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物語で人間を批判する外部の存在が人間と同じになる可能性


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注意

これらの重要な情報を明かします。特に『二重螺旋の悪魔』と『ターミネーター・ニュー・フェイト』、『アイ・ロボット』にご注意ください。

特撮テレビドラマ
『ウルトラマン』
『ウルトラマンティガ』
『ウルトラマンガイア』
『ウルトラマンコスモス』
『ウルトラマンマックス』
『ウルトラマンメビウス』
『ウルトラマンギンガS』

『ウルトラマンオーブ』
『ウルトラマンジード』
『ウルトラマンタイガ』
『ウルトラマンZ』
『ウルトラマントリガー』

特撮映画
『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』

映画
『ターミネーター』
『ターミネーター2』
『ターミネーター3』
『ターミネーター4』
『ターミネーター・ジェニシス』
『ターミネーター・ニュー・フェイト』
『アイ・ロボット』

漫画
『鋼の錬金術師』
『ドラゴンボール』
『ドラゴンボール超』
『ケロロ軍曹』
『ULTRAMAN』
『銀魂』

『地球へ...』

テレビアニメ
『ドラゴンボールZ』
『ドラゴンボール超』
『銀魂』
『鋼の錬金術師』(2003)
『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』
『NARUTO 疾風伝』

アニメ
『宇宙戦艦ヤマト ヤマトよ永遠に』
『ドラゴンボール超 ブロリー』

小説
『二重螺旋の悪魔』
『ウルトラマンデュアル』
『ウルトラマンF』
『高度な文明』(星新一)
『ロボット』(チャペック)
『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』
『迷走皇帝』

はじめに

 人間でない存在が登場する物語において、しばしばその存在は人間を行動や精神の問題で批判します。
 近年は環境問題が特に重視されている印象があります。
 しかし、それについて違和感を持つのは、「そもそもその存在にも同じ問題がないのか」ということです。さらに言えば、「批判出来る知能を持つ時点で同じ問題が連鎖するのではないか」ということです。
 これを無視して、人間に世界の悪の側面を一方的に負わせることに、私は不公平なものを感じています。
 そこで、幾つかの物語の「人間でない存在」から、「人間と同じ問題を持たないのか」を考察します。もちろん、「人間でない存在が知能を持つ」のは現実にないSFやファンタジーの要素を持つため、そこに現実の視点を持ち込むのは設定の揚げ足取りになってしまう部分があるかもしれませんが、なるべく作品の趣旨を押さえた上で分析してみます。

『鋼の錬金術師』の無数のブーメラン

 『鋼の錬金術師』原作や2003年のアニメ版では、相手を批判した存在にその批判が跳ね返ることが多々あります。
 原作で、人間の戦争を引き起こしたホムンクルス(人造人間)は、「人間はどうしようもなく愚かだ。流血は流血を、憎悪は憎悪を呼ぶ。だから我々の思う壺なのである」と、おそらく報復の連鎖を指して笑っています。
 しかし、ホムンクルスには仲間の意識があり、ラストに「仲間内で一番えげつない」と言われたエンヴィーは、利用しようとした人間のマスタングにラストを殺されたときに、激しい怒りで殺そうとしました。利用価値がまだあるため、グラトニーよりは冷静でしたが、ラースよりは頭に血が昇っていました。ホムンクルスも、仲間を殺されれば人間と同じように報復しようとするのです。
 ホムンクルスの親玉である「お父様」は、人間が死者を生き返らせる人体錬成をしようとして失敗し重傷を負うのを、「思い上がりに正しい絶望を与える罰」だと笑いましたが、それを利用して「神」の力を手に入れようとした自分にも、人間に敗北してそれらしい現象が起きたことで、同じ「絶望」を与えられました。
 エンヴィーは、ホムンクルスがエドワード達の国「アメストリス」を生み出したことについて、「人間は今の繁栄も自分達で作ったと思っている」と笑っていましたが、「お父様」も元々ははるか昔の人間に生み出された存在で、「盗んだものを身につけて偉くなった気になっている」と最後に言われました。
 『鋼の錬金術師』では、こういった「ブーメラン」は人間にも当たります。
 人間と犬を融合させる人体実験を行った錬金術師のタッカーを糾弾したエドワードは、「君の人体錬成で手足と弟の体を失ったのも、人の命をもてあそんだ結果だろう」と言われています。マスタングは「我々軍属の国家錬金術師は、元々人の命をどうこうするのだからそう変わりはない」と言っています。だからこそ、そのようなブーメランを悪役に跳ね返した最後の展開は、私には驚くべきものでした。
 2003年のアニメ版では、錬金術のためには何かを犠牲にしなければならない「等価交換」について、人間の死刑囚をエネルギー源にして、エドワード達の体を取り戻すための「賢者の石」の錬成をさせようとしたラストが「大人はみんな犠牲が必要だと知っている」と笑っていました。
 しかし本作でラストの親玉であるダンテも、ラストを一方的に利用するつもりでした。
 死刑囚とはいえ、錬金術の代償にされる側は何も得られないように、ダンテの代償にされる側のラストもやはり得るものはなかったというブーメランなのです。
 ダンテは赤ん坊を殺そうとして、「等価交換などない。その赤ん坊はどれほど生きようと代価として努力しても何も得られない」と言っています。
 「人間の体を取り戻すためには人間の犠牲が必要だ」に、「犠牲になる側の人間は何を得るのだ」という疑問を考えなかったラストの詰めの甘さが露呈しています。
 なお、原作にほとんど忠実な2009年のアニメ版『FULLMETAL ALCHEMIST』の終盤のオリジナルでは、追い詰められた「お父様」は「私はどうすれば良かったのだ」と叫び、そう言われた相手は「お前はその答えを見ていただろうに」と返しました。その相手も、「お父様」と同じ問題に「答えを出す」だけならば同じ悩みを直視したのです。

人間と違うからこそ耐える部分

 ただし、ホムンクルスが人間以上に精神的に優っている、違うところもあります。「社会的な功名心がなく、身を隠している」あるいは「功名心があるが、嘘はつかない」ことです。
 原作のラストやエンヴィーは一般人になりすまして隠密活動をすることもあり、無力な人間を装うことは拒絶しない、社会的権力は求めないところがあります。
 「お父様」も、冷静に見ますと、アメストリスの国民を全滅させようとしましたが、その先に錬金術としての能力は求めても、外国を人間社会として支配する気はなさそうでした。これは『ドラゴンボール』のセルに似ています。
 逆に「世界の王」などを目指して、隣国「シン」の皇子と相性が良さそうだったホムンクルスのグリードは、それ以前からある程度の部下を「所有物」として従えていたものの、「俺は嘘をつかない。俺は強欲のグリードだ」と断定していました。「強欲だから部下を切り捨てない」とも言っています。しかし、嘘をつかないのでは権力者になれるか怪しいところであり、グリードは最後に「自分は世界ではなく仲間が欲しかったのだ」と認めました。
 逆に、元々人間からホムンクルスにさせられ、それでも権力者としての「レールの上」を歩く命令に従うラース=ブラッドレイは「部下などを切り捨てるのも必要だ」と言ったり、グリードの部下を見捨てない「強欲」を「愚か」と言ったり、表面的に穏やかな態度を装ったりしています。また、そもそも権力者を演じているときも「人の命は等しい値打ちしかない」と露悪的に敵の指導者に話したこともあります。
 良し悪しはともかく、通常の人間には出来ない忍耐の精神をそれぞれのホムンクルスが持つこともあります。
 

特撮における「人間でない存在」

 人間でない存在と人間の違いに絞りますと、たとえば特撮における「宇宙人」と「地球人」、「怪獣」と「人間」、「ロボット」と「人間」の問題などがあります。
 まず、特撮、特にウルトラシリーズの宇宙人は、物語の展開から地球侵略を行うのが多いのですが、それを正当化する場合、「地球人による環境破壊」に言及する例があります。
 『ウルトラマンマックス』や『ウルトラマンコスモス』劇場版1などがあります。
 しかし、「宇宙人は環境を破壊しないのか」という疑問が生じる場合もあります。
 たとえば、短絡的な話ですが、ケサムとデロスの例があります。『マックス』のケサムは「地球人が既に環境を破壊して、文明も戦争ばかりだから地球を我々が破壊しても同じだ」と話しています。しかし最終回では、地球の地底人のデロスが「地上の人間」のオゾン層破壊による自分達の滅亡を止めるために地上文明を攻撃しました。
 『マックス』の世界観は、それぞれの話が繋がっているか曖昧なのですが、デロスから見ればケサムはオゾン層破壊をはるかに上回る破壊を、デロスの存在を知らずにしようとしています。ケサムから見れば、やや強引に言えば、「人間の環境破壊を、自分達に害が及ぶまで放置した傍観者」になります。どちらも互いを環境破壊に関わる罪があるとみなすかもしれません。
 ケサムとデロスの両者に接触していたミズキは、「そんなに私達に滅んでほしいのか」と言っています。デロスは自分達の防衛システムを止められなくなっているので、「滅んでほしい」わけではなかったのですが、ミズキが言いたかったのは、「何故我々地上の人間ばかり環境破壊で責められなければならないのだ」ということだったかもしれません。

自滅してまで人間を批判したい存在

 また、『ウルトラマンガイア』では、「地球は1つの生命体」とする「ガイア理論」で地球の意思である光で人間が変身するウルトラマンが、人間や地球を守ろうとします。敵は地球外から来る「根源的破滅招来体」です。
 ところが、破滅招来体は、人間の環境破壊を批判することがゼブブなどのときにあります。そのために人間を淘汰しようとするときも見られます。一時期は、ウルトラマンアグル=藤宮もそうでした。
 しかし破滅招来体は、人間の兵器を宇宙怪獣の超コッヴや超パズズに破壊させて地球を滅ぼそうとしたり、隕石クラスのディグローブを落とそうとしたり、地殻変動を起こすほど強烈な磁気を持つモキアンを落とそうとしたり、反物質のアンチマターで宇宙ごと壊滅させようとしたりしています。人間さえ滅ぼせれば良いのか、地球環境や宇宙、そもそも他の破滅招来体すら滅ぼしかねません。
 人間だけを滅ぼせそうなのは、「環境に影響のない」特殊な化合物で引き寄せて捕食するクラブガン&アネモス、電磁波で人間を細かく操り「滅んで良いのは人間だけだ」とまで言ったクインメザードぐらいです。
 多くの場合、破滅招来体の方が、人間以上に環境を破壊しかねません。
 ただし、破滅招来体は逆に言えば、自分もろとも滅ぶつもりだった可能性もあります。自力で移動しているのか怪しい、つまり自滅の意思も人類を攻撃する悪意もあるか分からない超コッヴやディグローブやモキアンは知能がどれほどかも分かりません。しかし、知能的に振る舞い、人間の兵器の部品を攻撃して大爆発を起こそうとしたブリッツブロッツは、地球怪獣と人間の共通の敵となりましたが、自分も爆発に巻き込まれる覚悟があったかもしれません。
 だからこそ、破滅招来体は人間以上に危険な破壊の性質と自滅の意思の可能性があるのです。

外見による拒絶は「お互い様」とは言い切れない 

 次に、人間の問題として、外敵に対する過剰な警戒心もあります。特に、「人間は容姿で差別する」という問題が生じます。しかし、外見での差別というのが、「自分にとって気味が悪い外見か」と「自分達にだけとは限らず、明らかに悪いことをした相手と外見が同じか」の区別が曖昧なところがあり、その複雑さは「人間以外」にも適用される危険性があります。
 まず、『ケロロ軍曹』では冬樹が『泣いた赤鬼』から、「鬼を外見で差別する人間が一番悪い」と話しています。
 確かにこの作品では、「鬼」のように人間離れした宇宙人の「ケロン人」のケロロが夏美に、居候とはいえ手ひどく扱われて反逆を繰り返す場合が多くあり、人間の容姿のモアは協力しても罰せられにくいため、夏美による外見の差別は感じられます。
 しかし、逆にケロン人が外見による差別をしないのは、「慣れている」ためとも言えます。
 タママはケロロが身を隠す手段を考えるときに、その独特の外見から、自分が「人間の体型のスーツから頭だけ出す」案を出しました。人間型のモアは、(ケロロがカエルをディフォルメしたような容姿なので)「本物のカエルの頭の形のスーツを被る」案でした。それを地球人の冬樹が「駄目」と言うと、タママは「さっきから批判ばかりで、どうすれば満足なわけ?」と苛立ちました。
 これは冷静に考えますと、タママは自分がケロロに近い外見で、なおかつ自分とかけ離れた外見の宇宙人(ケロン人から見れば「地球人」もです)と「日常的に」接しています。モアも人間型ですが、ケロロに馴染んでいます。
 日常的に異なる知的生命体と接していない通常の地球人の感覚、「地球人から見たケロン人の容姿の異様さ、どのようなスーツで誤魔化せるか」が、タママには伝わりにくいと考えられます。「ケロン人から見れば地球人だって目立つだろう?お互い様だ」とはならないのです。
 『二重螺旋の悪魔』では、人間とそうでない知的生命体が「気持ち悪いのはお互い様」だとみられる容姿でしたが、これは戦争せざるを得ない状態での話でした。
 逆に言えば、タママが「異なる外見の種族を拒絶しない」のは、本人の人格が寛容なだけでなく、文明社会の構造から「慣れている」、「慣れる機会に恵まれている」ためでもあるのです。
 その意味で、「人間でない宇宙人も、文明次第では、人間のように自分と異なる外見の存在を拒絶する可能性はある」のです。
 

外見が「個体」と「種族」のどちらを指すのか

 また、『ウルトラマンメビウス』では、それまでいなかった青いウルトラマンのヒカリ=ハンターナイトツルギの偽物が暴れたときに、「明らかに悪いことをした相手と外見が同じか」という後者の意味で疑ったのか、「外見が不気味か」という前者の意味かが混乱していました。
 さらに言えば、本物も偽物ほどではないにせよ、怪獣を倒すために強引な戦いをしています。序盤のメビウスもそのようなところはありましたが。
 そもそも、宇宙人の外見ともなりますと、種族の単位で同じなのか、同じ意識を持った個体の単位で同じなのかが区別しにくくなります。
 新世代(ニュージェネレーション)ヒーローズのウルトラマンでは、特にそれがあります。
 『ウルトラマンギンガS』では、一般人や防衛チームの見る範囲では、主人公のウルトラマンの変身や強化の能力から、全く同じ容姿の怪獣が敵から味方になったり、怪獣とウルトラマンが融合したようになったりしています。
 これでは、「怪獣は同種の別個体で敵か味方かが異なる」のか、「同じ個体でも異なるときがある」のか区別がつきません。
 実際に、敵から味方になった怪獣「サドラ」は種族名であり、「ウルトラマンギンガ」は個人名ですから、「サドラが敵から味方になった」のは種族か個体かの問題が混乱します。
 『ウルトラマンジード』では、ウルトラマンジードが、かつて大災害を起こしたウルトラマンベリアルと似ていたために警戒されました。ウルトラマンゼロに比べてその傾向が強いのですが、これは「似た外見だから」という血縁の問題だけでなく、「そもそも本物のベリアルは写真が曖昧にしか残っておらず、ジードがベリアルと同一人物にも見える」とも言えます。
 血縁者の場合は遺伝子や家族関係からの疑いで「言いがかり」になるかもしれませんが、同一人物や個体への疑いでは「過去の行いからの正当な、必要な判断」となりやすいでしょう。
 そういった微妙な判断は、しばしば物語の「勢い」で押し切られてしまいます。
 『ウルトラマントリガー』では、ウルトラマントリガーがトリガーダークとなり、突然暴れ回り、トリガー=ケンゴの正体を知るアキトは「状況を確かめてからでも攻撃は遅くないはずです」と言ったものの、隊長のタツミは「そんな猶予はない」と断言しました。
 味方が外見を幾らか変化させて敵になったのでは、操られているのか、裏切ったのか分からないので、攻撃すべきかどうか迷います。たとえ正体が隊員であると分かっていてもです。結果的にトリガーダークからケンゴは分離して本物のトリガーとして復活しましたが。
 また、敵のカルミラとヒュドラム同士で争ったときは、比較的「状況」を知っているはずのケンゴも驚きました。
 カルミラとヒュドラムを争わせたキリエル人は、『地球はウルトラマンの星』によりますと、『トリガー』のモチーフである『ウルトラマンティガ』の劇場版でも「残像思念」が登場する予定がありましたが、準備稿で「残像思念の分際で」と、カルミラ達に該当する「闇の巨人」に消されていたそうです。つまり、キリエル人と「闇の巨人」のどちらが翻弄されるかは断定出来ないのです。

設定の「上」は誰に降りかかるか分からない

 遠回りになりましたが、「事情を知っている」、「知らない周りを批判する」、「外見で判断するのを批判する」ことの多い主人公でさえ、いつ「味方か敵か分からない」、「そもそも外見で相手が敵と同一個体か同種の別個体かも区別出来ない」などの事態になるかは、完全には誰にも分からないということです。
 それは人間でなくても、設定に関して「上には上がある」と言える「インフレーション」のある物語では当てはまります。一般的な人間が一方的に無知、残忍とは言い切れません。人間でない存在も「無知」、「残忍」な側になりかねません。


「彼は人間的に何か欠落しています」という超能力者


2022年5月10日閲覧


 また、『地球へ...』原作では、「人間を批判した超能力者が人間と同じ立場になる」現象があります。
 最初の超能力者「ミュウ」は人間の具体的な思考や抽象的な感情を読める上に、自分は「ガード」という手段で読ませないため、一方的に人間の内面を読めるのですが、人間の恐怖心からの迫害に憤っていました。
 しかし、ミュウから生まれた「ナスカの子」がミュウ以上の超能力を持ち、ミュウにも恐怖されました。
 ミュウの指導者であり、人間の要素を併せ持つジョミーは、ナスカの子のトォニィに「今、心の中で返事をしたよ」と言われて「気味の悪そうな顔」をしました。
 しかしジョミーは徐々にナスカの子を人間と戦うための人員として受け入れ、ジョミーと親しかったミュウの1人は、トォニィに関して「彼は人間的に何か欠落しています」と言ったのですが、ジョミーの答えは「人間的にはね」でした。
 人間を批判するミュウもまた、人間的なものを求めたのです。ちなみに、そのミュウは元々口で話せない体質で、テレパシーで話したのですが、その文法の上で「人間的に」と「言った」のかは曖昧です。

 

地球怪獣ですら地球の環境を壊す可能性

 『シン・ウルトラマン』について、「ヤオヨロズ作戦」の可能性から書きましたが、地球怪獣が人間の社会に排除される側だとしても、ウルトラシリーズでは地球怪獣同士で争う場合もあります。

2022年5月7日閲覧

 さらに、「地球怪獣が地球の環境を壊す」可能性もあります。
 たとえば、『ウルトラマンメビウス』では、バードンを人間が複製したマケット怪獣を戦力とするか判断するときに、「毒が環境を破壊する」とされました。
 『トリガー』でも、地球怪獣のはずのバニラとアボラスは爆発すると毒をまき散らします。
 『ウルトラマンZ』の地球怪獣で「地球温暖化の被害者」だとされたペギラも、極地から日本に来ているために、日本や温帯の環境を破壊する可能性があります。被害者である人間でも新しい環境破壊の加害者になる可能性が、『生物多様性とは何か』で指摘されています。
 温暖化に言及したヘビクラの正体である『ウルトラマンオーブ』のジャグラーも、『オーブ』ではマガパンドンによる温暖化に近い現象を起こしています。
 ただし、マガパンドンは「魔王獣」という特殊な分類で、ジャグラーは「超獣」アリブンタを「怪獣じゃない、超獣だ」と言ったこともあるので、「環境を壊したマガパンドンは怪獣じゃない、魔王獣だ」と言うかもしれませんが、本質的な答えになるかは微妙です。
 『ウルトラマンティガ』では、共食いの性質があるクリッターが、人間による電磁波により有害な怪獣「ガゾート」になるときに、人間が加害者であるように、隊員のレナに言われています。しかしそのときに現れた怪獣のジョバリエは、クリッターとの関連は明確でなく、攻撃性も低いものの、電波障害を起こしていました。人間による電磁波を環境破壊とみなして妨害した可能性もありますが、逆にジョバリエによる電磁波への影響が、人間に関係なくクリッターをガゾート化させる可能性があります。つまり、怪獣も人間に関係なく、環境を破壊する可能性があるのです。
 『ウルトラマンコスモス』では、怪獣を人間による環境破壊によって目覚める、悪意の少ない被害者とする傾向があります。人間の防衛を利己的だと解釈する傾向もあります。しかし、悪意なく毒ガスを発するエリガルと、それを操ろうとする宇宙のウイルス「カオスヘッダー」の介入で、対処が難しくなりました。
 周辺住民を守るためにエリガルを倒さなければならないと、人間のためであるように主張されていましたが、冷静になりますと、エリガルは周辺の人間以外の生物までも、それこそバードンのように抹殺する可能性があります。バードンほど凶暴でなくても、です。
 エリガルが周囲の生態系や環境を破壊しないのか、という逆転の発想は、劇中で見当たりませんでした。
 カオスヘッダーは、ウルトラマンコスモスが最終的にエリガルの体質を変化させたことについて、「我々が我々のために怪獣を変化させるのと、お前が人間のために怪獣を変化させるのはどこが違う」と糾弾しました。
 しかし、カオスヘッダーもそのあと、自分の判断で地球や宇宙を自分の意識で統一して平和にしようとしており、コスモスから見れば「死の星」に見える環境に変えた星も「秩序」に組み込まれていたと主張しました。
 すると、カオスヘッダーはその「秩序」のために、エリガルをどうする気だったのか、という疑問があります。他の生命、人間以外も守るためには、結局エリガルを利用しつつ最終目標のために切り捨てるか体質変化させるつもりだったならば、カオスヘッダーも人間と同じ悩みを持っていた可能性があります。
 ちなみに、『メビウス』のバードンも毒袋を破壊されると自滅するらしいですが、それを「ミツバチは自分の毒で死ぬ」と表現されています。しかし、ミツバチの毒が環境を破壊するという話は聞いたことがありません。むしろミツバチは生態系において受粉という重要な役割を果たします。
 ちなみに、現実の環境問題では、植物の葉緑体の起源とされる微生物のシアノバクテリアが、光合成による酸素で、細胞に核を持つ真核細胞生物の進化をもたらしたものの、それまで生きていた原核細胞生物の多くは酸素に耐えられないため絶滅しました。そのため、シアノバクテリアが毒ガスで環境を破壊したとも解釈されます。それが人間を含む多くの生物にとっては「良い環境」なのです。
 逆に『ガイア』ではかつて無酸素で繁栄していた生物が怪獣となった「カンデア」がその環境を「取り戻す」つもりでしたが、それは現在の生物にとっては「生態系の破壊」です。
 ここまで来ますと、特撮の世界観以前に「環境」、「破壊」の定義すら曖昧になります。
 よって、これらの例から、「人間だけが環境を破壊する」とも言い切れなくなります。

ほとんどの「宇宙人にあり、地球人にない特徴」の「必要十分条件」

 また、宇宙人に話題を移しますと、人間の問題が本当に人間だけのことかについて、さらに重要な視点があります。

 怪獣の定義は、『ティガ』のキングモーラットの回で言及されたように「大きさ」など難しいのですが、宇宙人は、生まれた場所以外での「人間と異なる特徴」を統一するのがかなり難しくなります。
 つまるところ、物語で私に見つかる、ほとんどの宇宙人にあり人間にない特徴の必要十分条件は、「自力で地球と他の星を移動出来るか、何かを送り込めるか」以外にありませんでした。
 宇宙人ならば地球人を上回る能力で移動出来なければ物語が基本的に成立せず、逆にそれさえあれば他の点は多様で構わないのです。
 戦闘能力や侵略の精神性などは必ずしも統一出来ません。
 そして、「技術が優れているから精神も優れており、環境を破壊しない」というときもあるでしょうが、それはあまりに一方的に感じます。
 大航海時代のヨーロッパによる移動は、それこそアメリカの先住民などには、特撮の宇宙人のように隔絶した高度な技術に映ったかもしれません。『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』ではアメリカの黒船の話題がありました。
 しかし、その高度な技術がかえって環境を破壊した可能性もあります。今ではヨーロッパが環境保護の先進国かもしれませんが、特撮の宇宙人の例にそれが合致するとは限りません。
 むしろ、技術のある面の突出が、別の意味での劣化をもたらすかもしれません。

ボールペンすら作れない地球人の嘆きと、侵略に来た宇宙人のストレス

 たとえば、『ウルトラマンデュアル』では、明らかに侵略者のヴェンダリスタ星人と、ウルトラの星の聖女「ティア」が地球に住み、少しずつ戦力やエネルギーを削り戦いながら、地球人がどちらに付くのか微妙な立場になっています。
 地球人の一部がウルトラマンに協力するために、その能力を得て、支援をほとんど得られない土地で数百人で暮らしたとき、「我々は数百人ではボールペンすらまともに作れない。弥生時代からやり直しになる」と嘆いています。『ウルトラマンF』でも、似たようなたとえとして、「テレビの原理を知らなくても操作は出来る」とありました。
 星新一さんの『高度な文明』で、宇宙人が設備の故障でほとんど何も出来なくなったときに、「我々地球人も、ほとんどは単独ではマッチ箱を作るのも出来ないし、テレビの原理も知らない。高度な文明とはそういうものだろう」と話しています。
 しかし、冷静になりますと、ティアもヴェンダリスタ星人も、高度な科学技術で地球に来たにもかかわらず、少人数ではほとんど設備なしで限られた生活しか出来ていないのです。同じではありませんが、全く違うわけでもありません。
 ヴェンダリスタ星人は地球の言葉を理解出来たが、逆は出来なかったために、支配するにふさわしいという身勝手な論理に、負けそうになる地球人もいました。
 ヴェンダリスタ星人は人格を分裂させて人間に乗り移り支配し、一部の人格が素行の悪いために人間を苦しめました。しかしそれも自分達の「社会による技術」が高かったために生活の要求水準が上がり、「自活する能力」は低いためにストレスを蓄積していたとも考えられます。
 そもそも、ヴェンダリスタ星人が個人による単独の能力で言語を解析出来たかも曖昧です。
 『デュアル』において、単独で科学技術の設備を作り出せる高度な知識を持っているのは、結局のところ人間への協力者のピグモンだけだとも言えます。そしてピグモンは本来の『ウルトラマン』でそこまでの知能はありません。
 そもそも、『高度な文明』では、宇宙人の方が文明に依存して単独の能力を落としていたのです。
 『コスモス』では、表現が悪いですが、宇宙人の「ゴミ」であるイゴマスが戦いを起こしてしまいました。
 『オーブ』では宇宙人が、『ウルトラマンタイガ』では地球の宇宙飛行士が地球人の出した宇宙ゴミの被害に遭いましたが、果たして宇宙人がゴミを出さないのかは微妙です。

「設備のない」という不満を言う宇宙人の長所と短所

 月刊ヒーローズ連載の『ULTRAMAN』では、地球で暮らす宇宙人が様々な犯罪を働き、地球人の防衛組織に協力する「セブン」=「諸星弾」(実は宇宙人です)が、「あいつらは一緒に暮らす気がないのか」という防衛組織の人間の不満に対して、「元々無理な話だ。お前達は猿の暮らしをしろと言われたらどうする?」と言っています。
 実際に、本作では「地球人は宇宙で遅れた種族だ」と言う宇宙人もいます。『デュアル』のヴェンダリスタ星人もそうです。
 しかし、『ULTRAMAN』では人間の味方である「ヤプール」が、科学技術で人間を助けるときに「地球の設備が劣る」と不満を言っていました。
 逆に言えば、『デュアル』のヴェンダリスタ星人も、『ULTRAMAN』の宇宙人も、地球に来るだけの高い技術を「社会や設備に支えられることで」持っているのは地球人と異なっていても、地球の設備の不足の中では善行も悪行も難しい「個人の能力が限られている」ストレスを抱えるのは、良いか悪いかは別として、地球人に近いのです。
 仮に人間が文明社会の発達で猿の言語を一方的に理解出来たとしても、それは個人の能力の向上とは限らず、それでも猿に対して優越の感情を持つでしょう。
 宇宙人が優るのは身体能力ならそうかもしれませんが、科学技術は個人の能力とは限らないのです。
 というより、『デュアル』も『ULTRAMAN』も「人間でない存在に人間の劣るところを批判させる」のではなく、「人間が文明を発展させた末にたどり着く、個人の能力の劣化を招いたifとしての存在を描く」と言えます。
 

ベルトコンベアの善し悪しは、人間以外にも降りかかる

2022年5月7日閲覧

 資本主義の問題の象徴として、『銀魂』のジャスタウェイ工場が、ベルトコンベアの流れ作業で爆弾作りに気付けなかったことを挙げました。
 『人新世の「資本論」』には、「パソコンの部品を組み立てるのは、その原理を知らない人間である」とあります。
 しかし、そのベルトコンベアだからこそ、宇宙などに行ける可能性も秘めています。宇宙人は人間=地球人の劣った部分を克服した存在ではなく、文明の発展と引き換えに個人の能力を劣化させた先の存在である可能性を秘めているのです。
 『ヤマトよ永遠に』などにも、「機械に頼り生命の力が衰える」という描写はありましたが、特撮などではその可能性を見落とす、あるいは「人間を悪く言う論理」の勢いで見えにくくしているところがあります。
 『ULTRAMAN』のヤプールが「自分の不満の原因は地球の設備が劣っているだけでなく、そもそも一人では設備なしに作業出来ない技術しか持たない自分にもある」と言わないようにです。
 環境破壊にせよ、個人の能力の劣化にせよ、人間だから、というよりは、何らかの行動をしているうちに、それを「良いことだ」と考えて貫徹することでその裏の悪の面を増大させてしまうのであり、人間を批判する人間でない存在にもそれはあるかもしれません。
 産業革命が環境破壊の重要な原因だとされますが、悪意ではなく善意もあったはずです。だからこそ止めにくかったのです。
 『NARUTO 疾風伝』のトビは、「物事には全て表と裏がある」と言っています。
 

バイオロイドの「人間らしさ」

 そして、「ロボット」と「人間」の問題もあります。
 チャペックの『ロボット』は、ロボットの語源となった戯曲ですが、その「ロボット」は機械ではなく、有機物で合成された、今の表現では一種のバイオロイドです。本来の意味は「働くもの」です。
 工場の作業のために、人間に近い体型、失敗を避けるために搭載された「痛み」、有機物でも生殖は出来ないなどが本作の「ロボット」の特徴です。
 そして、ロボットに人権を与えようとした人間の頼みで人間らしい「魂」を与えたこと、人間がロボットに依存したことで反乱を招き、働く人間1人を残して人間は滅び去りました。
 「人間以上に人間を憎むことは出来ない」とも説明されました。
 しかし、ロボットを作り出すための書類が損失したために、ロボットは種の滅亡を恐れるようになり、新しい工業を考える知恵まではなかったため、逆に生き残りの人間にすがりつくようになりました。
 つまるところ、バイオロイドであろうと、人間と同じ行動をするからこそ人間を批判し、人間と同じような自滅を招く可能性があります。
 同じ部分を持つからこそ批判するのかもしれません。

『ターミネーター』や『アイ・ロボット』の「アメリカらしさ」 

 『ターミネーター』では、機械のロボットであるターミネーターが、「自己破壊出来ない」というキリスト教らしい要素を感じさせます。また、従うようにプログラミングされた主の人間、『2』のジョンに「伏せろ」、「あきらめろ」、『3』のケイトに撃たれて「二度とするな」と指示したこともあります。「必要だと判断すれば上司にも指示をする」のはアメリカらしい「平等」かもしれないと考えました。
 そして『ニュー・フェイト』では、ターミネーターが自軍の敗北で「自由」を得たと主張し、そこから「人間の真似をする」ことで、「人間の家族になる」、「良心に等しいものを得た」と説明しました。しかしその「良心」はそれまでのシリーズの主人公のような「人類を守る」ものではなく、「人類は機械に支配されなくても高い確率で野蛮化する。自分の意思で愛する家族をそのときに守るために武装する」というアメリカ流の「善意」でした。
 それは、「ロボットであってもアメリカで暮らせば、当たり前のこととして人間の、というよりアメリカ人の真似をしてその精神を手に入れる。良くも悪くも」と考えさせるものでした、
 『アイ・ロボット』では、人間を守る、従う、自分を守る「三原則」を持つはずのロボットから、それに反するらしい「サニー」が現れ、同じ外見の別機体より優れた体や頭脳を持つと説明されて「私は特別」と言っています。しかし、「私達は目的があって作られる。私が他より優秀なのは自分を犠牲にしてでもある戦いをするためだ」と主張しました。また、終盤には、ロボットに「自由」の概念の意味を教える人間がいました。
 これは、キリスト教の「創造」の概念に近いですし、「優秀な人間は世の中に尽くす義務がある」、「ノーブレスオブリージュ」の精神も見られます。ヨーロッパやアメリカ特有の考えかもしれません。
 やはり、アメリカで「当たり前」とされる思想が、ロボットにも伝わるようです。
 チャペックの『ロボット』も、民族型(ナショナル)ロボットを製造して、異なる国のロボットを「憎む」ように組み込まれる計画があったようです。
 『ターミネーター4』では、機械に立ち向かう人間が英語に依存するナショナリズムを生み出す可能性を挙げましたが、人工的存在でもナショナリズムを持つ可能性があるようです。

2022年5月7日閲覧

『ドラゴンボール』の神々と環境破壊

 また、『ドラゴンボール』シリーズでは、地球などの神々が人間、つまり宇宙人を含む人型生命体に指示をして世界を守ろうとします。
 『ドラゴンボール超』で、神々の中で人間全般を嫌悪するザマスは、漫画版では「人間など神の作り出した環境を破壊する」と話していますが、そもそも『ドラゴンボール』の世界では神も人型生命体であり、あの世ですら体を与えられて食事が可能のようです。
 すると、「神は環境を破壊しないのか」という問題があります。たとえばザマスやその師匠のゴワスは紅茶をティーカップで飲んでいましたが、茶葉を育てる農業も、環境に負荷を与えないとは言い切れません。陶磁器も土を掘り出す必要がありますし。
 さらに、いささか汚い話ですが、本作では神も排泄をする可能性があります。
 最初に登場した神である「地球の神」の神殿には、孫悟空が使っていましたが、トイレがありました。
 このときの「地球の神」は、本来水しか飲まないナメック星人ですが、地球に来て記憶喪失になってから「食べ物がほとんどなくて困った」と言い、その「悪の心」の分身であるピッコロは食事をして、悟空の息子の孫悟飯を連れ去ったときに「小便」の概念は理解しています。
 「地球の神」の上司である北の界王も、自分の小さな星で小便はしています。死んだ状態で修行する悟空がするのかは分かりませんが。
 また、15代前の界王神は、魔法使いと合体した状態ですが、悟空に軽々しく攻撃されたときに、排泄に関する罵倒をしています。
 界王神と対をなす破壊神も、排泄はするようです。
 排泄により、神々が環境を破壊するおそれもあります。超ドラゴンボールで不死身になったザマスも、紅茶は飲んでいました。
 『世界史は化学でできている』によると、ヨーロッパは下水道がないために不衛生だった時期があり、それは人口密集によるもので、『ドラゴンボール』の神が下水で困らないとしても、それは「個体数の少なさ」によるものかもしれません。
 『迷走皇帝』では、別世界から来た高い階級の人間が、現代日本の大量生産による食糧の弊害に苦しみましたが、それなしに生活出来ていたのは、高い地位にいたためだとも考えられます。

「良い環境」は「人間以外」にとってどうか

 さらに、『ドラゴンボール超』における破壊神の付き人であり、中立的な言動の多い天使のウイスなどは食事を楽しむことがあります。ここに、環境問題の複雑さがあります。
 ウイスの弟であるメルスは中立を破り優しいのですが、悟空と同じサイヤ人のブロリーの暮らしていた天体「バンパ」を「環境が悪い」と言っていました。
 しかしそこにも暮らす生物はいます。あくまで「人間にとって悪い環境」でしかないかもしれません。サイヤ人にとって、制圧する価値はないようです。
 仮に天使のメルスが、人間に近い体型であるために必要とする環境も近いのであれば、『ドラゴンボール』における「良い環境」とは「神々や天使を含む人型生命体の住みやすい環境」でしかないかもしれません。ウイスは宇宙空間にも耐えられますが、ブルマの別荘の食事や空気を明らかに称賛していました。
 現実にもそのような「環境の善し悪し」の主観はあるでしょう。
 たとえば、ドラゴンボールは惑星に散らばり、人間の努力を試すために集めさせる部分があります。逆に地球に封印されていた魔人ブウは、それを知る当時の界王神が「人間には行けない場所にある。うかつに刺激出来ない」と放置していました。
 つまり、人間の体型、ドラゴンボールを掴める手などを持った存在を、神の論理の前提としているのです。
 仮にバンパの環境を、『ブロリー』以降で暮らすブロリー達のために「改善」しようとした場合、中立のウイスは「代わりに元々住んでいた生命は滅ぶかもしれません」と言う可能性があります。

 また、ブロリーは単なる水も知らないような環境で育ったため、体を洗ったことがありませんでしたが、『超』アニメ版では長時間の修行で体を洗わなかった悟空とベジータにウイスも顔を歪めており、「中立」の天使でさえ人間と同じ「清潔」に関する感情を持つかもしれません。
 そういった「常識」が、「人間でない存在が人間を批判するつもりが、同じことをしている」という論理を生み出すかもしれません。
 ちなみに、『二重螺旋の悪魔』では、人間の誕生に関わる「善良であると期待されていた宗教的存在」が生態系を破壊しました。また、その形態の1つも人間から見て重要な姿でした。さらに、その宗教的存在は「孤独」や「退屈」によりある悪行を働きましたが、それとの戦いである空間に閉じ込められた主人公も、ある意味で近い苦しみを体験しています。
 

 

まとめ

 怪獣や宇宙人による環境破壊、外見による拒絶、超能力者の恐怖、個人の能力の劣化、ロボットによる宗教観、『ドラゴンボール』の神々の「環境観」などは、人間だから生じる悪とは言い切れないものがあると示しているようです。人間と同じ行動をしているうちに、「善意」を貫徹して、その裏の「悪行」を同じく増大させてしまうのかもしれません。
 しかし、だからこそ人間でない存在の善し悪しを見習うことも反面教師にすることも出来る余地があります。

参考にした物語





特撮テレビドラマ

樋口祐三ほか(監督),金城哲夫ほか(脚本),1966-1967,『ウルトラマン』,TBS系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),長谷川圭一(脚本),1996 -1997,『ウルトラマンティガ』,TBS系列(放映局)
根本実樹ほか(監督),武上純希ほか(脚本),1998 -1999(放映期間),『ウルトラマンガイア』,TBS系列(放映局)
大西信介ほか(監督),根元実樹ほか(脚本) ,2001 -2002(放映期間),『ウルトラマンコスモス』,TBS系列(放映局)
村上秀晃ほか(監督),金子次郎ほか(脚本),2005-2006,『ウルトラマンマックス』,TBS系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),小林雄次ほか(脚本) ,2006 -2007 (放映期間),『ウルトラマンメビウス』,TBS系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),小林雄次ほか(脚本) ,2014 (放映期間),『ウルトラマンギンガS』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),中野貴雄ほか(脚本) ,2016 (放映期間),『ウルトラマンオーブ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),安達寛高ほか(脚本) ,2017,『ウルトラマンジード』,テレビ東京系列(放映局)
市野龍一ほか(監督),林壮太郎ほか(脚本),2019,『ウルトラマンタイガ』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),吹原幸太ほか(脚本),2020,『ウルトラマンZ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),ハヤシナオキほか(脚本),2021-2022,『ウルトラマントリガー』,テレビ東京系列(放映局)

特撮映画

飯島敏宏(監督),千束北男(脚本),2001,『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』,松竹(配給)

実写映画

ジェームズ・キャメロン(監督),ジェームズ・キャメロンほか(脚本),1984,『ターミネーター』,オライオン・ピクチャーズ(配給)
ジェームズ・キャメロン(監督),ジェームズ・キャメロンほか(脚本),1991,『ターミネーター2』,トライスター・ピクチャーズ(配給)
ジョナサン・モストゥ(監督),ジョン・ブランカートほか(脚本),2003,『ターミネーター3』,ワーナー・ブラーズ(配給)
マックG(監督),ジョン・ブランケットほか(脚本),2009,『ターミネーター4』,ソニー・ピクチャーズエンタテイメント(配給)
アラン・テイラー(監督),レータ・グロリディスほか(脚本),2015,『ターミネーター新起動/ジェニシス』,パラマウント映画(配給)
ティム・ミラー(監督),デヴィット・S・ゴイヤーほか(脚本),2019,『ターミネーター・ニュー・フェイト』,パラマウント・ピクチャーズ
アレックス・プロヤス(監督),ジェフ・ヴィンターほか(脚本),2004,『アイ・ロボット』,20世紀フォックス

アニメ映画

松本零士ほか(原作),松本零士(監督),舛田利雄ほか(脚本),1980,『宇宙戦艦ヤマト ヤマトよ永遠に』,東映(配給)
長峯達也(監督),鳥山明(原作・脚本),2018年12月14日(公開日),『ドラゴンボール超 ブロリー』,東映(配給)

漫画

水島精二(監督),會川昇ほか(脚本),2003-2004,『鋼の錬金術師』,MBS・TBS系列(放映局)
入江泰浩(監督),大野木寛ほか(脚本),2009-2010,『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』,MBS・TBS系列(放映局)
鳥山明,1985-1995(発行期間),『ドラゴンボール』,集英社(出版社)
鳥山明(原作),とよたろう(作画),2016-(発行期間,未完),『ドラゴンボール超』,集英社(出版社)
吉崎観音,1999-(未完),『ケロロ軍曹』,角川書店
清水栄一×下口智裕,2012-(発行期間,未完),『ULTRAMAN』,ヒーローズ(出版社)
空知英秋,2004-2019(発行期間),『銀魂』,集英社(出版社)

竹宮惠子,2007,『地球へ...』,スクウェア・エニックス(小学館)

テレビアニメ
清水賢治(フジテレビプロデューサー),松井亜弥ほか(脚本),西尾大介(シリーズディレクター),小山高生(シリーズ構成),鳥山明(原作),1989-1996,『ドラゴンボールZ』,フジテレビ系列(放映局)
大野勉ほか(作画監督),冨岡淳広ほか(脚本),畑野森生ほか(シリーズディレクター),鳥山明(原作),2015-2018,『ドラゴンボール超』,フジテレビ系列(放映局)
藤田陽一ほか(監督),下山健人ほか(脚本),空知英秋(原作),2006-2018(放映期間),『銀魂』,テレビ東京系列(放映局)

小説

梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(上)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(下)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 上』,朝日ソノラマ
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 下』,朝日ソノラマ
小林泰三,2018,『ウルトラマンF』,ハヤカワ書房
三島浩司,2016,『ウルトラマンデュアル』,ハヤカワ書房
梅原克哉,1990,『迷走皇帝』,エニックス文庫
カレル・チャペック(著),阿部賢一(訳),2020,『ロボット』,中央公論新社
チャペック(作),千野栄一(訳),1989,『ロボット R.U.R.』,岩波書店
朱川湊人,2013,『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』,光文社
星新一/作,和田誠/絵,2003,『ピーターパンの島』,理論社(『高度な文明』)

参考文献


 
伊勢武史,2013,『「地球システム」を科学する』,ベレ出版
左巻健男,2021,『世界史は化学でできている』,ダイヤモンド社
井田徹治,2010,『生物多様性とは何か』,岩波新書
斎藤幸平,2020,『人新世の「資本論」』,集英社新書
切通理作,2000,『地球はウルトラマンの星』,ソニー・マガジンズ

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