかというコミュニケ―ションが求められているので、事業に直接関わっているのは強みだと感じます。

一方で管理系のところは、私がおおざっぱで苦手で見ていないので、手をつけていませんでした。COOの植村が、パーソルキャリアの経営企画経験者で、細かいことがめちゃくちゃ得意で、植村に任せられています。そういう意味だと、助太刀は、いわゆるCFOとCOOの機能が一部逆転しているかもしれないです。

我妻は「役割やポジションはあくまでフォーメーション。その時のリソース、状況によって変わればいいんだ」とよく言っています。私が管理系を見ていると、私もストレスだし、チームも回らないという感じになっていたはずなので、今の形が良いと思います。

CEOからの権限委譲に関しては、うまくいった方だと思っています。

我妻がビジョンやプロダクトの想いが強く、建設業界の経験も長いので、若いメンバーとガッツリ事業のやりとりをすると、ハレーションが生まれてしまうこともあると考えていて。私と植村が入ったタイミングで、我妻は個別のMTGに入らなくなりました。私か植村が管轄するMTGに入り、その代わり、私と植村と我妻で週1がっつりMTGする。我妻と各メンバーとのコミュニケーションは1on1にしました。この辺りはかなりドラスティックに変えましたね。

水谷:事業の魅力をリアルに感じ取って、投資家サイドに伝えられるのはCFOとしてもとても大事ですよね。COOの植村さんとのコンビネーションを含めた経営チームのバランスの良さも、やり取りをさせていただく中で感じていますが、お2人の中で普段どういうコミュニケーションをされているんですか?

金谷:頻繁にその時その時に最適化してフォーメーションに変えています。
取締役で週末2時間くらい集まって組織図をみながらディスカッションをして、個々人には管轄している全体の朝礼で全体のビジョンなどを我妻から伝えています。私と植村がそれを補足する感じ。

ビジョナリーな我妻と、実際に手を動かすメンバーとの橋渡しが僕らに求められていると思うので、1on1で会社の方針を説明したりなど意識しています。

取締役同士のコミュニ―ケーションは、毎週月曜3時間3人で経営会議の時間を取っています。峰島さんのトリニティのお話とも共通しますが、我妻への話の持っていき方が難しい場合は、僕と植村の間で事前にすりあわせをしたりもします。

◎広瀬|未経験領域に飛び込むことで得た横断的なスキル。ファイナンスと事業をつなげ、予算策定からその後のオペレーションまで落とし込む。

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広瀬:すでにいろんなお話が出ているので、重なる部分も多いかもしれませんが(笑)

私がACALLに入った当初は、CFOとしてはバックオフィス周りがメインで、予算を組んだりKPIを管理したりしていました。

ファイナンスに関しては、Pre‐SeriesAをクロージングする直前だったので、クロージングからは私が引き取りました。

事業側は、セールスのMTGに入ったり、セールスフォースの導入から運用の設計、デジタルマーケティングも見るなど、本当にあらゆるところに参加していたような状況でした。

水谷:本当に幅広い!広瀬さんが入られてから、事業の可視化が一気に進んだなと感じています。

そして、一般的な公認会計士さんであれば、システム導入やデジタルマーケティングなど、なかなかできないと思うのですが、そのスキルは前職で培われたんでしょうか?

広瀬:そうですね。ピュアな公認会計士としての経験だけでは、CFOとしては立ち行かないと思っていて、前職でまずはベンチャー企業の経営企画を経験しました。

それこそ、当時はデジタルマーケティングのことなどは全くわかっていなかったので、そういう未経験の分野で積極的に事業を持たせてもらって、KPI管理、デジタルマーケティング、セールスの管理など、経験をつんで、その上でACALLに入れたのは大きかったですね。

水谷:ファイナンスだけに閉じた業務だけでなく、経営の可視化、実際にお客様にも会いに行くなど、Pre-SeriesAでの参画ならではの役割を担われていますね。

そして広瀬さんは、ご自身のキャリアについてもそうですが「危機感」というのが、行動の契機になって、それが後にプラスで返ってきているイメージです。

広瀬:そうですね。危機感や課題意識でいうと、ACALLに入った当時、会社として1番の課題は「予算」だと思っていました。予算の精度を高める必要がある状態だったので、そこは絶対に変えないとと思い、白紙のExcelから1からKPIを作っていって、トップダウンからも逆算で作っていってとうのを、やり続けました。予算を達成しているのか、達成できなかったらどうするのかというのを習慣化させていくことに注力しました。

水谷:シード期のスタートアップだと、予算と事業KPIをどう接続するのか、緻密な設計がまだできない部分も多くあるかと思います。そういうタイミングで、広瀬さんが入って、うまくつないでいけたのは大きいですね。

今日、勉強会に参加しているスタートアップの中でも、ファイナンスと事業をつないでいく部分、予算や事業計画にオペレーション上のKPIまでしっかりと落とし込んで大小のPDCAを回しながら事業の仮説をファクトに変えていくというところが課題になっている場合は多いと思います。広瀬さんのようにできる方がいらっしゃるといいなと個人的に思います。

広瀬:ありがとうございます。売上が上がったという時も、要因としてどのKPIが上がったのか、KPIはなぜあがったのか、というところが議論できていないと、予算が達成できなかった時の原因分析もできない。そういうところを変えることを重視していましたね。

テーマ②|資金調達手段としてIPO、M&Aを選択する際の事業タイミングや決め手


◎金坂|当時はできるタイミングで最速のIPOを目指した。今はIPOを急がず資金調達をするのも有力な選択肢。

水谷:このテーマについては、IPO、M&Aの経験者である金坂さん、峰島さんにおうかがいできればと思います。スマートキャンプさんのマネーフォワードさんへのグループジョインに当たっては、金坂さんと峰島さんは両社の交渉の当事者でもあり、色々とお伺いできれば。

金坂:まずIPOについてお話しますと、2016年の売上が15億円くらい。その時に上場前のファイナンスバリュエーションが200億円くらいでした。

そこで出てきた課題が「もうエクイティ出資してくれる先がなくなってきている」ということ。

今だと、機関投資家も上場前のマーケットにお金をだすようになりましたが、当時はそうではありませんでした。そこで、バリュエーション300億円をこえる形であれば、早めにIPOするのが良いだろうといのが、辻と僕が考えていたことです。

マネックスの松本大(おおき)さんからも「IPOはとにかくタイミング。できる時にする以外の選択肢はない」と聞いていました。

2017年の年始に「今年(IPOを)やろう」と経営陣全員でコンセンサスとりました。そのためには、新規事業の開始を遅らせるというような、事業への影響も出ることも踏まえての覚悟でした。結果、2017年9月に上場しました。当時はSaaSで赤字上場の事例がなく、大変だったけどやりきって、会社も強くなったと思います。

今から上場と考えると、タイミングはすごく難しいと思います。
今ってIPOのマーケットが閉じてしまっている状態で、これがどれくらいで回復するのか、時間がかかるという感覚がります。これからIPOされる企業は、いつをターゲットにするのか難しいですね。

いったん最速でいくのか。もしくは、例えばSmartHRさんであれば、IPOと比較しても全然良いバリエーションでファイナンスできていると思うんですが、そういった調達ができるのであれば、IPOを急がずに、腰を据えて財務基盤固めた上で投資をどんどんしていく方が合理的なんだろうなと思います。

2016年、2017年ころは、あまり未上場スタートアップに機関投資家からお金が入っていなかったが、今は入ってくるし、VCからも資金が入っているし、IPO急がず資金調達をするのも、今では有力な選択肢だと思います。

◎金坂|IPO後に見える別の世界と資金調達の可能性。IRではコミットしたことを外さないのが重要。

金坂:いざ上場すると、また別の世界も見えてきました。
上場前は国内の投資家だけでしたが、上場後は驚くほど海外投資家との面談が入って、今は海外投資家比率が40%~50%。それくらい資本市場だと、いろんな投資家と出会えるのだと実感しました。

IPOの後、投資やM&Aで60億以上使って、上場後の累計赤字も50億くらい。
上場後2回公募でファイナンスをしてそれが140億。今年の1月のファイナンスでは、12時間で需要が300億集まりました。

非上場の時と違う戦い方ができる。株式交換も使えるので株でM&Aもできる。IPOをすることで、資金調達やM&Aの選択肢が増えるのは良かったですし、結果的にタイミングも良かったと思います。

水谷:マネーフォワードの上場後の財務報告資料をみると売上高が増えるにつれて赤字額も増えている。その中で、資金調達も順調に進められており、すごいIRをされていると感じている。

金坂:IRに関しては、上場してからコミットしたことは外してないです。上場した時に言っていたことをできないと信頼を失ってしまうので、できないことは言わないというアプローチをしています。

初期のスタートアップでは、多少風呂敷を広げるくらいの話も必要ですが、上場株の投資家はそうではなく「言ったことはコミットメント」という世界。スタートアップも、説明の仕方や温度感をチューニングして話すのが大事だと考えています。

◎峰島|IPOは事業づくりにとってベストの選択なのか?M&Aの可能性を模索して。

水谷:峰島さんには、マネーフォワードへのグループジョインの経緯や、IPOを考えていた中でなぜM&Aに舵を切ったのか、買い手と売り手の関係性の中での交渉や、グループジョイン後の変化についておうかがいさせてください。

峰島:スマートキャンプがIPOを意識し始めたのは、SeriesBで3億円調達したくらいからでした。会社としてより大きなことを成し遂げるために、IPOを視野に入れ始め、実際に、KDDIとの資本業務提携をしたり、株主の顔ぶれを変えていくというところも含めて、準備を進めていました。

そして2019年のはじめ。いざIPOの準備が整ってきたタイミングで「はたしてIPOなのか」と立ち戻ったんです。

僕たちがやりたいのはIPOではなく、あくまで事業づくりです。
IPOが近づいてくると、事業への影響もリアルに見えてきて、例えば、赤字へのプレッシャー。純粋なSaaSではないので、黒字化求められることが予想されました。

一方で事業のフェーズ的には、まだまだかなり伸びる余地があり、打ち手もある。その中には、売上的にはマイナスのインパクトがあるかもしれないが、ユーザーのメリットを考えるとやった方がいいというものもありました。

IPOと、それに伴う市場からのプレッシャーで、まだ「さなぎ」状態の事業の可能性を潰してしまう可能性があすことに気づいたんです。

かといって、M&Aは相手ありきのもの。誰が手を挙げてくれるのかわからない中で、IPOと同じ机の上で比較することはできません。

IPOもできそう、事業も伸びている。取ろうと思ったらどっちの選択肢も取れる。だったら、この1年間は「M&Aするとしたらどんなプレイヤーが手を上げてくれるのか見てみよう」といことで動き始めました。その時はまだ、絶対にM&Aしようという感じではなくて、どのような可能性が取れるのか見てみようという感じでした。

そこで手を挙げてくれたのが、マネーフォワード。

もともと、辻さん、金坂さんに、私と古橋がお世話になっていたり、社員同士の親交もすでにあって、オフィスも物理的に田町で近い、カルチャーも近い。こういった点が決め手になって「マネーフォワードへのグループジョインの方がIPOよりも事業を大きく伸ばせる」という結論になって、M&Aを選択しました。

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金坂:各種DDなども始まる前に、2社の経営陣で飲みに行った時にすごく盛り上がって、これはぜひやろうとなりましたね。赤字の上場会社が、別の赤字会社を30~40億かけて買うという話しだったんですが、僕らがスマートキャンプの「ボクシル」を実際に使っていて、その価値や今後の成長性もわかっていました。

水谷:その飲み会はいつぐらい?

金坂:去年の9月くらいですね。

水谷:M&Aの発表が11月なのでかなりのスピード感ですね。

峰島:金坂さんのスピード感が半端ないんです(笑)
金坂さんがマネーフォワードシンカを始めるという話の流れで、M&Aを考えているという話をしたら「辻さんにつなぐよ」と言われて、その2~3時間後には辻さんから古橋に「興味あります」と連絡があり、その2日後に2人が実際に会って。そのスピード感も含めて、マネーフォワードいいな!ってなりましたね。

水谷:実際に交渉の中でどういう点がポイントになりましたか?

金坂:かつてないくらいスムーズな交渉でしたね。

峰島:交渉らしい交渉はなかったですね。むしろ「どういうことができるかな?」という話が中心でした。
マネーフォワードが「スマートキャンプの要望は可能な限り受け入れます」というスタンスでいてくれたので、僕らも変に肩ひじ張って交渉というよりは、胸襟を開いて話す感じでした。

そういうスタンスの企業は他には無くて、こういう会社(マネーフォワード)に入れば会社が伸びそうだとそこでも確信を得られました。

水谷:興味深い。DDされるというよりは、一緒になった時に何ができるか?という事業構想の話ができるのはめちゃくちゃ大事ですね。グループジョインから半年たってどうですか?峰島さんの役割も変わったと思いますが。

峰島:人事面での交流を意識していましたが、カルチャーが近いせいか、トップ層から働きかけをしなくても、各レイヤーで自主的に交流していますね。エンジニア同士の勉強会、経理業務のシェアなど。

事業という意味だと、M&Aの翌月くらいから一緒の取り組みを始めて、売上がたっていました。
5月にリリースした、『マネーフォワードクラウドStore』のリリースにも古橋も含めてスマキャンメンバーが一緒に入るなど、新規事業の立ち上げも一緒にやっています。

私のケース(『マネーフォワード クラウド会計Plus」の事業責任者)はかなりイレギュラーで、グループ入りするまでは、ここまで兼務でガッツリ入ることは予定していなかったですが、上場準備の経験があってスタンスも理解があってという感じで、求められるスキルの一部もあったことで兼務に。

金坂:個人的には峰島さんは英語が上手いので、いつかは海外IRをやって欲しいんですよね(笑)
上場後にするはずだった海外IRをスマキャンの話も含めてできるっていう。マネフォの事業もやっているからマネフォの事業もできる。すごくいいと思います!(笑)

テーマ③|コロナショック下で、CFO / 経営チームとして実践しているアクションや心構え


◎金坂|メンバーの健康とコストカット。そして環境に左右されず、事業においてやるべきことをやる。

水谷:マネーフォワードシンカは3月以降のプレスリリースを見ていても、打ち手のスピードがすごい。その辺りの話もぜひ。

金坂:まずは、社員の健康第一なので、早い段階からリモートワークを徹底しています。

そして、その分、交通費など抑えられるコストはしっかり抑えるのは大事ですね。売上はどうなるかわからない部分がどうしてもあるので、わかるコストカットの部分から進めています。

一方で、各メンバーが元気に働けているので、事業においてやるべきことはやる。

マネーフォワードシンカでは、GW明けにも「キャリア支援サービス」「ラクスルとの業務提携」「未上場スタートアップ企業の株式売却アドバイザリーサービス」と、3営業日連続リリースを出しました。数ヶ月かけて取り組んでいたプロジェクトもあったのですが、この環境下でもしっかり開始まで持ってくることができました。

特に、「未上場スタートアップ企業の株式売却アドバイザリーサービス」は、日経新聞にも取り上げてもらいました。事業会社やCVCが資本のリサイクルをしたくなっているだろうなと思ったので、これを良い意味でできないかなと思い、あくまでスタートアップの同意があっての、ポジティブな形での株主の入れ替えは、マッチング支援ができるのではないかと思っての取り組みでした。

◎峰島|リスク評価こそCFOの強み。楽観と悲観どちらのシナリオも想定して打ち手を考える。

峰島:こういった環境変化におけるリスク評価は、まさにCFOの強みとしているところでないかと思っています。例えば、売上の精緻な分析をしていなくても、顧客業界を見た時に、どういった顧客に影響が大きそうか、中長期でどれくらい影響がありそうかというのは、経営陣で話をしたりしています。

コストの見直しに関しては、もちろん行っています。

一方で、7月以降の情勢は誰にもわからない。楽観と悲観、どちらのシナリオになっても事業を継続できる状態にすることを意識しています。

例えばオフィス。急に解約に動くのではなく、来年人が増えたら入れるように交渉しておくのも大事。減額交渉しながら増床の交渉もするなど、どんな打ち手も打てるように意識しています。

◎金谷|社員へのメッセージと、アフターコロナにおける価値提供の追及。非常事態への対応は聖域なくドラスティックに。

金谷:建設業界は不況に強い産業なので、当初はそこまで影響はないかもしれないと思っていました。しかし、実際はゼネコンの現場が止まっていたり、建設業界が長い我妻にとっても初めての状況が続いています。

我々のクライアントでありユーザーの、職人さん、工務店、工事会社の社長へのマインドへのインパクトも大きいと感じています。

助太刀は、リモートワークに対して、もともとは懐疑的なところがありましたが、我妻の中でマインドを切り換えたタイミングがあったのか、直近でリモートワーク実施、コスト緊縮などをドラスティック行いました。

そして、社員に対しては明確に「雇用は守る」「会社は大丈夫」というメッセージを伝えました。

アフターコロナで、助太刀が世の中にどう価値を出してけるだろうというのは、かなり話をしています。

CFOとして注意していることは、2つ。

1つ目は、コスト緊縮。
コロナだからできることもあると思っていて、広告も積極的に費用を使っていましたが、足元だとゼロ。平常時ではできなかった判断ですが、今後復活させていくときも、これまで以上に精緻に効果検証をすると思いますし、資金繰りの観点で、結果的にポジティブになると良いと思っています。

2つ目は、キャッシュの確保。
エクイティ、デットどちらでも、今だから話せるトークもあると思います。アフターコロナでの価値提供についてはもちろん「今入れないともったいないですよ」というようなニュアンスも伝えるようにしています。

水谷:従業員向けのメッセージはすごく大事だと思いますし、助太刀は初動がはやかったですね。3月の早い段階から、事業計画の見直しなど動いていた。なぜこんなに早く動けたんですか?

金谷:我妻を上げることばかり言いたくないんですが(笑)

我妻は、もともと建設業の電気工事会社の社長を10年やっていて、立ち上げ後すぐリーマンショック、その後東日本震災も経験しています。経営者としてのリスク嗅覚がものすごくあって、会社にとって本当に大事なもの以外は聖域なく切る、そういったドラスティックさは、我妻の力によるとところが大きいと思います。

◎広瀬|ある制度は全部使う姿勢。プロダクト開発の方向性変更も柔軟かつスピーディーに行う。

広瀬:3月の初めから基本全員リモートワーク。ロードマップの変更、資金繰り見直しなども実施しています。

4月から次の資金調達ラウンドに向けて、動こうとしていたというタイミングでもあったので、経営陣全員でキャッシュの重要性が共通認識できており、対策に向けてすぐ動けました。コロナ対策融資もすでに決まりましたし、社会保険の後払い制度などあるものは全部使うという姿勢でいます。

プロダクトがオフィスで使われるものもあるので、利用状況の傾向を全体MTGで見たりするようになっています。

水谷:もともとリモートワークにも将来的に対応できるといいねという感じだった中、かなり開発スケジュールを変えて、前倒しに振り切られましたね。その意思決定はどのタイミングで?

広瀬:緊急事態宣言が出る前の段階ですね。最初は駅中ブース、カフェでの勤務にフォーカスをあてていましたが、それもここ数ヶ月はこないだろう、代わりにリモートワークにフォーカスをあてようなど柔軟に変更しました。

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登壇者の皆さん、貴重なお話をありがとうございました!

4名のCFOが共通していらっしゃるのは

ファイナンスなど高い専門知識、経験を持ちながらも、会社のフェーズ毎に求められる役割に合わせて、自らも手動かし組織と事業を牽引できること

ではないでしょうか。

言うは易し行うは難し、またそういったCFOをはじめとしたCxO候補の採用はさらに難しい課題です。

マネーフォワードシンカでは、そういった悩みを抱えるスタートアップ企業への、フィナンシャル・アドバイザリーや、CxO候補などの採用支援も行っています。

本レポートでご興味を持っていただけた方は、是非お気軽にお問い合わせください。

文・構成/苞山美香

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