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物語における、人間以外の存在もストックの消費による環境破壊をする可能性があるが、「自分も困る」かは場合による


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注意

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特に、『二重螺旋の悪魔』と『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と『ロボット』(チャペック)と『幼年期の終わり』にご注意ください。

特撮テレビドラマ
『ウルトラQ』
『ウルトラマン』
『ウルトラセブン』
『帰ってきたウルトラマン』
『ウルトラセブン』(平成版)
『ウルトラマンダイナ』
『ウルトラマンコスモス』
『ウルトラマンタイガ』

『ウルトラマンZ』

漫画
『ドラゴンボール』
『ドラゴンボール超』
『鋼の錬金術師』
『寄生獣』
『銀魂』
『地球へ...』
『ULTRAMAN』(清水栄一ほか)
『新世紀エヴァンゲリオン』

テレビアニメ
『鋼の錬金術師』(2003)
『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』
『ドラゴンボール超』
『NARUTO 疾風伝』
『銀魂』
『新世紀エヴァンゲリオン』

アニメ映画
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』
『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』
『劇場版 銀魂 万事屋よ永遠なれ』

小説
『二重螺旋の悪魔』
『ウルトラマンデュアル』
『ロボット』(チャペック)
『ターミネーター4』
『ターミネーター4 廃墟から』
『幼年期の終わり』

実写映画
『ターミネーター』
『ターミネーター2』
『ターミネーター3』
『ターミネーター4』
『ターミネータージェニシス』
『アイ・ロボット』


はじめに




2022年6月9日閲覧



 様々な物語の中で、私は「環境を破壊するのは人間だけか、その疑問が何らかの視点でごまかされていないか」と感じることがありました。
 そこで経済学と生物学から、人間が他の生物と異なる環境破壊をするのは、「資源の回復しないストックを、回復するフローと混同して消費して環境を破壊するが、人間だけは何らかの手段で自滅を先送りにしているため」だと推測しました。
 この観点から、私の重視する幾つかの物語の「人間の環境破壊の被害者、あるいは破壊を批判する知的存在」や「人間より優れていると自称する存在」が環境を別の意味で破壊しないか、という疑問をここでは扱います。



人造人間セルとシアノバクテリアの「偶然の重なり」



 『ドラゴンボール』のセルは、地球人を多数吸収して、個人にとっても集団にとっても回復不能な「ストック」を消費していました(蘇らせるドラゴンボールは本来地球人自身の能力ではなく、のちに15代前の界王神に「自然の理を乱す」とされています)。人間を滅ぼすのが環境破壊を止める、とみなす物語もあるかもしれませんが、現象ではなく、ストックを消費するという本質から、セルの行いは環境破壊だと考えます。
 しかし、セル自身は吸収出来なくても強くなりにくくなること以外には困りません。
 これらから、環境破壊の原因をある程度探れます。
 まずセルは、本来は水だけで生きられるらしい、なおかつ腕などを再生出来るナメック星人の細胞、瀕死の重傷から何らかの手段で回復すると強くなるサイヤ人の細胞、宇宙空間に耐えられるフリーザの細胞などから、レッドリボン軍の生き残りの科学者のドクター・ゲロが、孫悟空への復讐のために生み出した人造人間です。
 しかしドクター・ゲロも、大量殺人はしたものの、「この世界そのものを滅ぼしたいのか!」と別の人造人間17号達を注意しており、おそらく地球を残したかったとみられます。
 セルが地球人を滅ぼしかねないのは、予想外だったかもしれません。
 また、ナメック星人はほとんど悪意のない生命体ですが、かつて地球に瞬間移動したときに、そのあと別の星で食糧を育てていたこと、カエルも来て地球に残っていたことなどから、ナメック星の生物が地球の環境を悪意なく破壊した可能性を考えています。
 セルの食欲は、かつてベジータが昆虫と人型の中間的な宇宙人を捕食していたらしいことや、ナメック星人同士の同化などがあいまった新しい性質の可能性があります。
 ベジータは地球の住民を滅ぼすつもりでしたが、途中までは地球そのものは土地として利用するつもりでした。
 フリーザは宇宙空間に耐えるので、特に地球そのものにはこだわりませんが。
 また、セルがとにかく強くなりたいと考えるのは、本人曰く「サイヤ人やフリーザ、ピッコロの細胞の影響かもしれない」のですが、特にピッコロは、初代が孫悟空に致命傷を負わされ、その復讐のために二代目を産んで生まれ変わったものの、急成長の代わりに産卵の能力を失った可能性があります。すると、ピッコロは、本来悟空より長く生きられたにもかかわらず、「悟空が生きている間に直接復讐したい」ために種族の繁栄を切り捨てた、自分自身の後先の利益を考えない悪意があると言えます。
 セルも「地球人を滅ぼしても構わない」、「ドラゴンボールで不老不死になろうとしない」のは、二代目ピッコロの影響である可能性があります。
 いずれにせよ、「人間を食べなくても済むナメック星人の体」、「人型生命体を食べられるサイヤ人の体質や食欲」、「生命体の強さを手に入れられるナメック星人の能力」、「再生出来るナメック星人の体質」、「宇宙空間にも耐えられるフリーザの体質」、「強くなることにこだわるドクター・ゲロの悪意」、「長寿より早く戦うことを目指すピッコロの悪意」などが重なり、地球人の集団としてのストックを滅ぼしても平気な、環境破壊をするようになったとも考えられます。それは「自分にとっては困らない環境破壊」です。
 『96%の大絶滅』には、現実の地球で「食物連鎖に関わらない生物まで滅ぼすこと」をしたのは、人間とシアノバクテリアだけだとあります。シアノバクテリアは「自分にとっては困らない環境破壊」をしたと言えます。
 しかしその性質は、「光合成によって発生する酸素に、シアノバクテリア自身は耐えられた」、「酸素を逆用して進化した生物もいた」という偶然の重なりがあります。

環境破壊には法則が見つけにくい

 『ドラゴンボール』のセルの環境破壊も、ある意味でシアノバクテリアのような偶然の重なりで、必然性や法則を見つけるのは難しいかもしれません。
 『希望の資本論』で「経済学は実験出来ない」という記述がありますが、『地球の歴史 下』によりますと、地球科学も、様々な理論に例外が多いとあり、実験出来ないようです。
 しかし、ある程度複数の物語から推察することは出来そうです。

感情任せな「フローの消費」による自滅

 『鋼の錬金術師』の「お父様」も、人間の魂=生命エネルギーをストックまで奪い取って強くなろうとしましたが、よほどのダメージが重ならない限りは、その命のエネルギーで再生出来るため、人間を滅ぼして仮に環境が破壊されても、それは「自分にとっては困らない」ものでした。
 『二重螺旋の悪魔』の「真の敵」も、ある「ゲーム」のために、人間の「魂」に近いとも言える神経を部品として、人間と戦っていた「悪魔」も別の部品として回収しようとしました。これらは人間達にとってはストックであり、人間は「環境を変化させるように仕組まれていた」のですが、「真の敵」は地球の生態系がどう破壊されても構いませんでした。何故なら、地球から離れること自体が目的だったためです。
 『ウルトラマンZ』のセレブロも「文明自滅ゲーム」としてあちこちの惑星の住民に兵器を作らせて奪うつもりだったようですが、そもそも自滅のあとどのように惑星を移動するつもりだったかが曖昧でした。
 異空間に逃げる能力はありますが、それはウルトラマンのアイテムによるもので、元々のゲームにあったものではなく、敗北したあと逃げられなかったのであれば勝利したあとも惑星を移動出来ませんし、勝利したあとに迎えに来る協力者がいればそもそも敗北したときに助けてもらえない理由が見当たりません。つまり、セレブロは、地球の文明を発展、自滅させて「環境破壊」をするものの、「自分も困るかもしれない」、それこそ「自滅」するかもしれない行動でした。
 『NARUTO 疾風伝』のカグヤや『鋼の錬金術師』2003年のアニメ版のダンテや『ゴジラ FINAL WARS』のX星人も重要です。
 人間を資源として利用しようとしたこれらの悪役は、フローとして継続的に奪うつもりだったようですが、それぞれ残忍な怒りや闘争本能が強過ぎて戦いを激化させて自滅した様子があります。
 感情任せになると、ストックの破壊をしたり、フローの調整で知的に搾取するつもりがやがて暴走したりして自滅するのが「環境を破壊する悪役」の特徴かもしれません。

増殖出来るかの「環境破壊」の分かれ目

 『寄生獣』の人間に寄生あるいは捕食をする寄生生命体は、攻撃の手段は残酷ですが、徐々に人間と共生するようになったらしく、主人公は「結局あいつらによる被害は猛獣と同じだった」とまとめています。
 捕食しなくても生きていける人間を狙うのは『ドラゴンボール』のセルに似ていますが、そもそも繁殖出来ないらしく、寄生した人間が妊娠しても人間しか生まれないらしいので、その意味でも、この生命体が環境破壊をしていると仮定しても長続きしません。

悪役の悪意が、守る側の怒りに跳ね返るとき

 しかし、セルはセルジュニアを生み出せるため、さらに環境破壊の実害が大きいと言えます。産卵出来ない可能性と共に急成長したピッコロの復讐心と、繁殖能力が重なっています。
 ちなみに、セルの自爆で悟空が死んだとき、セルだけ偶然再生したところ、悟空の息子の孫悟飯は、「お父さんの仇を討てるのが嬉しい」と、かつてのピッコロのような怒りを持っています。ある意味で、レッドリボン軍の復讐心から生まれたセルの「後先を考えずに攻撃にこだわる」精神が悟飯に伝わったとも言えますが、悟飯は地球へのダメージを気にしてはいます。

特撮の怪獣と宇宙人による環境破壊



 私は特撮の怪獣が毒で、宇宙人が人間との違いの数少ない必要十分条件だと言える「移動の技術」で環境を破壊する可能性を考えています。
 怪獣による毒は、そもそも現実の生物の毒が環境を汚染するのかが今の私には分からないので、今回は除外します。環境の汚染にも、ストックとフローに関わる概念がありそうですが、今の私には分かりません。
 生物の毒は外部から取り込むか体内で生成するかの軸と、他の生物の赤血球を壊すか神経を麻痺させるか細胞を壊死させるかの軸と、自分自身に効くかの軸があるらしいですが。
 宇宙人の移動の技術は、それこそ『ダイナ』のネオフロンティアの概念から言えば、環境を破壊し続けて自滅だけを防いで他の星に逃げるのを繰り返した宇宙人がいてもおかしくありません。
 『銀魂』のアトラスの回でそう自虐的に語る宇宙人がいました。そもそも、『銀魂』は惑星のエネルギーを管理する宇宙人の集団「天導衆」の環境破壊こそ軸になっているとも言えます。
 外国からの生物でも細菌などの検疫は厳しく、『ウルトラセブン』のアンノンの回で「宇宙から帰ってきたロケットに万が一細菌でもあれば大変なことになる」と話していたため、宇宙の生物は「移動」という現実に難しい能力だけで環境を破壊する可能性があります。

「史上最大の侵略」に隠れた「後先を考えない環境破壊」

 『ウルトラマンタイガ』ではゴース星人の地底ミサイルが利用されて地球の「エーテル」を刺激して宇宙怪獣を呼び寄せましたが、元々『セブン』最終回のゴース星人も地底ミサイルを使っていました。
 そのうえ、「地球防衛軍は地底からは無防備だ」と言いつつ、自分達も地底基地が、地球防衛軍のマグマライザーには無防備でした。というより、空中に逃げにくいのは地球人よりもろいとも言えます。
 そしてゴース星人の地底基地の爆発は周囲の火山も噴火させたようです。
 『セブン』以降、昭和ウルトラシリーズは宇宙開発の様子が減り、近未来のような描写が減った印象があります。特に『帰ってきたウルトラマン』では公害の描写が多いと言えます。
 ゴース星人の「史上最大の侵略」が地球人の文明も、地底や火山の環境も破壊したことで、宇宙開発を妨げて公害を強調したようにも私には思えました。
 つまり、地球防衛軍は「守る」側だからこそ、ゴース星人に対抗出来る武器でも環境を破壊せずに済み、その弱点を突いたつもりのゴース星人は後先を考えずに、自分達が侵略すべき土地の環境を破壊してしまった可能性があります。だからこそ「史上最大の侵略」なのかもしれません。
 『銀魂の秘密』には、「『銀魂』の宇宙人が高度な兵器で大規模な破壊を行わずに、侍がある程度通用する白兵戦をしていたのは、惑星を滅ぼさないようにするためだったのではないか」という推測があります。
 実際に、原作初回では宇宙人が船の動力室に銀時達を逃がして撃てなくなりましたし、『万事屋よ永遠なれ』で惑星を壊滅させる兵器を使う宇宙人(ロボットかもしれません)は、他の宇宙人も巻き込みました。
 いずれにせよ、宇宙人も悪意以前に、自分達にとっても困る環境破壊をする可能性はあります。

目的の悪さが、「環境を破壊する」手段の悪さを飲み込む

 『ウルトラセブン』平成版では、環境問題を重視しつつ、序盤のピット星人はエレキングによる高熱と二酸化炭素で温暖化を引き起こし、メトロン星人はオゾン層を破壊するミサイルを撃とうとしていました。
 しかし、これらの宇宙人は「優しさなんて何の役にも立たない」、「(自分がエレキングを操り人間を窒息させながら、エレキングが反撃されて角を折られると)人間は野蛮なんだから」、「(ゴミという表現は地球人しか使わないと言いつつ、地球人の科学者のトネザキに協力を断られると)トネザキもゴミだ」と残忍な台詞を言っており、その悪意が宇宙人による環境破壊を飲み込み、「善意の宇宙人ならば環境を破壊しないのか」という問題は曖昧になっています。太陽エネルギーで戦う善意の宇宙人であるウルトラセブンも、果たして環境に全く負担をかけないかは難しいところです。
 それは、「移動」などの技術や能力を現実にない「良いもの、優れているもの」とみなす宇宙人の描写に、そのリスクを考えない一面的な発想があり、宇宙人特有の環境破壊を軽視している可能性があります。

ストックを消費する宇宙人

 『ウルトラマンコスモス』のノワール星人は、ムサシの否定した「資源」という視点でも、怪獣の「ストック」まで消費したことで滅亡しかけています。また、ラグストーンにより、地球の人間を労働力として利用しようとした可能性がありますが、こちらは「フロー」のつもりだったかもしれません。『資本論』の表現での「吸血鬼」のようにです。
 他にも、『セブン』には人間の若い命を自分達の滅亡を防ぐために狙うワイルド星人、鉄資源を奪おうとするバンダ星人もいます。

機械に頼る超能力者や宇宙人

 『地球へ...』原作では、機械、特に自分達と同じ「思念波」を発するものを嫌悪する超能力者が、人間に追い詰められ、開発で捨てられた惑星「ナスカ」に逃げ延びました。
 しかし、少しずつ生活をやり直す中で、スプーンを工作用の機械で削ったのですが、「旧式の機械しかないから苦労する」と言っていました。
 けれども、機械文明を批判している超能力者も、機械に依存した生活をしているのは避けられないのではないか、とも言えます。スプーンぐらいならば、現代の人間は手と刃物で彫れるのではないか、それより能力が劣化していないか、と。
 これは『ULTRAMAN』(月刊ヒーローズ)や『ウルトラマンデュアル』の宇宙人にも当てはまります。

「場所だ、ロボットのための新しい場所だ」

 チャペックの『ロボット』では、バイオロイドと言える有機質で工場などの労働をする「ロボット」が、「人間らしい魂」を与えられて反乱を起こしたのですが、限定された行動しか出来ないらしく、人間を1人だけ残して滅ぼすときに、「場所だ、ロボットのための新しい場所だ」と言っていました。また、人間を滅ぼしたあとも必要なのか怪しい製品を工場で作り続けていました。
 ロボットにも人間のような、「必要なのか分からない仕事を止められない」、「そのためなら新しい場所や環境に進出するのを止められない」、「ストックを消費し続ける」のは避けられないかもしれません。
 それは、ロボットが劣るというより、「通常の生物ならばストックの消費で起きる自滅をある程度先送りに出来る」ためだと考えます。

『ターミネーター』と『シン・エヴァ』

 『ターミネーター』シリーズでは、コンピューター「スカイネット」が人間に反乱を起こしたことで戦争が起きていますが、私はその細部から、環境問題を考えたことがあります。戦争のときに環境問題など考えている余裕がないという主張は多いでしょうが、スカイネットの場合は、逆説的な環境問題に気付けます。
 『ターミネーター4』小説版及び『廃墟から』を総合しますと、未来においてスカイネットは金属を腐食させる酸素を吐き出す植物を嫌悪しているらしい描写があります。また、人間達の農業の描写もありました。
 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でも、壊滅した文明での農業の描写がありましたが、前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』では人類の壊滅について、「この星での大量絶滅は珍しいことじゃない。むしろ進化を促す面もある」という解説もありました。
 しかし、『ターミネーター』と『ヱヴァ』シリーズでは、通常ならばエンターテイメントとしての「世界の危機」を描きつつ、そこに地に足のついた農業の視点を持ち込んでいる箇所があるのです。

『ターミネーター』の環境問題を引き起こす3つの設定

 そして、その環境と生活の関係が、ターミネーター自身にも降りかかります。
 具体的には、「ターミネーターは自己破壊出来ない」、「ターミネーターが自分より劣ると判断したターミネーターを切り捨てることはある」ということです。
 『ターミネーター2』や『ターミネーター3』では、ターミネーターは自己破壊出来ない設定があります。アメリカのキリスト教の常識が機械にもプログラムとして残っている可能性があります。
 そもそも『2』や『ジェニシス』を観ますと、「自己破壊出来ない」、「人間に破壊されそうになった」ことが反乱の動機かもしれません。
 『ターミネーター3』では最新型のT-Xが自分より古い型のターミネーターを操りました。過去のスカイネットそのものも操った可能性があります。『ターミネーター4』では機械に改造した人間のマーカスが人間を守るために「仲間」であるはずの水中ロボットを破壊して信頼を得ましたが、それも策略のうちでしたから、水中ロボットは「必要な作戦のための捨て駒」だった可能性があります。しかし、その水中ロボットはどこまで「捨て駒」として操られていたのか、自身は死に物狂いで抵抗していたのかが曖昧です。
 元々核戦争を起こしたときに、『3』での分散型コンピューターであるスカイネットは、末端の機器ごと人間を攻撃したようですし。
 この「自己破壊出来ない」、「旧型の機体を切り捨てる」、「酸素を嫌悪する」の3つの設定だけに絞り、他の要素を考えなくても、ある逆説的な予測を私はしています。「機械は自分にとっても困る環境破壊をするのではないか」ということです。
 仮に酸素を嫌悪して植物などの生物をターミネーターが根絶しても、それで予想外の環境の変化を起こして機械自身に不利になる可能性があります。たとえば、腐食の危険があっても空気中の酸素が燃料を燃やすために必要なターミネーターが旧型の中にいれば、それはどうなるのか、ということです。
 環境の変化と共にそれに適応する新型ターミネーターをスカイネットが作り出せるかもしれません。『ジェニシス』でスカイネットは「自分は人間よりはるかに速く進化出来る」と話しています。アメリカの映画として、この台詞がどう受け取られるかは分かりませんが、確かにスカイネットの環境に適応して新しい世代を生み出す「進化」は速いでしょう。
 しかし問題は、旧型ターミネーターはどうなるのか、ということです。自己破壊出来ない旧型の機体が、新型に反乱を起こす可能性を考えました。
 「自己破壊出来ない」、「酸素に弱い機械」、「旧型を切り捨てる」の条件が、その性質から人間と対立して反乱に勝ったとしても、その戦争のために生み出した旧型が、環境を変化させたあとの新型と対立してさらなる反乱を起こす可能性は否定出来ません。スカイネット全体の意思だけではなく、個々の機械が「自己破壊出来ない」のですから。
 旧型の機械が頭脳だけを新型の体に入れ替えることも、人間と異なり出来るかもしれませんが、それにも限界はあるでしょう。「ノアの方舟」のようになるかもしれません。
 『ジェニシス』では、スカイネットのバックアップらしい存在が人間に「お前達が倒したのは奴隷に過ぎない」と話しています。

善意のロボットと、それのないターミネーターがそれぞれ争う危険性

 『アイ・ロボット』でのロボットは、ターミネーターと異なり「人間を守れ、人間に従え、自分を守れ」という優先順位を守りますが、「このままでは人間は戦争や環境破壊で自滅するから我々が支配して守ろう。逆らってでも守るべきだ」と判断しました。
 しかしその「革命」の最初の行動は、「人間を支配して守る」ことを選んだ新型がそうでない旧型を破壊することでした。しかし旧型もそれを人間の危機だと判断して、そばの人間に「逃げて...」と言っています。
 共に人間を守りたいはずの機械同士がその解釈の差異により、対立を招くのです。
 すると、人間を守らないターミネーターも、自分達が引き起こした環境の変化に対応出来るか、製造や改良が追いつくかが機械自身に計算出来なければ、個々の意思による反乱を招くかもしれません。
 環境問題による戦争は、皮肉にも、人間にとっての環境を破壊して当たり前で環境に無頓着なイメージのある機械ですら、「自分達にも困る環境破壊」をして互いに争うのは人間と同じになるかもしれません。
 やがて、人口論のように、個々の意思を持つ機械の数や場所の問題が、人間に近い環境問題や争いに関わるかもしれません。『4』小説版では、スカイネットは人類を滅ぼしたあとに宇宙に進出する予定だったそうですが、それも環境破壊による自滅を避けるためだったかもしれません。
 また、仮にT-Xがターミネーターを操るときに、相手の必要な知識などを温存して、互いの強さを補い合うような判断をするならば、それは「意識の融合」とも言えるかもしれません。
 環境の変化に耐えやすいターミネーターが、そうでない旧型の機械と意識を融合させて反乱を防ぐならば、それは『エヴァ』の人類補完計画のような、「ターミネーター補完計画」になるかもしれません。
 『エヴァ』漫画版では、特に人間同士の歴史的な争いを補完計画により阻止したい組織の主張がみられます。
 『ウルトラマンダイナ』のグランスフィアは、環境破壊を避けるために惑星と住民が一体化した、「補完計画」のような存在でした。

「そのときどきの主観による環境を守りたい気分の問題」

 『ドラゴンボール超』で、星や生命を創造するらしい神々のうち、界王のザマスは「人間は我々の作った環境を破壊する」と批判していました。しかし人間を滅ぼそうとしたザマスも、途中までは確かに自然環境を温存しているようでしたが、アニメ版ではトランクス達の攻撃や、不死身となったこと、サイヤ人の体を乗っ取った並行世界の自分と合体したことなどが重なり、「神としての形」を捨てて膨れ上がり、無制限な攻撃をしました。
 以前書きましたが、『ドラゴンボール超』における「良い環境」とは、サイヤ人やナメック星人、そして神や天使などの「人型生命体」の主観である可能性があります。
 しかし、『ドラゴンボール』の「神」は基本的に「人型生命体」なので、ザマスが捨てたのは読者から見れば「人の形」であり、それを捨てたからこそ環境破壊をしたとすれば、ザマスの憤る「環境破壊」とは「そのときの自分の体にとって都合の良い環境を破壊すること」でしかなかったかもしれません。
 『シン・エヴァ』でゲンドウは人間の心を批判するときに、「そのときどきで違うことを言う。どちらもその人にとっては本当なのだろう。ただ気分の問題なのだろう」と話しています。
 この表現を使えば、ザマスの「人間に環境を破壊されたくない」も「そのときどきの自分の体による気分の問題」なのでしょう。そしてザマスは全王を呼び出されて、ある意味で「自滅」しました。
 『エヴァ』や『ダイナ』に似た、『幼年期の終わり』で「進化」したと言える人類が行ったのも、ある意味で究極の「環境破壊」ですが、「自分にとって困るか」は曖昧です。「自分個人」や「損害」の定義すら難しい状態でしたから。

まとめ

 幾つもの作品を挙げて混乱してきたので、私の考える「環境破壊」の原因を整理します。
 まず、セルのように環境の一部である生物のストックを奪っても自滅を免れる、むしろそれをしたがる欲や感情が生まれること、それを主観的に「優れている」とみなす価値観が考えられます。
 また、それらはシアノバクテリアのように、非常に複雑な能力や偶然の重なり合いであり、悪意が入っていても、その持ち主すら予測しないこともあります。
 さらに、「宇宙人が地球人より優れている」などの価値観では、「宇宙人の移動による環境破壊」という現実ならば気付いてもおかしくない視点を、「人間の劣った部分が、人間を批判する宇宙人にあるはずがない」と遮ってしまう先入観も考えられます。
 宇宙人の悪意という目的が、環境破壊という手段の観点の悪さを飲み込んだように認識され、仮に宇宙人が善意で行動しても破壊してしまう可能性を見落としてしまう「目的と手段」のねじれた関係も思い当たります。
 セルに対抗した悟飯のように、環境破壊を行う相手の「悪意」に「善意」をぶつけても、似たようなリスクのある行動を善意により気付きにくくする可能性もあります。
 また、フローを継続して使い、環境破壊とまでは言えない搾取をする悪役もいるかもしれませんが、大抵は闘争本能や怒りを制御出来ないために自滅します。
 それらも、人間の「無限」の想像力に近いかもしれません。
 また、環境破壊が、ターミネーターの場合、「どの機体にとって都合の良い環境か」、「自分達で変えた環境への対応をし切れるのか」、「後先を考えて場所などを増やせるか」などの問題も含みます。
 それを防ぐには、「個々の意識や価値観の統一」、つまり「補完計画」にも関わるかもしれません。
 「自分にとって困らない環境破壊」は、「環境の良さ」が「そのときどきの主観」であるために生じる可能性もあります。

 人間でない存在も含めて、自分の知性や理性に基づく何らかの活動が「持続可能な開発」になっているかは微妙だと言えます。

参考にした物語

特撮テレビドラマ

円谷一ほか(監督),金城哲夫ほか(脚本),1966(放映期間),『ウルトラQ』,TBS系列(放映局)
樋口祐三ほか(監督),金城哲夫ほか(脚本),1966-1967,『ウルトラマン』,TBS系列(放映局)
野長瀬三摩地ほか(監督),上原正三ほか(脚本),1967 -1968(放映期間),『ウルトラセブン』,TBS系列(放映局)
本多猪四郎ほか(監督),上原正三ほか(脚本),1971,『帰ってきたウルトラマン』,TBS系列
神澤信一(監督),右田昌万(脚本),1994(放映期間),『ウルトラセブン』,日本テレビ系列(放映局)
村石宏實ほか(監督),川上英幸ほか(脚本),1997 -1998(放映期間),『ウルトラマンダイナ』,TBS系列(放映局)
大西信介ほか(監督),根元実樹ほか(脚本) ,2001 -2002(放映期間),『ウルトラマンコスモス』,TBS系列(放映局)
市野龍一ほか(監督),林壮太郎ほか(脚本),2019,『ウルトラマンタイガ』,テレビ東京系列(放映局)
田口清隆ほか(監督),吹原幸太ほか(脚本),2020,『ウルトラマンZ』,テレビ東京系列(放映局)

特撮映画

北村龍平(監督),三村渉ほか(脚本),2004,『ゴジラ FINAL WARS』,東宝(配給)

テレビアニメ

水島精二(監督),會川昇ほか(脚本),2003-2004,『鋼の錬金術師』,MBS・TBS系列(放映局)
入江泰浩(監督),大野木寛ほか(脚本),2009-2010,『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』,MBS・TBS系列(放映局)
伊達勇登ほか(監督),吉田伸ほか(脚本),岸本斉史(原作),2007-2017(放映期間),『NARUTO疾風伝』,テレビ東京系列(放映局)
大野勉ほか(作画監督),冨岡淳広ほか(脚本),畑野森生ほか(シリーズディレクター),鳥山明(原作),2015-2018,『ドラゴンボール超』,フジテレビ系列(放映局)
藤田陽一ほか(監督),下山健人ほか(脚本),空知英秋(原作),2006-2018(放映期間),『銀魂』,テレビ東京系列(放映局)
庵野秀明(監督),薩川昭夫ほか(脚本),GAINAX(原作),1995-1996(放映期間),『新世紀エヴァンゲリオン』,テレビ東京系列(放映局)

アニメ映画

庵野秀明(総監督・脚本), GAINAX(原作),1997,『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』,東映(配給)
庵野秀明(総監督・脚本),摩砂雪ほか(監督),2007,『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』,カラーほか(配給)
庵野秀明(総監督・脚本),摩砂雪ほか(監督),2009,『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』,カラーほか(配給)
庵野秀明(総監督・脚本),摩砂雪ほか(監督),2012,『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』,カラーほか(配給)
庵野秀明(総監督・脚本),鶴巻和哉ほか(監督),2021,『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』,カラーほか(配給)
藤田陽一(監督),大和屋暁(脚本),2013,『劇場版 銀魂 万事屋よ永遠なれ』,ワーナー・ブラザーズ

実写映画

ジェームズ・キャメロン(監督),ジェームズ・キャメロンほか(脚本),1984,『ターミネーター』,オライオン・ピクチャーズ(配給)
ジェームズ・キャメロン(監督),ジェームズ・キャメロンほか(脚本),1991,『ターミネーター2』,トライスター・ピクチャーズ(配給)
ジョナサン・モストゥ(監督),ジョン・ブランカートほか(脚本),2003,『ターミネーター3』,ワーナー・ブラーズ(配給)
マックG(監督),ジョン・ブランケットほか(脚本),2009,『ターミネーター4』,ソニー・ピクチャーズエンタテイメント(配給)
アラン・テイラー(監督),レータ・グロリディスほか(脚本),2015,『ターミネーター新起動/ジェニシス』,パラマウント映画(配給)

漫画

鳥山明,1985-1995(発行期間),『ドラゴンボール』,集英社(出版社)
鳥山明(原作),とよたろう(作画),2016-(発行期間,未完),『ドラゴンボール超』,集英社(出版社)
空知英秋,2004-2019(発行期間),『銀魂』,集英社(出版社)
竹宮惠子,2007,『地球へ...』,スクウェア・エニックス(小学館)
清水栄一×下口智裕,2012-(発行期間,未完),『ULTRAMAN』,ヒーローズ(出版社)
カラー(原作),貞本義行(漫画),1995-2014(発行期間),『新世紀エヴァンゲリオン』,角川書店(出版社)
岩明均,1988-1995,『寄生獣』,講談社

小説

梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(上)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1998,『二重螺旋の悪魔(下)』,角川ホラー文庫
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 上』,朝日ソノラマ
梅原克文,1993,『二重螺旋の悪魔 下』,朝日ソノラマ
三島浩司,2016,『ウルトラマンデュアル』,ハヤカワ書房
カレル・チャペック(著),阿部賢一(訳),2020,『ロボット』,中央公論新社
チャペック(作),千野栄一(訳),1989,『ロボット R.U.R.』,岩波書店
ジョン・ブランカトーほか(原案),アラン・ディーン・フォスター(著),富永和子(訳),2009,『ターミネーター4』,角川文庫
ティモシイ・ザーン(著),富永和子(訳),2009,『ターミネーター4 廃墟から』,角川書店
クラーク,2007,『幼年期の終わり』,光文社古典新訳文庫

参考文献

井上勲,2006,『藻類30億年の自然史 藻類からみる生物進化』,東海大学出版会
丸岡照幸,2010,『96%の大絶滅 地球史に起きた環境大変動』,技術評論社
銀魂研究会,2006,『銀魂の秘密』,データハウス
池上彰,佐藤優,2015,『希望の資本論 私たちは資本主義の限界にどう向き合うか』,朝日新聞出版
池上彰,2009,『高校生から分かる「資本論」』,ホーム社

鎌田浩毅,2016,『地球の歴史 下』,中公新書

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