物書き宣言(2)
田口ランディがまだ作家デビューする前に話していて、ランディが「文章を書くだけで生きていければ、どれだけ幸福か」と言ったので、僕が「いや、僕は、原稿も書かないで、ただ考えるだけで生きていきたい」と言った。ランディとは、1980年代からの仲間であり、1990年に僕が日経新聞社で出した「一応族の反乱」の出版パーティに、ちゃんと発起人として名前が出てる。当時は、編集プロダクションを経営していて、面倒くさいことが多かったのだろう。その彼女も、文章だけで食べられるようになったが、相変わらず、新しいことにもガンガンと向かっていってる。
ところで、その時の、僕の返しは、実は僕が昔、言われたことのパクリである。それは、1970年代の中頃、世の中で、国民総背番号制度という話題が出てきて、それに多くの人が反発していた。それはマイナンバー制度として実現するのだが、総背番号というと背中に番号はられるようなイメージだが、マイナンバーも、同じシステムだ。
その頃、若き橘川は、自分・自我というものと格闘している時期で、アナログな「自分の名前」が生暖かくいやだった。ミスターロボットや、マシーンヘッドやアクアになりたかった。それで岩谷宏さんと話している時に「僕は名前なんかではなくて、番号で呼ばれたい」と言った。そしたら、岩谷さんは「僕は、番号すら必要ないね」と、あっさり言った。かっこつけて言ったつもりが、もっとかっこいいものがあったのだ。
というような、ことを思い出した。
年取るとは、思い出すことが、たくさんあるということ。
老人は、新しく楽しいことなんか求めてないで、自分の過去を掘り下げた方がよい。
Googleにも探せない、自分だけの思い出があるのだから。
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