見出し画像

【再掲】マイナポイントから未来を予測する


(この記事は、2020/02/21執筆記事の再掲です)


消費増税に伴う景気対策の第2弾として、今年の9月から、マイナポイント還元事業が予定されているという。

マイナポイントとは、マイナンバーカード経由でキャッシュレス決済を行うと、政府からお金がもらえるというもの。
還元率は25%で、最大5000円まで還元される。実施期間は、2020年9月~2021年3月末の予定。

利用の流れとしては、「マイナンバーカードの取得→マイキーIDの設定→電子マネーやスマホ決済との紐づけ→マイナンバーカード経由でチャージ」と、非常にややこしい。

個人的には、たかが5000円のために乗り越えなければならないハードルが多すぎて、まったく利用する気にならない。
が、このマイナポイント事業を長期的な社会改良策として眺めると、なかなか興味深い。

ちなみに景気対策の第1弾は、キャッシュレス決済ポイント還元であった(2019年10月1日~2020年6月30日)。
こちらの政策は、たんなる景気対策にとどまらず、「キャッシュレス決済を普及させる」という大きな政策と抱き合わせで行われたといえる。
政策とは、ひとつの目的のために実施されることはなく、2つ以上の課題に応えるための妥協案として実施される。

では、今回のマイナポイントは、なんのために行われるのだろうか。
私見では、景気対策、キャッシュレス決済の普及はもちろんだが、それに加えて、政府による個人の金融資産の把握が挙げられる。

ざっくりいえば、政府がマイナンバーカードを通じて個人の金融資産(預金額など)を把握し、いずれ預金税を導入するための布石となるのではないか、私はそう予測している。
たしかに、マイナンバーカードとキャッシュレス決済を紐づけることによって政府が把握できるのは、消費額のみである。
が、サラリーマンであれば、給与所得はすでに政府が把握しているので、所得から消費を差し引くと、およその資産額を割り出すことができる。

ちなみに資産額についていえば、近い将来(今後5年以内か?)、金融機関にマイナンバーを届け出ないと、たぶん口座が使えなくなると思う。
というか金融機関に対しては、すでに利用者のマイナンバー把握が義務づけられているらしいが、たとえば田舎のおじいちゃんが「マイナンバーなんか覚えてないわ。わざわざ電車で半日かけて銀行に口座をつくりに来たのに、帰れっていうんか」という事情もあって、一般の利用者に対しては義務化が猶予されているらしい。
つまり2020年現在は、「金融機関へのマイナンバー届け出を完全に義務化する」という政策目標への移行期間にあるといえる。

このように、金融機関の側から、またキャッシュレス決済の側から、政府は個人の金融資産を漏れなく把握できるようになりつつある。
マイナンバーを通じて、個人の経済活動を政府が把握できるようになる。
素晴らしき管理社会の到来である。

個人的には、そう悪くないと思っている。
それは公正な社会に近づくことだから。

たとえばトマ・ピケティ氏が提唱している富裕税、具体的にいえば、金融資産課税を実施するためには、まず政府が資産額を把握する必要がある。
そのための準備を今の政府は着々と進めているのだと私は思う。



§2020/8/29 付記

・2020年2月現在、マイナンバーカードの普及率は約15%。
とはいえ、カードを発行していないが、自分のマイナンバーを把握している人を含めると、普及率はもっと高いと思われる。

・マイナンバーと預貯金口座との紐づけというアイデアは、1人当り10万円のコロナ給付金によって、にわかに注目されることとなった。コロナ給付金の支給が遅れたことを踏まえて、今後は迅速に対応するため、政府は国民1人につき1口座の登録義務化を検討しているとのこと(2020年6月頃の報道による。詳細は以下リンク先)。

とはいえ、1口座だけではなく全口座を紐づけないと、政府は国民の全資産を把握することはできない。
低所得かつ預金額が少ない人向けの給付金をはじめ、「マイナンバーは弱者のための制度である」というイメージを打ち出しつつ、「1年以内にマイナンバーと紐づけしない場合は口座凍結する」くらいの強硬策でも構わないと個人的には思うけどね…。


あなたのグラスのてっぺんを、私のグラスの足元に。私のグラスのてっぺんを、あなたのグラスの足元に。ちりんと一回、ちりんと二回。天来の響きの妙なるかな! byディケンズ。Amazon.co.jpアソシエイト。