原油

【4/26】中東に吹く風、サウジアラビア石油依存脱却で投資国家目指す

サウジアラビアのムハンマド副皇太子は昨年の即位後初となる国民向けテレビインタビューで、野心的な経済改革構想「ビジョン2030」を発表しました。

その内容は今までの中東諸国では考えられない革新的な内容でした。


■投資収益を新たな収入源

サウジは原油収入への依存から脱却する必要があると訴え、投資収益を新たな収入源に育てる考えを示しました。

その上で「2020年には原油がなくても生き残れると思う」と述べた。


■投資資金は公的基金とIPO調達資金

副皇太子は公的投資基金(PIF)の資本を6000億リヤル(1600億ドル)から7兆リヤル(2兆ドル)に引き上げると表明しました。

予定している国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)調達資金を元手に、今後はPIFがサウジの海外投資の中核的役割を担うとの考えを示しました。

副皇太子はアラムコのIPOで、株式の最大5%を売却する考えを表明しました。

アラムコはサウジの巨大な原油埋蔵量の権利を握っており、副皇太子は1%の株式売却でも世界最大のIPOとなると述べています。

産油量が日量1200万バレルを超えるアラムコは、世界の原油埋蔵量の18%に独占的にアクセスすることが可能であり、世界の投資家の注目を集めています。

資金調達はそう難しくないでしょう。


■今回の改革の背景

サウジの財政方針や経済構造をめぐっては、原油価格が急落し始める2014年以前から持続不可能との指摘がエコノミストらから上がっていましたが、長引く原油安により経済立て直しが喫緊の課題となっています。

そんななか、今後は投資国家として原油依存から脱却していこうとしているようです。


■進む近代化

改革案ではさらに、女性の労働参加の拡大を目指すほか、外国人による長期的な労働・滞在を可能するグリーンカード制度を5年以内に打ち出すことも盛り込んでいます。

中東諸国は政治も労働国教であるイスラム教に基づいていますが、今回の改革は中東が近代化する先駆けとなりそうです。


■中東は新たなマーケットとなるか

かつては発展途上国と呼ばれていた国々が近年目覚ましい経済成長を遂げています。

その筆頭が東南アジアです。

シンガポールをはじめ、タイやベトナム、ミャンマーといった国々の経済成長には目を見張るものがあります。

先進国のグローバル企業はこれらの国々にこぞって投資をしています。

その波はインド、そしてアフリカにもきています。

その中でもアフリカは人工的にも潜在的成長力が高く、次のマーケットとして有望しされています。

これらの国々はいずれも近代化しています。

サウジの今回の改革は中東近代化の先駆けとなるかもしれません。

中東諸国はサウジをはじめ、アラブ首長国連邦、とりわけドバイなど、十分に発展している国もありますが、前述したようにイスラム教に基づいた労働環境、そしてテロなどの地政学リスクからなかなか世界から有望視されませんでした。

今回のサウジの改革は中東が次のマーケットの主役となる息吹なのかもしれません。

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