「The Whole Earth Catalog」と「ポンプ」初出・Spectator
「The Whole Earth Catalog」と「ポンプ」
スペクテイター〈29号〉 ホール・アース・カタログ〈前篇〉 単行本 – 2013/12/24
400字30枚(12000文字)
橘川幸夫
(1)1970年という時代
1.時代の起承転結
1970年代とは何だったのだろう。かつて「激動の60年代、シラケの70年代」と、何か70年代がつまらない時代のように言われたこともあったが、今となっては、70年代こそが戦後社会の中で特別に重要な位置にあったのではないかと思うことがある。
僕は1960年代から2000年までの、いわゆる戦後社会を起承転結でとらえている。高度成長の60年代は、敗戦による混乱を脱し、新たな社会建設に立ち上がった「起」である。その時代は、猛烈サラリーマンに象徴されるような、男性原理による躍動的な魅力があった。しかし、その動きがあまりに急速だったために、公害問題をはじめさまざまな矛盾が露出したために、「起」を承って、反省する時期が必要になった。それが70年代の「承」の時代である。1970年に富士ゼロックスのCMに「モーレツからビューティフルへ」というコピーが登場し、人々は、物質的な豊かさだけを求める60年代意識の反省を踏まえて、新たな価値観や感性を求めはじめていったのだろう。70年代は、抽象的な社会建設より、身近な生活感覚や、個人のマインドを重視する、母系的な時代だったのではないか。時代に過剰に反応した女性は、ウーマンリブの運動に走っていった。
70年代が過ぎ、時代は再び男性原理が力を取り戻し、バブルの80年代を迎える。80年代とは第二の60年代である。それは戦後社会の「転」であった。60年代の男性原理は、家を支え、社会を築くという父親的なものであったが、80年代のそれは、むしろ少年の冒険心による暴走だった。子どもじみたマネーゲームや、土地収奪ごっこが日本中に吹き荒れ、やがて破綻し、90年代の「結」の時代を迎える。
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