2019年読んだ小説のベスト10

タイトルのままです。
2019年中に読んだ小説で特におもしろかった10作品をベスト10にまとめました。
シリーズを何冊か読んでる場合は同じ順位でまとめています。

ライトノベルはこっちで別にまとめてあります。

本当は2019年中にやりたかったんですが、年末立て込んでしまったので明けてからのまとめになりました。

では、どうぞ。


第10位

辻村深月「スロウハイツの神様」

https://www.amazon.co.jp/dp/406276556X/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_8xxdEb9HM9S4W

https://www.amazon.co.jp/dp/4062765578/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_myxdEbQ5NMZYW

作家やクリエイターの卵が集まるスロウハイツ。
そこに住まう面々の停滞していた時間が、それぞれのキッカケで動き出すさまは読んでいて感慨深いものがありました。
特に、上巻下巻に渡って散りばめられたパズルのピースが、クライマックスで一気に一つの物語として再構成されていくのは読んでいて手が止まらなかったです。
すべてが明らかになった上で振り返ると「そういうことか!」と思わされるくだりもあり、目頭が熱くなりました。
物語としてのおもしろさもあり、クリエイターを志す彼ら彼女らの想いに心揺さぶられる場面もあり、良書でした。


第9位

天沢夏月「サマー・ランサー」

https://www.amazon.co.jp/dp/4048916548/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_IwxdEb1V60XWQ

剣道の師範である祖父の死を機に竹刀を握れなくなった主人公が、入学した高校で出会った「槍道」に魅入られるお話。
槍道自体は架空のスポーツなのだけれど、作り込みがしっかりしているため違和感なく読めました。
作品の中に一本貫くように通っているのが、青春の輝かしさ。
剣道の中では腐っていた天智が、掛け替えのない仲間を得たことで槍道にのめり込んでいく姿は読んでいてかなり心を打たれるものがありました。
この物語は槍道に出会った天智の姿を描いたものだけれど、槍道部のメンバーも個性的で、彼らを軸にした別の物語も読んでみたい。
自分がもともと剣道をやっていたせいか作品の設定が飲み込みやすく、かなり好きな作品でした。
キラキラした青春を堪能できる、良作です。
キャラクターとしては、本音を見せずにしたたかな振る舞いをしつつも根は優しい設楽先輩が良かったです。


第8位

宮澤伊織「裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル」
宮澤伊織「裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト」
宮澤伊織「裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ」

https://www.amazon.co.jp/dp/4150312648/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_FtxdEbXYFZ00F

現実世界とは異なる、様々な怪異の潜む“裏世界”に立ち入ることとなった女子たちの物語。
かなりおもしろかった。
作中で主人公たちに襲いかかる“恐怖”がめちゃくちゃ想像しやすく描かれていて、読んでいて何度も背筋がゾッとする思いだった。
それでもホラー展開だけでなく女子ふたりの互いを思い合う気持ちを描いていたりなど、読み応えがあった。
実話怪談・ネットロアを下敷きに書かれた物語は、ほんのりと知っている怪談が登場することも。
ホラーだけどコミカルさもあって、読み物としての完成度がめちゃくちゃ高くて良かった。

https://www.amazon.co.jp/dp/4150313016/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_GuxdEb0GD6ECP

裏世界と呼ばれる、日常からはみ出たオカルト的な事象ばかり発生する世界を探検するお話。
前巻からストーリーもそのまま繋がっている造りのようで、いきなり収録作品の1話目が前巻であった「きさらぎ駅」のエピソードの解決編。
沖縄と……それと裏世界のビーチで浮かれて遊びまくるお話もあったけれど、楽しげにはしゃぐ大学生女二人組はかわいすぎるよなあ……。
新キャラ? として武闘派の後輩も登場したけれど、空魚のリアクションを見るに、メインキャラクターとしては鳥子と空魚の共犯者ふたりで突っ走るでしょうねこれは……。

https://www.amazon.co.jp/dp/4150313512/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_xvxdEbVT303E9

実話怪談やネットロアをモチーフにした“裏世界”探検小説第3巻。
ストーリーが進んでかなりきな臭いことになってきた。
鳥子の追い求める冴月の存在感がいよいよ増してきて、それに連動するように現実世界での裏世界の影響からの被害者が増えてくる。
カラテカ……茜理関連のエピソードはまだコミカルさがあるけれど、それにしても恐ろしいストーリーであることには変わりない。
女子大学ふたりの裏世界探検、みたいなかわいらしい呼び込みで、その実かなりエグいストーリーが進んでいく。
怖さはあるけれどそれ以上に話の面白さに引き込まれる。


第7位

山白朝子「私のサイクロプス」

https://www.amazon.co.jp/dp/404107763X/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_2rxdEbTB12Y9E

迷子癖のある旅本作家・和泉蠟庵が、旅の途中に迷い込んでしまった不気味な物語を収録する短編集。
前作「エムブリヲ奇譚」での相棒の耳彦に加えて、今回からは版元の娘の輪も加わり、より楽しく読めました。
楽しく読めた、とはいうものの基本はホラー小説で、おどろおどろしく背筋の凍るような話や後味の悪い話が多いのですが。
それでも読んでいて不気味やさ不快感だけでなくおもしろいと思わせてくるのだから見事なものです。
「ハユタラスの翡翠」は全編通してコミカルで、怖いけど楽しい物語でした。耳彦には悪いですが…。
「死の山」も好みでした。


第6位

西尾維新「掟上今日子の推薦文」
西尾維新「掟上今日子の挑戦状」

https://www.amazon.co.jp/dp/4065143128/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_cqxdEbW5J0M2Q

眠れば全てを忘れる、最速の探偵・掟上今日子シリーズ第二弾。
語り部兼依頼者の変わった今回は芸術がテーマ。
飄々としていながらもとっさの判断は機敏で、掴みどころの無い今日子さんがとにかく可愛い。
ミステリとしての仕掛けがあっと驚くタイプのストーリーではないのですが、軽妙な会話と魅力的な今日子さんのキャラクターで楽しく読めました。

https://www.amazon.co.jp/dp/4065165342/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_OqxdEbVR1WJ9C

眠ると記憶がリセットされる忘却探偵が、その機密保持能力の高さから警察に協力を仰がれて臨む難事件3本。
作品テーマも「アリバイ」「密室」「ダイイングメッセージ」と、ミステリの定番の3つを扱ったエピソードたち。
難事件を目の前にしながらも飄々とした語りで、総当たりで謎に挑む今日子さんには不思議な探偵としての魅力がある。


第5位

貴志祐介「クリムゾンの迷宮」

https://www.amazon.co.jp/dp/404197903X/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_NoxdEbTYSTNYM

とてもおもしろかったです。
400ページ近いホラー小説で、「重いのでは……?」と思いながら読み始めたものの、思ったよりも読みやすい文章ですごく良かった。
ホラー小説というか、規模の大きなデスゲームといった調子で、人間の恐ろしさをはっきりと浮き彫りにするように描いていたのが印象的だった。
物語展開もおもしろく、次はどうなるのか、このピンチは脱せるのだろうか……と息づく間もなくハラハラさせられる。
読みながら一緒に緊張してしまうような感覚だった。
貴志祐介さん初めて読んだけど、良いな……。


第4位

知念実希人「魔弾の射手 天久鷹央の事件カルテ」

https://www.amazon.co.jp/dp/4101801622/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_InxdEbZYWNJRA

いや、めちゃくちゃおもしろかったですね……。
医療ミステリとしてシリーズも長いので安定して楽しめる信頼感はありましたが、その期待にしっかり応えてくれる作品でした。
廃病院で相次ぐ転落死、という事件の真相はもとより、この事件を解決するために統括診断部が動き出すきっかけにもなった由梨の存在がとても大きかったです。
医療トリックなだけに謎解きパートでの読後感が他のミステリと全く違った趣があるのも楽しい。
統括診断部メンバーに、事実上完全に鴻ノ池も加わっているような状態なのがシリーズファンとしては嬉しいところですね。


第3位

乙一,中田永一,山白朝子,越前魔太郎,安達寛高
「メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション」

https://www.amazon.co.jp/dp/4022649127/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_YlxdEbMMJT54G

乙一、中田永一、山白朝子、越前魔太郎、による“ひとり”アンソロジー。
ミステリ、青春、ホラーと作風によって別名義を使い分ける乙一さんのいろんな味が、この一冊ですべて楽しめる。
乙一さんの「山羊座の友人」は漫画版だけ先に読んでいてすごく好きだったのですが、改めて原作を読んでさらに好きになりました。
ミステリとしての仕掛けの驚きはもちろんのこと、ラストの一文があまりにも切なくて……。
山白朝子さんの「トランシーバー」は、ホラーテイストながら心温まるお話でお気に入りです。
途中はハラハラしながら読んでいました。


第2位

村上春樹「1Q84 BOOK1」
村上春樹「1Q84 BOOK2」
村上春樹「1Q84 BOOK3」

https://www.amazon.co.jp/dp/B00871PYUK/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_EjxdEb1JYX581

これまで読んでた村上春樹さんの作品はどれもあまりピンと来て無かったんですが、これはおもしろかったです。
月の2つある世界「1Q84年」に紛れ込んでしまった青豆と天吾というふたりの男女が、ともに大きなトラブルに巻き込まれ、孤独を生き、そして長い時間をかけて巡り会う。
作中時間で9ヶ月、3巻(文庫は6巻)に渡る長い長い物語なんですが主軸としてはふたりの巡り会いそれ一つに収束します。
それぞれの行動の結果があちこちに影響を与え、すれ違い、そしてつながっていく様はひとつの物語として計算され尽くしていてかなり満足度が高かったです。


第1位

米澤穂信「いまさら翼といわれても」

https://www.amazon.co.jp/dp/4041081645/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_bixdEbBX5VP7Q

シリーズ最新刊。
古典部のメンバー4人の過去や未来へと焦点を当てた短編集。
表題作「いまさら翼といわれても」は、読み終えると秀逸なタイトルだなと。
さらっと短編で描かれているけれど、登場人物たちのみならず、古典部シリーズとしての行く末を大きく左右する大事なエピソードだった。
「わたしたちの伝説の一冊」は摩耶花を取り巻く漫研のいざこざと、彼女の未来について。
泥をかぶっても自分の夢見る未来へ進む摩耶花がかっこよかった。
ミステリとして好きなのは「鏡には映らない」。
奉太郎らしくないが、そのらしくなさが彼っぽくてとても良い。


以上です。偏りがすごいですが、気になる作品があれば読んでみていただけると嬉しいです。