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好きな作家について語る。


いろんな本を読んでいると、とてもお気に入り!とか、この人のここが好き!という作家さんがある程度決まってくる。


私が好きになる作家さんは、結構大きく個性がある人のような気がします。
ああ、これはこの人の文章だ…ってわかる人。
ストーリーが面白くても、特徴的な文章がないと好きになれない気がしている。今日は私のお気に入りをご紹介しましょう~。



あさのあつこさん


物心ついて、一番最初に大好きになった作家さん。
児童書から大人の本に至るまで、結構読みまくりました。

ただ、あさのさんの作品は、「スポーツ系」と「SF・ホラー系」があって。
断然、後者推しです。
代表作である野球を題材にした「バッテリー」は、とりあえず読もうとしてみたものの、挫折してそのまま…。

やっぱり、興味を持てるか持てないかのフィールドってあるんだなぁと思います。私はあまり、スポーツ小説には向かないみたいだ。


あさのさんの文章で一番すきなところは、

「会話」

本当に人の会話文がうまいんです。
いろんな本を読んでいると、たまに、「今時の高校生は、こんな話し方しないわ…」って、一気に作り話を聞かされている気分になる小説とか、不自然さが引っかかる時があるけれど。


あさのさんが書く会話文には、一切そういうところがない。
かといって、リアルかと言うと、またちょっと違うけど。
みずみずしくて、すがすがしくて、テンポが良くて。


そう、テンポがとても良い。
読んでて気持ちのいい会話が出てくる。
そして、文章がいい意味で軽くて、他の作家さんと比べるとすらすら進む。

それから、日本の古典が好きなんだろうなとすごく思う。
和語の使い方も素敵です。



村上春樹さん

今年に入ってよく読むようになりました。
昔はとっつきがたく、また王道すぎて、あまり読んだことはなかった。
勝手に純文学のイメージを持っていたけど、実際によむと、そうじゃなくて、かなりファンシーな世界感の作品が多いことに最近になって気が付きました。


現実と非現実の境目がよくわからなくなる。
そして、そこに意味があるのか、ないのかがわからない話しが多い。
つまり、自分で考えさせる余剰をふんだんに残した作品が多いんですよね。
起承転結なストーリーありき、が好みの人には、向かない作家さんだと思います。解釈が難しすぎて、いっぺん通りの考えを導きだすこともできず。
国語の教科書とかには全体的に載せにくそう…。

ご本人も、「わかってもらえなくて結構。自分の書きたいものを書きます」という風に思っているような気がする…。


でも、読んでてすごく救われるんですよね、村上春樹作品。

小説を書きたいな~と思っていると、何の話かは分からないけど、書きたい場面だけがすっと、セリフだけとか、情景だけとか、浮かんでくることがあるんですよね。
でも、浮かんでくる本人にも、彼らや場所がいったい何なのか、わからないこと多々あり。
謎解きの内容はないけど、謎解きしてる部分は書いてみたい、みたいな…。

そういう好きな書いてみたいシーンから、外枠を固めていくんだろけど、その外枠を固めていくのが、どれだけ難しいか。
アイデアがあったとしても、どれだけつじつまを合わせて、どれだけリアリティを出していくか、というところで、挫折するんですよ。
でも、村上春樹さんの短編とか、読んでいるとそういう外枠を読者に任せて、自分で好きに書いていることに気が付くんです。

あ、これでいいの?

別に完成させなくていいの?
すきなところだけ書いちゃうのってありなの?

って部分で創作的観点からも、すごく救われる。
なんかもっと好き勝手やっちゃって、いいんだなーって思う。


ただ、なにげないうえに、落ちのない話であっても、読んでいておもしろいとおもわせるのは、天才の筆致ゆえなのは否めない。
表現が独特だからこそ、成り立つことですね。


そして、村上春樹さんの文章でおもしろいところは、「思考の流れ」の書き方がスマートなところかな。
これは、文章という媒体だからこそ、うまく表現できることな気がする。
映像作品で人物の思考の流れを表現するのは難しいですよね。
そのフィールドの特性を存分に使い切っている感じがします。


考え込んで、連鎖的に思考が脈絡もなく移り変わっていくところが、本当にリアル。

そして、考えごとの埋没感の先に、急に「動作」で不思議な出来事が顔を出して、びっくりさせられる、みたいな構成のうまさ。
もうほんと、素晴らしいとしか言えないです。


そして、めちゃめちゃおしゃれ。
日本が舞台なのに、海外の雰囲気出せるところ。
尊敬するとともに、好きすぎます。
一旦、英語から作って日本語に書き直すともきいたことあるけど。

スペックが違いすぎるね。



宮部みゆきさん

最近めっきり読まないけれど、読んだ作品数はけっこう多い作家さん。
模倣犯とか、ブレイブストーリーとか、超大作かつ、分厚い文庫本作品が多いイメージ。ゆえに、読まずぎらいも多いと聞いたこともある。
私は結構好きです。

宮部みゆきさんの、すごーい!と思えるところは、設定の緻密さだと思う。
とにかく設定が細かい。リアル。
村上春樹とは逆で、物語の外郭がこれでもかというくらいにくっきり。
事件があった場所の地域的特徴とか、その人物の生い立ちとか、歴史とか、すごく細かく編み込まれている。

それゆえに、物語が本格的に動きだすまでに、本筋には関係のないところを結構読まないといけない…という難点はあるけれど。
書こうと思っても、創造の範疇でできることではないというか、かなりの労力、下調べがあってこそだと思うので、本当にプロだなぁ…とひれ伏してしまうばかりです。
入り込みにくいところもあるけど、読みだすと止まらくなるのも、宮部みゆきさん。長文だけど、おもしろいのでページがばしばしはける。
江戸時代ものが、人情のあたたかさにあふれていて最高です。



太宰 治さん

斜陽と人間失格と、学生の時の教科書で走れメロスしか読んだことないですが、さすが文豪、面白いです。

一番びっくりしたのは、一文がめちゃめちゃ長いこと
いくつ「、」が続くんだよ~ってくらい長い。
一文は短く!わかりやすく!というのは、常日頃から気を付けてはいるけれど、その概念をぶち壊してきました。
だって、こんなにだらだら、くどくど書いているのに、面白いんだもん。
なんだこれ。

解説文をよんだら、出身の青森県の津軽弁?津軽節?の影響があるとのことで、やっぱり、これが太宰の特徴なのだそうです。

読んでいても、「僕はこうだと思っていたんです。でも、本当のところは違って、こうだったんです」みたいな、あえての無駄が入り込んだ文章が多い。その違った思考の部分、書く必要あるのか?と思うことしばしば。
そして、くどくどくどくど書いているけど、要は、○○ってことじゃん、1,2行で済むじゃん!(笑)ってことも多い。
なのに、それがとてもおもしろい。
突っ込みをいれたり、ずっこけながらよむのが面白い。
人間失格がこんなに笑える本だなんて、思っていなかったです。


完結に書くことがすべてではないんだな…と教えられた作家さんでした。



小川 糸さん

小川糸さんの作品には、とてもかわいらしくて、ふわふわした雰囲気が流れている。でも、設定や描写はとても細かいです。
宮部みゆきさんの設定の細かさとは違って、登場してくる物(文房具)や、食べものといった小さいディティール?がすごく細かく丁寧に、魅力的に書かれている印象です。

特に食べ物の描写、料理の過程が素敵で、もう、読んでいると、お腹が空いてくるので困っちゃう。おいしそう。
どうして、文章でそんなにおいしそうなものが作れるのか謎なんです…。
おそらく、ご本人が本当に食べ物が好きなんだろうな…と考えています。
食べ物をおいしそうにかけることも、習得したい技の一つですね。


季節感もあって、毎日の何気ない日本の日常を、丁寧に生きている感じが好きです。


あと、登場人物が独特。

全員に姓名をつけなくちゃって思っていたけど、「ツバキ文具店」という本を読んだら、全員本名がわからないあだ名で書かれていて、わざと設定を濁しているところが面白かったです。
出し惜しみというのか、気になっちゃうミステリアスさのバランスが絶妙。

あとふとした瞬間の思考の動きの、伏線の貼り方がうまい。
さっき登場した出来事を、後になってふと思い出す・・・・みたいな描写がリアル。地名とか、世界感の緻密さ以外にも、人間性の部分というか、その人の心の動きに真実味を出すことってできるんだなと、思いました。



北村薫さん

Noteの登場頻度高め。
日本の作家さんで一番好きな文体の方です。
いままでも、いろいろ語ってきたので軽く言うと、とてもお上品。
でも、ユーモアもある。
設定も緻密。宮部みゆきさんの仲間ですね。

語尾が「いた」ではなく、「いる」で終わったり、「こちら」という丁寧語がよく使われる。とてもおしゃれなんですよね~。

そして、感情について、直接的なありのままの表現をしない。
動作や、外郭を描いて理解させる。

ただただ情景を描くことで、読者が直感的に登場人物の思考にたどり着くような仕掛けが良く見られます。
言葉はないけど、情景からそこにいる人が考えていることはわかる…その空気感で伝わってくることに、読んでいる側はしびれる、というか。

うまく言えないけど、非常に「映画」的なことを文章でやっているんですよね。
村上春樹さんのところで、文章は思考の流れを表すのには適している、と書いたけれど、映像の技巧を紙面に持ち込むって、本当にすごいことだと思う。

かっこよすぎるな~。


また、読んでいると歴史的文学作品への愛を感じることが多いです。
まあ、多くの作家さんはそうだと思うけど、相当な量の本を読んでいると思います。
早稲田大学でも講義してたり、その講義内容も活字になってます。

作品を通して、そういう知らなかった本とか、文化をを教えてくれるのもまた好きなところです。世界が広がる~。



性別の判断が付かないお名前なので、文章的には女性かなと、勝手に想像していたら、男性だと聞いてちょっとびっくり。
書く文章にも、女性的、男性的っていうのはあるのかもしれない。

私自身はどっちかっていうと…



どっちかな???(笑)



江戸川乱歩さん・森絵都さん・乙一さん

この三人は情景描写が素晴らしい~。
一番苦手だ、情景描写。
夕日が落ちるときは、「落ちた」で済ませちゃう人間です。
表現する言葉を持っていない。

そう言う人からすると、この3人は神様級。

乙一さんは、一冊しか読んだことがなくて、作風的にはコミック的なのであまり好きではない。
でも一回しか読んでいないのに、がっちり頭にそのシーンが食いついてきたので、やっぱりすごいと思っています。
ちょっと非現実的な、アニメチックな感じです。


森絵都さんの表現は、逆立ちしてもかけない。
言葉がかっこよくてきれい。
最近、全然読めてない&手元にないので、再読したいのがいっぱいありますね。


江戸川乱歩さんは、表現的に綺麗とか面白いのはもちろんなんだけど、多分根本的には、「読者にわかりやすくご説明しましょう」というスタンスで書いているんだろうと思う。でも、それが適確すぎて、わかりやすいかつコミカルで感心しちゃう。

映像を言葉にするのがうまい…。



以上。私の好きな作家さんのお話でした~。
いろんな本を読むと、いろんな表現があってすごく楽しい気分になると共に、本当に創作って好きにやっていいんだなと思わされます。

売れる本の書き方なんて、絶対にない。
小説はこうあるべき、という約束も絶対にない。
表現の仕方は無限大。

自分の得意分野とか、特性とかに合わせて、好きなところを集めながら、楽しんで作ってゆくことが大事だなと書いていて思いました。



お付き合いいただき、ありがとうございました~。










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