リクルートとベネッセ●情報小料理屋「ソースは、オレだ!」2016/05/28
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リクルートとベネッセ●情報小料理屋「ソースは、オレだ!」2016/05/28

 リクルートとベネッセは、インターネットがはじまる以前の、まだ旧来型の業界秩序や大企業による系列秩序が強固な体制を組んでいた時代に、ベンチャースピリットを持って新しい市場を作ってきた。

 リクルートは、それまでの広告会社が大企業の広告部宣伝部の予算を狙って営業活動をしてきたのに対して、人事部予算という新しい攻め口を見つけ、就職情報広告という、新しい広告市場を開拓した。80年代、日本は戦後社会の果実ともいうべき「豊かな時代」を謳歌し、企業は、さらなる発展のために、優秀な人材の必要性を感じていた。バブルの前後から、人事部の人材獲得のための予算が膨張し、その流れの中で、就職情報広告産業が大きく成立した。リクルートは、その後、不動産や中古車や飲食店という、それまで専門広告代理店や地域の小さな広告代理店が扱っていたニッチな領域に、組織力で勝ち抜き、市場を拡張していった。不動産住宅広告に入る時は、読売新聞社が総力をあげて対抗しようとしたが、リクルートの若い営業エネルギーには対抗できなかった。地域の飲食店情報を戦略的に攻めた時は、クーポン券を武器にして、地域のタウン情報誌を駆逐していった。

 ベネッセは、岡山という地方都市でスタートし、通信教育のソリューションを開発し、同じく「豊かな時代」の恩恵として、サラリーマンたちの子どもたちの教育の定番として進研ゼミが発展した。リクルートは、企業に人材を紹介するビジネスで成功し、ベネッセは、企業で働く人たちの子どもたちの教育サービスとして成功したのである。

 80年代、90年代と、この二つの会社は、大きく成長した。僕は、この二つの会社の現場の中心にいた人たちと交流があった。そして、この二つの新世代企業のことを比較してみると、実に面白いことが発見できたので「リクルートとベネッセ」という本を書こうと思っていた。

 この二つの企業は、ビジネスの領域が全く違うので、ライバル意識は薄かったのだが、微妙な対抗意識があった。ベネッセの人から見ると「自分たちは田舎者で、リクルートの人のように大企業相手に、何百万何千万の仕事を営業力だけでとってくることが出来ない」というリクルートに対するコンプレックスのようなものがあった。リクルートの人から見ると「僕らは、頭と口だけで企業からお金とってくることは出来るが、ベネッセのように数百万人の顧客から1000円ずつ継続的に集めるビジネスは出来ない」ということが弱点だと思っていた。

 両方の会社とも、女性社員の多い会社で、元気な女性たちが現場を引っ張っていたところは共通しているが、リクルートは狩猟型のビジネスで、ベネッセは農耕型のビジネスなのである。それぞれ苦手なことをやろうとして失敗もしていた。

 僕が書こうとした本は、リクルートとベネッセの、最もシンボリックな人間が、両方とも退社してしまったので、両社の未来は、違う会社になるな、と思い中断した。

ベネッセ原田氏の無念、プロ経営者が退場

 原田泳幸さんが退社した。

 ベネッセの迷走は、少子化の先行きから株価が下がった時からはじまる。当時の福武社長は、株主総会で株価低迷について、株主から攻撃された。しかし、福武さん自身は大株主なのに、社長として謝るしかない屈辱を味わったのだろう。社長を降りて、SONYグループのアイワの社長だった森本昌義さんを社長にスカウトした。そこで大規模なリストラを行い、自分の仲間たちを経営陣に呼び寄せた。見た目の業績は回復したが、その結果、プロバーたちが次々と退職していった。森本さんが、社内不倫の問題を週刊新潮にスクープされて退職し、今度は、マクドナルドの社長を辞めたばかりの原田泳幸さんが社長になった。森本さんも、原田さんも、いわゆる「プロ経営者」だろう。大規模なリストラと集中と選択で、どのような業界でも、ステレオタイプな経営しかしないのだろう。

 ベネッセの最大の財産は、顧客の子どもたちやお母さんたちと企業との関係性にあった。「赤ペン先生」という通信教育というシステムの中に、アナログな人間性を加えたところに価値があったのだ。単なるシステムだけの通信教育であれば、それはどこがやっても同じになる。

 インターネットという、世界史的、人類史的な変革期を迎え、企業のコアコンピタスそのものが揺さぶられる時代になってきた。リクルートは、「スタディサプリ」を開始して、動画による講義そのものを配信している。いよいよ、子ども教育という、ベネッセの領域に踏み込んでいくのだが、果たして、農耕型のビジネスをどこまで本気で追及するのか注目している。教育は、サービス提供者の強引な思惑だけでは、うまくいかないところがある。

 学習塾業界も、戦後時代さながらの国盗り物語の争奪戦が行われたが、はたしてどうなるのだろうか。代々木ゼミは、はやばやと、受験ビジネスから撤収しつつある。受験という市場構造そのものが、変わりつつあるのではないのか。それは、大学の改革の方向性と合わせて語らなければいけないことなので、別の機会に書こう。

 僕が注目しているのは、レプトンという小学生・中学生向けの英語教室だ。友人の北田くんがはじめたものだが、「聞く」「話す」「読む」「書く」という英語の4つの技能を取得するための、セルフラーニングシステムだ。勉強は、システムを使って子どもたち自身がやるのだが、教室には先生がいて、子どもたちの勉強のインストラクターになる。

 先日、話を聞いたら、すでに1000教室が運営されているということだ。この方法論も秀逸で、全国の学習塾にもちかけて、少子化で生徒が少なくなって余裕のある教室に、ソリューションを提供するというものだ。大学受験が最終目標ではなく、社会に出ても活用できる英語の技能を子どものうちに身につけようとするものだろう。

レプトン

 大きな組織は、大きな市場のビジネスモデルを考えなければならない。そうした覇権競争をしている間に、機動力のあるベンチャー・スピリットは、新しい世界をどんどん切り開いていくのである。

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橘川幸夫

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