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展覧会ちょい批評②アルフォンス・ミュシャ展

『アール・ヌーヴォーの華 アルフォンス・ミュシャ展 〜ミュシャとアール・ヌーヴォーの巨匠たち〜』
[会場]  小田急百貨店新宿店11階催物場
[会期]〜1月10日(日・祝)

会期ギリギリに滑り込みでミュシャ展に行ってきました。今までに2度ミュシャ展をみてきましたが(2017年国立新美術館のものと、2020年Bunkamuraでのもの)、初めてみた作品も多くありました。展覧会の内容とそれらから派生する疑問をつらつらと書きました。

~優美で繊細な線の魔術~
アール・ヌーヴォーの代表的画家として絶大な人気を誇るアルフォンス・ミュシャ(1860~1939年)。
総数500点を超えるミュシャの作品に、同時代のアール・ヌーヴォーの巨匠たちの作品約50点を加えた華やかな展覧会です。

展覧会ホームページより抜粋

美術館と展示スペースの違い

普段展示スペースなるものに訪れないため、ある種新鮮さのある会場だった。美術館を愛する私にとってはやはり少し物足りなさを感じた。作品と作品の距離が近いこと、照明が黄色い、展示位置が少々低い、騒がしい、厳かな雰囲気がないというような点で不足感があったように思う。もちろん、作品展示に特化した建物である美術館に比べて見劣りするというのは至極真っ当なものである。

ただ、もちろん展示スペースのメリットも見受けられた。まず、何より駅から近く、圧倒的に便利である。また、時にデメリットにもなりうるが、美術館の敷居を下げてくれる。歴史的変遷のせいか、美術館は特に若者から敷居の高い文化のように捉えられ、興味をもたれにくいように感じる。買い物ついでに見てみるか、と試してくれる来場者がいるだけで、だいぶ違うだろう。
国はあまり美術館に予算を割いてくれないため、来場者の数を増やす必要がある。費用が足りず開館できない美術館が多くあると、いつか新聞で読んだ。美術に興味をもってもらうための広い間口として有効である。


作品の撮影の意義

本展覧会は全ての作品が撮影可能で、私も気に入った作品を2枚撮らせてもらった。他にも大勢が写真を撮っていた。最近になってからだと思うが、撮影可能な展覧会が増えた。SNSによる拡散という広告は大きな力をもっているということだろう。
帰り道に母が「どうして写真を撮るんだろう?」と言ったことから私は考え込んだ。作品を写真に収めることの意味はなんだろうか?価値はあるのだろうか?
何よりリアルに価値があると考える私は、コロナ禍で多くの美術館がオンライン上のコレクション閲覧を可能にした流れがあったにもかかわらず、美術館に行かずともそれらのコレクションを見ることもしなかった。そういう人は多いだろう。撮影のもつ意味を改めて考えるべきなのだ。
パシャパシャ音がすると誰かと作品の集中の糸を切ってしまうように思う。自分にとってだけでなく、その空間を一緒につくり出す他者にとっても考え、ルールを超えた節度や品格を大事にしたいと感じる。一方で、このような考えは時代遅れなのかもしれない。


ミュシャと日本人

ミュシャの素晴らしさがどこにあるのか学問としての詳しさはないが、他と比べて圧倒的な美しさを感じることはできる。縁取りのハッキリした線たちで描く曲線美は、写実主義とマンガの間のようでやけに心地よい。細部まで描き込まれた花々は華やかで見つめていたくなる。何より彼の色彩感覚に脱帽する。日本人がミュシャを好きな理由はこの色使いにあるんじゃないかと思わされる。画面の統一感と華やかさを両立しながら、淡い色たちとそのグラデーションが本当に美しい。
本の挿絵だけでなく、パリ万博のポスターからたばこ会社のポスター、紙幣まで幅広く使われるこの絵柄たちの上品さと賑やかさを両立する感覚。これら全てを含む絵は彼唯一のものなんじゃないかと思わされる。
現代でも書きおろしの絵画を使うような広告を見たい。


作品ピックアップ

1918-1928 The 10th Anniversary

今回のミュシャ展で撮った唯一のミュシャ作品はこれだった。他の有名な絵たちは以前観たことがあったという理由もあるが、彼のアイデンティティに深く根付くナショナリズムを感じ、なんだか嬉しくなったのだ。チェコ独立10周年を記念した絵であり、スラヴの民族衣装を着た少女が真ん中に描かれているらしい。多様な色彩を使っているにもかかわらずこの一体感や美しさはもちろん、私が驚いたのは少女の目を絶対に見てしまうことだった。写真ではわからないが、私は彼女の目に吸い込まれるほど惹きつけられ、その強さと美しさ、芯が通った瞳、確固たる意志が私を貫いたようだった。
ミュシャという人間が大事にしていたことがわかったようで、初めて人間味を感じ、私はそんな彼を含めて好きになってしまったのだ。


最後に

結局会期中に書ききることができず残念でなりません。何より作品数が多く、私は体力がないので、全てを真剣に見たらすごく疲れてしまうと思い、比較的さらっと鑑賞しました。実際の挿絵やポスターなどの広告をみて、
ポスターにこんなにも合う作者がいるのかと感動させられました。
長々としてしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。是非、また。

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