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ウルトラシリーズとクトゥルフ神話の関係の一考察

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本記事では、クトゥルフ神話とウルトラシリーズの関連性について、一般的にネットなどで指摘された「AとBの関連性」を、それぞれAとBを裏付けた上で考察するか、自力で「CとDの類似性」に気付いた例を挙げるかします。

注意

小説
『クトゥルーの呼び声』
『ダゴン』
『インスマウスを覆う影』
『永劫より出でて』
『狂気の山脈にて』
『ティンダロスの猟犬』
『潜伏するもの』
(クトゥルフ神話)

『玩具修理者』
『酔歩する男』

『マウンテンピーナッツ』
『ウルトラマンF』
『二重螺旋の悪魔』
『ウルトラマンオーブ 完全超全集』


特撮テレビ番組

『ウルトラQ』
『ウルトラマン』
『ウルトラセブン』
『ウルトラマン80』
『ウルトラマンティガ』
『ウルトラマンダイナ』
『ウルトラマンガイア』
『ウルトラマンネクサス』
『ウルトラマンマックス』
『ウルトラマンR/B(ルーブ)』
『ウルトラマンタイガ』

特撮オリジナルビデオ
『ウルトラマンG(グレート)』

『ウルトラマンガイア ガイアよ再び』


漫画
『NARUTO』


テレビアニメ
『新世紀エヴァンゲリオン』

アニメ映画

『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』


これらの重要な展開を明かします。

はじめに

 ウルトラシリーズでは、人間に対して圧倒的な強さや能力を持つ怪獣や宇宙人が登場しますが、そのモチーフとして、クトゥルフ神話が時折挙げられます。


 まずクトゥルフ神話とは、1920年代から米国の作家のハワード・フィリップス・ラヴクラフトが始めた怪奇小説であり、様々な作家によって世界観や単語を用いられて来ました。
 主にまとめますと、人間以前に存在した邪神や怪物が登場し、復活の機会をうかがうそうです(朱鷺田祐介 2004年:pp.4-9)。
 例を挙げますと、『ダゴン』では怪物らしき存在が人間を恐怖させながら、そこから解放されようと自殺を図ったのさえ止める「窓に!窓に!」というくだりがあります。
 『クトゥルーの呼び声』では、世界を破滅させようとする怪物が登場し、その恐怖で小説が終わります。
 『インスマスを覆う影』では、自分が怪物と人間の間に生まれた家系だと気付いた主人公が、やがて怪物の世界に帰るのを喜ぶという場面があります。

 一方、小説家のダーレスにより、クトゥルフ神話以前の西洋にある四大元素の概念をクトゥルフ神話に持ち込んだり、人間に比較的好意的な神「旧神」を邪神などと戦わせたりする発想もあるそうです(朱鷺田祐介 2004年:pp.160-169)、(ダニエル・ハームズ 2007年:pp.106-108)、(ダニエル・ハームズ 2007年:pp.149)。
 『潜伏するもの』では、オリオン座の方向から「大いなる古のもの」に派遣されて来た光輝く「星の戦士」が飛び回り(ただし、飛ぶために利用する生き物あるいは乗り物があるようです)、怪物を腕(らしきもの)からの光線で倒し、目撃した人間を守っている描写もありました。

 さて、これらは1960年代に始まったウルトラシリーズに影響を与えた可能性が指摘されます。ここでは、M78星雲から来た宇宙人であるウルトラマンやウルトラセブンが地球で人類を守るために怪獣や宇宙人と戦います。
実在するM78星雲は、オリオン座の方向にあります。

具体例

 そこで、ここではウルトラシリーズの怪獣などのうち、クトゥルフ神話の存在に名前や特徴の似たキャラクターを探してみました。
 なお、同じ名前のキャラクターの再登場した例は、特筆すべき新規の要素がない限り省きます。
 また、特筆しない限り、あくまで私が「似ている」と判断した意見の段階であり、本当に参考にされているかの事実の段階ではありません。


a.ウルトラシリーズ
b.クトゥルフ神話
c.共通点や類似点


a.『ウルトラQ』のラゴン
b.『ダゴン』の怪物
c.名前や半魚人のような外見

(朱鷺田祐介 2004年:pp.232-235)

a.『ウルトラセブン』のノンマルト
b.『インスマスを覆う影』の怪物
c.半魚人のような姿と、高度な文明


a.『ウルトラマン80』のギマイラとダロン
b.『ティンダロスの猟犬』のティンダロスの猟犬
c.ギマイラの舌による吸血の概念が、ティンダロスの猟犬の「体の全体像の描写ではなく、舌の説明がある」に通じ、ダロンの名前は「ティンダロス」の組み合わせとも取れます。
また、「ティンダロスの猟犬」は、時間を移動するらしく、宇宙の始まりの「とがった時間」から生まれて宇宙の邪悪を持ち、酵素を持たないそうですが、ギマイラの霧は「宇宙のカオス」であるため、薬品分解出来ないそうです。カオスは本来、ギリシャ神話における宇宙の始まりの混沌を意味します。
ティンダロスの猟犬の物語では、アインシュタインの数式や四次元にも言及され、宇宙の始まりには円錐の頂点のような特異点があるのではないか、という物理学の説もあります。これをカオスと組み合わせる発想もあるかもしれません。ちなみに流体などの複雑な対象を扱う「カオス理論」という数学もあります。
また、ダロンの触手が髭のように描かれているのは、クトゥルフを連想します。

a.『ウルトラマンティガ』のガタノゾーア
b.『永劫より出でて』のガタノトーア(ダニエル・ハームズ 2007年:p.82)
c.『地球はウルトラマンの星』には、ガタノゾーアについて、インタビューによる「クトゥルー神話」との関連の説明があります(切通理作 2000年;pp.44-45)。


ゾイガー
ロイガー(ダニエル・ハームズ 2007年:pp.289-290)


a.『ウルトラマンダイナ』のディゴン
b.『ダゴン』の怪物
c.名前と半魚人のような姿

a.『ウルトラマンガイア』終盤の「魚人」
b.『ダゴン』の怪物
c.人間に恐怖を与えるものの物質的な害を加えず、あえて生かして恐怖のみ搾取しているとも取れるのが似ています。

a.『ウルトラマンガイア ガイアよ再び』のバイアクへー
b.バイアクへー(ビヤーキー)(ダニエル・ハームズ  2007年:p.226)
c.名前や速さに、通じるところがあります。


a.『ウルトラマンネクサス』のクトゥーラ
b.クティーラ(ダニエル・ハームズ  2007年:p.95)
c.名前が似ており、恐怖の概念そのものもクトゥルフ神話と『ネクサス』の繋がりを見て取れます。


a.『ウルトラマンネクサス』の「来訪者」とダークザギ
b.『狂気の山脈にて』の「古のもの」とショゴス
c.固有名詞になっていると言えない種族名と、その高度な文明に生み出された「道具」のような存在と、それに反乱を起こされたこと、反乱を起こした存在が物語の世界観の根幹を成していること(ダークザギがスペースビーストを操る黒幕だったこと、ショゴスが人類を含む地球生命の根源であること)


a.『ウルトラマンマックス』のニーナ
b.『狂気の山脈にて』の「古のもの」
c.人類の起源に関わる知的存在がおり、人類を尊い存在だとみなさないこと。

a.『ウルトラマンオーブ 完全超全集』の「マガタノゾーア」を操る「ヌル・ラ・ホテップ」
b.ナイアルラトホテップ(ダニエル・ハームズ  2007年:p.95)、(朱鷺田祐介 2004年;pp.252-253)

c.名前や知的な行動
a.『ウルトラマンタイガ』の「九頭流村」
b.クトゥルー(クトゥルフの別の読み方)
c.漢字の読み次第では当てはまります。

 また、そもそもダーレスの始めた「人間に好意的な神」、旧神の特徴が、ウルトラマンに似ているという指摘も書籍で見られます(朱鷺田祐介 2004年:pp.52-53)、(朱鷺田祐介 2004年:pp.110-111)、(朱鷺田祐介 2004年:pp.232-235)。


小説など


 また、小林泰三さんは『マウンテンピーナッツ』や『ウルトラマンF』など、ウルトラシリーズの小説版を手がけていますが、デビュー作『玩具修理者』など、クトゥルフ神話を扱った世界観が見て取れます。

 さらに、梅原克文さんの『二重螺旋の悪魔』では、「クトゥルー神話」を劇中劇として扱い、それになぞらえた怪物「GOO(ジー・ダブル・オー)」が生物のDNAからバイオテクノロジーで解放されるのを描いています。
 そこで、人間が神経に秘められた機能で超人になること、その能力を与えた存在に「旧神」から「EGOD(エゴッド)」と名付けたことなども重視されます。
 それらの展開が、『ウルトラマングレート』を思わせます。
 『グレート』、『二重螺旋の悪魔』から、クトゥルフ神話(クトゥルー神話)の繋がりも見えそうです。

 ちなみに、『二重螺旋の悪魔』の超人の跳躍や再生の能力は、『新世紀エヴァンゲリオン』の人造人間エヴァンゲリオンにも似ており、劇中での人類に隠された謎にも通じるところがあります。

 大瀧啓裕氏は、『エヴァ』を考察するに当たり、南極、明晰夢などの関連する要素として「ハワード・フィリップス・ラヴクラフト」を何度か挙げています(大瀧啓裕 2000年:pp.86-88),(大瀧啓裕 2000年:p.405)。グノーシス主義の解説にも、クトゥルフ神話の「アザトース」に似た表現があります(大瀧啓裕 2000年:pp.427-428)。

 クトゥルフ神話、『エヴァ』、『二重螺旋の悪魔』から、ウルトラシリーズへの繋がりも見えそうです。

四大元素など

 なお、『ウルトラマンR/B』では、ウルトラマンロッソとウルトラマンブルが過去作のウルトラマンの能力を四大元素として使うときに、作品世界から離れて考えると、やや強引と取れる箇所がありました。
 爆発の技を用いるウルトラマンタロウの属性が火、地底の鉱石を用いるウルトラマンビクトリーが土なのはうなずけ、高速で飛べるスカイタイプを持つウルトラマンティガが風なのはまだ納得出来ますが、水の系統の技が見当たらないウルトラマンギンガが水なのが首を傾げました。

 クトゥルフ神話でも、四大元素にキャラクターを当てはめるときに、限界があるという指摘も資料で見られます。

 現代のクトゥルフとは離れた作品でも、西洋風ファンタジーで四大元素に当てはまらない能力が多く活躍して、元素の分類の重要性が難しくなる例が見られます。東洋風の忍術を描く『NARUTO』でも、風、火、土、雷、水の五行の要素がありましたが、「医療忍術とか時空間忍術はどうなるのか」という指摘が劇中ありました。

 『ウルトラマンR/B』でも、四大元素にウルトラマンの能力を適合させるのにやや壁があると取れました。
 『R/B』そのものではなく、ウルトラシリーズ全体に、「四大元素に当てはめにくい」というクトゥルフ神話との共通項が見て取れます。


 なお、『R/B』の愛染マコトが本来勤めていた企業のアイゼンテックの前身の「愛染鉄工」の「愛」を「love」、「工」を「craft」と訳して組み合わせれば、「ラヴクラフト」になります。

 なお、『ウルトラマンタイガ』の九頭流村の物語はクトゥルフ神話を和風にしただけでなく、そこに登場した天王寺藍に、日本神話のアメノウズメの「馬鹿な騒ぎで世界を救う」という要素が見られます。


2021年11月30日閲覧


 日本神話とクトゥルフ神話を仲介すれば、ウルトラシリーズの考察もより深くなるかもしれません。

 ウルトラシリーズとクトゥルフ神話の共通項は、このようにまとめられました。
 ちなみに、大瀧啓裕氏は、『エヴァ』の敵である使徒が、天使の名前で解説されるのに対し、バルディエルなど、特徴からそれらしき名前を割り当てていると主張しています(大瀧啓裕 2000年:pp.234-235)

 また、日本神話でウルトラシリーズを読み解くと、ウルトラマンギンガとその影のような存在であるダークルギエルは、アマテラスとスサノヲを思わせます。
 そしてアマテラスとスサノヲには、火の神のカグツチと雷の神のタケミカヅチの関連があり、ウルトラマンギンガが雷の技を使うことを思わせます。
そしてギンガは雷のときに雲を発生させており、大気圏外ではあまり使わないので、空気中の水蒸気に関わっている可能性があり、熱と水を考えれば、「火と水」が雷の要素の源であるようです。
 これが四大元素と日本神話、クトゥルフ神話の繋がりの示唆になるかもしれません。

まとめ

 ウルトラシリーズとクトゥルフ神話は、四大元素に当てはめにくいことや人間に好意的な神、『二重螺旋の悪魔』や『新世紀エヴァンゲリオン』や日本神話やカオスやファンタジーに繋がる部分があるようです。


参考にした物語


特撮
円谷一ほか(監督),金城哲夫ほか(脚本),1966,『ウルトラQ』,TBS系列(放映局)
樋口祐三ほか(監督),金城哲夫ほか(脚本),1966-1967,『ウルトラマン』,TBS系列(放映局)
野長瀬三摩地ほか(監督),上原正三ほか(脚本),1967 -1968,『ウルトラセブン』,TBS系列(放映局)
深沢清澄ほか(監督),広瀬㐮ほか(作),1980-1981,『ウルトラマン80』,TBS系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),長谷川圭一(脚本),1996 -1997,『ウルトラマンティガ』,TBS系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),川上英幸ほか(脚本),1997 -1998,『ウルトラマンダイナ』,TBS系列(放映局)
根本実樹ほか(監督),武上純希ほか(脚本),1998 -1999,『ウルトラマンガイア』,TBS系列(放映局)
小中和哉ほか(監督),長谷川圭一ほか(脚本),2004 -2005,『ウルトラマンネクサス』,TBS系列(放映局)
村上秀晃ほか(監督),金子次郎ほか(脚本),2005-2006,『ウルトラマンマックス』,TBS系列(放映局)
武居正能ほか(監督),中野貴雄ほか(脚本),2018,『ウルトラマンR/B』,テレビ東京系列(放映局)
市野龍一ほか(監督),林壮太郎ほか(脚本),2019,『ウルトラマンタイガ』,テレビ東京系列(放映局)


特撮オリジナルビデオ
會川昇ほか(原案),鈴木清(プロデューサー),テリー・ラーセン(脚本),アンドリュー・プラウズ(監督),1990,『ウルトラマンG(グレート)』,バンダイビジュアル

八木毅(監督),小中千昭(脚本),2001年7月25日(発売日),『ウルトラマンガイア ガイアよ再び』,バンダイナムコアーツ(発売元)

図鑑


清水保雅(発行者),2005(第1刷),2019(第22刷),『決定版 全ウルトラ怪獣完全超百科 ウルトラQ~ウルトラマンパワード編』,講談社

渡瀬昌彦(発行者),2006(第1刷),2020(第19刷),『決定版 全ウルトラ怪獣完全超百科 ウルトラマンティガ~ウルトラマンマックス編』,講談社
渡瀬昌彦(発行者),2019(第1刷),2020(第3刷),『決定版 全ウルトラ怪獣完全超百科 ウルトラマンメビウス~ウルトラマンタイガ編』,講談社

テレビアニメ
庵野秀明(監督),薩川昭夫ほか(脚本),GAINAX(原作),1995-1996(放映期間),『新世紀エヴァンゲリオン』,テレビ東京系列(放映局)

アニメ映画

庵野秀明(総監督・脚本), GAINAX(原作),1997年7月19日(公開),『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』,東映(配給)

漫画
岸本斉史,1999-2015,『NARUTO』,集英社(出版社)


小説
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(上)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(下)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 上』,朝日ソノラマ
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 下』,朝日ソノラマ
小林泰三,2018,『ウルトラマンF』,ハヤカワ書房

H・P・ラヴクラフトほか(作),東谷真知子ほか(訳),1983,『クトゥルー 4 邪神の復活』,青心社(『ティンダロスの猟犬』)
H.P.ラヴクラフトほか(作),大瀧啓裕(訳),1990,『クトゥルー 8 暗黒神話体系シリーズ』,青心社(『潜伏するもの』)
山本弘ほか(著),2015,『多々良島ふたたび』,早川書房(『マウンテンピーナッツ』)
小林泰三,1999,『玩具修理者』,角川文庫(表題作及び『酔歩する男』)
大瀧啓裕(訳),1985,『ラヴクラフト全集4』,創元推理文庫(『狂気の山脈にて』)
H・P・ラヴクラフト(著者),森瀬繚(訳者),2017,『クトゥルーの呼び声』,星海社(表題作、『ダゴン』、『インスマウスを覆う影』、『永劫より出でて』)
佐上靖之(発行人),2017,『ウルトラマンオーブ完全超全集』,小学館(発行所)

参考文献

朱鷺田祐介,2004,『クトゥルフ神話ガイドブック』,新紀元社
大瀧啓裕,2000,『エヴァンゲリオンの夢 使徒進化論の幻影』,東京創元社
ダニエル・ハームズ(著),坂本雅之(訳),2007,『エンサイクロペディア・クトゥルフ』,新紀元社
切通理作,2000,『地球はウルトラマンの星』,ソニー・マガジンズ
山口昌哉,1986,『カオスとフラクタル』,講談社ブルーバックス
丹波敏雄,1999,『数学は世界を解明できるか:カオスと予定調和』,中公新書

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