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ギリシャ料理のテイクアウトにおけるパンの威力〜サントリーニとドブロブニクへ新婚旅行日記4〜

※新婚旅行から5年経った記念にアップしてます。2014年6月の旅の記録です。

7. 旅先でどちらかのテンションが下がった場合

このホテルは朝ごはんを選ぶことが出来た。このトラディーショナルグリークブレックファストってのにしてくれ、と伝える。
卵料理の種類、シリアルが選べた。なるほど、いいホテルってのは選択肢が多いってことなのだな。
海の見えるテラス席にテーブルをしつらえ、ボーイさんたちが階段を慣れた様子で降りてくる。他の宿泊客が視界に入らない、外ながらプライベートな空間である。
シリアルやパンのほか、シロップ漬けのブドウが入ったヨーグルトが美味かった。

「チップっていつ渡せばよかったんだろう」
「渡すタイミングいつもわからないよね」

困った。きちんとしたホテルなだけに客側もきちんとしなきゃいけない気がする。どうやって渡そう。テーブルに2ユーロそのまま置いても、あらキラキラ光るパンくずかしらと清掃されてしまうかもしれない。
海外に出るとき折り紙を持ち歩くようにしていて、今回も羽田空港の伊東屋で桜模様の折り紙を買っていた。
折り鶴を作って、その背のところに2ユーロ置いておいた。シャイなんだか、キザなんだか。

チェックアウトして荷物を3時にバスターミナルに持ってきてくれとお願いをし、散策へ。
土産物屋で小学校低学年くらいの女の子が、欲しそうにミニチュアの置物を見ている。

いくら?と英語で聞いた後、店の外にいたお母さんらしき人に「Sette!」と言っている。
イタリア語の7だなー。ギリシャってイタリアからしたら海挟んで反対側だもんな。近いな。
そんなことを思っていたら店員さんが女の子とお母さんにイタリア語で話し始めた。さすが観光地の商人。

さてサントリーニもいよいよ終盤、イアからバスで中心地フィラへ向かう。
バスを降りてから妻の様子がおかしい。ある一点をじっと見つめ、ぼーっとしているような。

「バスに酔ったのかも」

そう言ってふらふらと近くの段差に腰かけた。
まずい。今日の宿の場所も、微妙にちゃんとわかっていない。デフォルメされた地図が手元にある程度。見た感じ、このバスターミナルからまた少し歩くかもしれない。妻の元気のない様子を見て、何故か俺はすごくテンションをあげた。

「大丈夫大丈夫!俺あそこのレンタカー屋で聞いてくるよ。ここで待ってて!」

一本降りてAnna’s Martで曲がれとだいたいの場所を教えてもらい、元気よく先導する。

「ほら、さっき聞いたAnna’s Martだよ!ここでも聞いてくるから!」

と目的地に確実に近付いていることをアピール。
店番をしていたおばさんにホテルの場所を聞き、本当に近いことを知る。

「いやあ、このあたりは観光地っぽくなくて、サントリーニの生活の様子が感じられていいねえ。ほらあの家なんて歩道でバーベキューしているよ。自由だねえ。」

どんどん多弁になる俺。
特に意識していたわけではなかったけど、片方の元気がないときは、つられて静かにならないようにしたほうがいいと思ったのだ。夫婦のテンションは良くも悪くも伝染してしまうのだ。このあたりの写真が無いのが、そのときの俺の必死さが伺える。

ほどなくして着いた宿は、リビングスペースもある広い部屋だった。窓からは畑と海が見えて、超観光地から少し離れて長期滞在するには良さそうなところだった。
リビングスペースにはL字型のソファーが置いてあり、ローテーブルの真ん中にはガラスが入っていて、その下にはマーブル模様の石が飾ってあった。
全体は青みがかった白とうすいグリーンで統一されており、妻はなかなか気に入ったようだった。
俺は単純に、場所がいいのとシャワーがカッコイイので選んだだけだったが。

シャワールームは丸みを帯びた仕切りの中にあり、卵の中に入ってシャワーを浴びるみたいでよかったのだ。

妻は、しばらく横になったら良くなったというので、フィラの町に。俺はもう無意味に張り切らなくて良い。
行く途中でAnna’s Martに寄り、「さきほどはありがとう、無事に着けた」と告げて水とお菓子を買う。二回目なのにぐっと親しくなるような気がするから不思議。旅するとほとんどの人は一度きりしか顔を合わせないので、二回目を作るのは楽しい。

8. カタカナ飯

昨日、テイクアウトしてジャグジーで食べたのが良かったのか、今日もテイクアウトして食べようかという話になった。妻の体調も万全とはいえないので、ゆっくりホテルで食べるのがいいだろう。
フィラの町、バスターミナル近くの「エル グレコ」である。この店は初日のホテルでワインツアーを手配してくれたペルセフォニが「私はレストランでも働いているの」と教えてくれた店である。
ピザ屋だけど、色んな料理があるから。と渡してもらったフライヤーを頼りに行ってみる。

お店は二階建てで、一階は入って右側がショーケースとキッチン、真ん中に通路があって左側に二人掛けのテーブルが3セットだけある。メインの客席は二階のようだ。
ショーケースの中に大皿が並んでいて、たくさんの料理が並んでいる。

イラヴィリアスの受付の人に教えてもらったんだ。ほらホテルの名刺。と言ってみせると、
おーおーおーと小柄で坊主頭、青ワイシャツの男が言う。ドイツのヘヴィメタルバンドの元祖、アクセプトのウド・ダークシュナイダーのような風貌で、いわゆるずんぐりむっくりだ。ペルセフォニはモーニングに来て料理するんだ。グッドシェフだと。
持ち帰り出来る?と聞くともちろんと言うので注文をする。
ずっと食べたかったものを中心に頼んだ。スブラキ、スズカキャ、サガナキ、ツァジキ、グリークサラダ。もうカタカナだらけで何がなんだか。
ギリシャ料理は全体的に濁点が多いので強そうである。カタカナが似合う。かたや日本料理は濁らないので、ひらがなが似合う。おひたし。さしみ。みそしる。
スブラキはギリシャ風串焼き。チキンかポークである。日本の焼き鳥の二倍ぐらいの長さの串に、肉肉しい、まるっとしたチキンが刺さっている。もも肉だろうか。
スズカキャはギリシャ風ミートボールである。注文したところ「ちょっと待ってろ」と青シャツダークシュナイダーはカウンターの中に行き、190cmぐらいある四角い顔したシェフと一言二言交わして戻ってきて、
「今日は売り切れてしまった。ビーフのトマト煮込みがあって、似たような味だがそれにするか」と提案してくれた。素直にうれしい。
「ペルセフォニに言われてきてくれたのなら、サービスだ」とグラスワインをテーブルに置いてくれた。旅とは、人との出会いであるなあ。場所もメシも思い出すけど、どんな人と会って、どんな話をしたかって残るよなあ。
サガナキはチーズのフライである。四角いチーズを揚げて半分に切っているので見た目ははんぺん揚げ。
ツァジキはこの旅で大好きになってしまったヨーグルトのソースである。肉につけて食べると本当に美味い。
ちょっと多いかなと思ったが、すんごく多かった。弁当箱のような容器を5個も6個も持ってホテルへ戻る。

「ギリシャ料理はどの店にでもあると思うんだけどね、教えてもらったお店で『誰々から聞いたから』って行くのは素敵だよね」
「出会いだよね。教えてくれたってのがいいよね。」
「たとえラム肉出されてもね」
「まだ言ってるの」

さすがに食べきれなかった。
メインに全てフライドポテトがついており、パンも何故か4,5個ついていた。どういう基準だ。
あれかなあ、単品でって言えば出来たのかなあ。日本で生姜焼きとロースカツとサラダと厚揚げ豆腐頼んで全部にライス付けられたような感じ。弁当屋のやり過ぎおばちゃんサービスinギリシャ。
このホテルは何故か、ベッドの上に置いてあるバスタオルが白鳥の形に折られていた。

「これすごいね」
「ハネムーンって知ってるのかな。」
「いや、特に伝えてない。しかしこれだけ形を保っていられるってことはさ」
「うん」
「柔軟剤の気配はゼロだよね」
「固いね」

白鳥にしてもらわなくてもいいから、お肌に優しいタオルでどうかお願いしたい。明日の移動に備えて、早く寝ることにした。

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