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令和の時代開始の意味

 令和元年おめでとうございます。
 新しい時代がはじまります。
 これは単なる記号の問題ではないと思います。

 僕たちは、時代の大きな流れの中に存在し、過去から未来に向けて、たゆたう存在です。「森を見る力」を援用して、僕たちの現在を少し高い視点で見てみましょう。

 夏目漱石や森鴎外などの明治の文豪の書籍を読むと、現代を生きる僕たちの心性に訴えかける共通の情感や問題意識を感じることが出来ます。しかし、井原西鶴や式亭馬琴などの江戸文学を読んでも、同じ日本人として通じるものはありますが、あまりリアリティを感じることは少ないと思います。

 つまり、僕たちの精神は、明治維新以後に築かれたものの延長線上にあり、明治という時代は、それまでの過去の意識をダイナミックに捨て去り、新しい領域へ日本人を連れていったものだと思います。それは近代化ということです。

 農業を中心とした生活と文化を長く続けた日本人が、西洋の近代文明に触れ、圧力を受け、工業を中心として社会構造に大変革したのです。学生時代に夏目漱石の文学に触れ、日本近代文学の中心的人物が、なんで近代を称賛せず、むしろ、近代化していく日本に傷つき、腹立たしく感じていることが不思議でした。日本の近代文学は、近代の称賛ではなく、新しい価値観に痛めつけられ、鬱屈した精神状態になっていくことを文学にしたものでした。

 それは、今の僕たちにも通じる感覚ではないでしょうか。今、極端な近代化・合理主義化のIT社会が押し寄せています。しかし日本人は、農業コミュニテイで築いた文化を内在化して、日本近代文明を築き上げたことも事実です。

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