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Best of 2020 音を辿る思索(1月〜3月)

音を辿る思索(1月〜3月)

この思索では音楽通信で追いつかない音楽のリリースを雑多に思いつくまま1月から3月までの注目の作品を書いていこうと思います。

はじめに

Rhythm Sectionがレーベルとして5周年を迎えるというのでリリースされた「SHOUTS - 5 Years of Rhythm Section INTL」を聴いていて思ったのは、Rhythm Sectionがスタートした2014年には認知されていなかった「アウトサイダー・ハウス」の重要作(Kassem Mosse、Lnrdcroy、Ñaka Ñaka)が今となっては全てSpotifyにて聴く事が出来るという事に驚きサブスクリプションサービスが広く認知されている事を改めて再確認しました。

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フォーマットの変容もそうですが、音楽の変容はそれ以上に膨張しています。この年(2014年)の前後での音楽シーンの変化を見てみると当時はアール・スウェットシャツやダニー・ブラウン、ケンドリック・ラマー(もちろんカニエ・ウエストも)と新気鋭の「ヒップホップ」の勢いが澎湃と起こっている最中でしたが、その裏側でデス・グリップスの「The Money Store」の副作用として表出した実験性を「ホラーコア」の持つ不吉で混濁なと結合させたようなLil Ugly Maneの存在が認識され始めている時でした。「ヒップホップ」以外の音楽シーンにも大きな変容による勢いが様々なジャンルで起きました。

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2010年代からのミクロハウス変容

その一つが「ミクロハウス」を主体とするニコラス・ジャーが2011年にデヴィッド・ハリントンと共に始めたプロジェクトDarksideの最初で最後の傑作アルバム「Psychic」における変化です。2011年のEPではドクター・アリマンタド(Dr. Alimantado)のような「Deejay」に「ミクロハウス」を結合させた音だったのに対して「Psychic」では「ブルース」の断片、空間的な維持の中で鳴る先人の余徳の中で鳴る曖昧で折衷的なグリッサンド、それまで無かったプログレッシブでありながらアンビエント性が強い長尺な楽曲が目立ちました。

1978年作品


2010年のActressの「Splazsh」や、Pantha du Princeの「Black Noise」、そしてFour Tetの「There Is Love in You」の一連のリリースでそれまで皮膜に覆われていた「ミクロハウス」が台頭、その後2013年のJon Hopkins「Immunity」が砥石として表面上に引き出されていった事で上記に挙げた特徴(プログレッシブ性)との合一を果たしたように思います。

こうしたプログレッシブ性が特化された背景には2007年から連綿と続くOneohtrix Point Neverの作品群が「Replica」で実を結び、2013年作品「R Plus Seven」として市民権を得た事が考えられます。また、「ウェイトレス」という音の源流、分岐点としての源泉の一つと捉える事も出来ます。

Darksideが注目されるきっかけになったのは同年にダフト・パンクが「Human After All」から役8年振りにリリースしたアルバム「Random Access Memories」をリミックスした(ここでの名義はDaftside)「Random Access Memories Memories」を公開した事で起きました。ダフト・パンクの特質と「シンセ・ファンク」や「ディスコ」の再興が起こり、そうした動きはニコラス・ジャーが当初から備えていた要素でもありました。

ダフト・パンクの「Random Access Memories」をリミックスした「Random Access Memories Memories」では、ニコラス・ジャー名義のファーストアルバム「Edits LP」にあった「ディスコ」をダフト・パンクに対応させ、オリジナルの「ニュー・ディスコ」の要素をかき消さず自身の特性を残し、メインストリームを拒絶せずに自身の特徴を活かし「ミクロハウス」の要素を結合させる事で異彩を纏う作風に仕上がっています。「Golden Arrow」ではピンク・フロイドの「Wish You Were Here」を彷彿させる冒頭部分に、それまで主流では無かった「アンビエント・ポップ」の動向による変化が著しく表れ、2014年にリリースしたFKAツイッグスの「LP1」への流れ、そしてセカンドアルバムである「Magdalene」で結合する両者の特質やニコラス・ジャーのもう一つのプロジェクトであるAgainst All Logic(A.A.L.)との相互作用が起こりました。

1975年作品

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