中国関連株下落、新型コロナウィルス感染鈍感も経済影響に懸念

18日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落している。15時現在は前営業日の14日に比べ149ドル40セント安の2万9248ドル68セント(速報値)で推移している。
17日に新型肺炎の影響で1~3月期の売上高予想を達成できないと発表したスマートフォンのアップルが下げ、半導体関連株にも連想売りが広がった。アップルと同様に中国売上高が大きい銘柄も下げが目立った。

中国関連株が軒並み下落

中国の通信大手、華為技術(ファーウェイ)について「取引がある米企業に対して米政府が輸入規制の拡大を検討している」との報道も半導体株の重荷となった。
アップル株は朝方に一時3%強下げたが、新型肺炎の影響は一時的とみた買いも入り、その後はやや下げ渋っている。
中国事業の比率が高い化学のダウ、スポーツ用品のナイキが安い。
債券市場では米長期金利が低下し、10年債利回りが3月物利回りを下回る「逆イールド」が再び発生した。利ざや縮小の観測からゴールドマン・サックスなど金融株の下げも目立つ。一方、ウォルマートは四半期決算と同時にネット通販の採算改善見通しを示し、2%弱上げている。
ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は小幅ながら続伸し、14日に付けた過去最高値を上回って推移している。マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックなど主力株が高い。

感染者2000人を割る、1月30日以来

中国の保健当局者らによると、中国本土での新型コロナウイルスによる肺炎は、新たな感染者の数が1月30日以来初めて2000人を割り込んだ。しかし海外の専門家は、感染の封じ込めに成功したと判断するのは時期尚早とし、依然として慎重な姿勢を崩していない。

国家衛生健康委員会は18日、中国本土での新型肺炎の死者が17日時点で新たに98人増え、1868人になったと明らかにした。感染者は1886人増加し、累計7万2436人となった。

経済に既に影響

人の移動に対する厳しい規制が奏功し、流行の中心地である湖北省以外では感染拡大に鈍化傾向がみられるが、中国経済や世界の企業への打撃は大きい。

米アップル(AAPL.O)は17日、新型肺炎の流行が中国での同社製品の生産と需要の両方に影響を与えているため、1─3月期の売上高が会社予想に届かない見通しと発表。中国での同社製品の生産拠点は再稼働したものの、想定よりも生産の立ち上がり遅いと説明した。
中国での生産拠点がフル稼働に達していないため、スマートフォン「iPhone」の供給が「一時的に制約を受ける」見通しとし「iPhoneの供給制約が、世界中で売上高に一時的に影響する」との見方を示した。

野村のアナリストは、中国の第1・四半期の経済成長率予想を再び引き下げ、昨年第4・四半期の半分に当たる3%とした上で、成長が一段と鈍化するリスクもあると警告した。
17日付の調査リポートの中で、中国経済は既にあまりにも大きなダメージを受けており、当初の刺激策はあまり効果が出ないだろうと指摘。
中国は需要と供給の両面が同時にショックを受けるという、珍しいケースを経験しているとした。

韓国の文在寅大統領は18日、新型コロナウイルスの感染拡大で経済は緊急事態にあるとの認識を示し、政府は景気支援に向け全力を尽くすべきだと述べた。

香港政府は、新型ウイルス流行を受けて先に発表した景気対策の規模を総額250億香港ドルから280億香港ドル(36億ドル)に拡大すると表明した。
中国の国有資産監督管理委員会の高官は18日会見し、新型コロナウイルスの感染拡大について、国内の様々な産業への影響は主に2月に表れるとの見通しを示した。

感染拡大鈍感も慎重姿勢

中国の当局者は、新たな感染者の発生が落ち着いていることについて、感染阻止に向けた措置が効果を上げているサインだとみている。
中国本土での新たな感染者数は1月30日以降、2000人を割ったことがなかった。また、1日当たりの死者数も2月11日以降、100人を割り込んでいなかった。
中国以外では、26カ国・地域で827人の感染者、5人の死者が確認されている。
一方、ロンドン・スクール・オブ・ハイジーン・アンド・トロピカル・メディスンで国際公衆衛生を専門とするジミー・ウイットウォース教授は、新型コロナウイルスはなお急速に拡大する力を持っているとし、世界の保健当局は警戒を続けるべきとの見方を示している。
教授は「中国での新たな感染事例の減少が、湖北省での感染ピークを示すものであると考えることは可能だが、そう確信するには時期尚早」と指摘。「他国の保健当局は引き続き警戒姿勢を維持し、すべての感染者を特定して感染拡大を阻止することが肝要だ」と主張した。
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も17日、中国からの最新のデータによると、新型コロナウイルス(COVID─19)の新たな感染者の伸びは鈍化しているものの、今後の展開については「依然としてあらゆるシナリオが考えられる」と述べた。記者団に対して「トレンドの見極めには極めて慎重になる必要がある」とし、この減少傾向が続くとみるには時期尚早と語った。

クルーズ船、自国民を次々退避

横浜港に検疫のため停泊し、新型ウイルスの集団感染が発生しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から退避した300人超の米国人は、派遣されたチャーター機2機でテキサス州とカリフォルニア州の米軍基地に到着した。到着後は全員が2週間にわたり隔離されるという。

退避者のうち14人は直前の検査で陽性反応が出たが、搭乗が許可された。米国務省によると、陽性患者は機内で隔離されたが、それまで約40分間にわたり他の乗客と同じ場所にいたという。このため、60人について健康観察を行うとしている。
同船では約400人に陽性反応が出ており、中国外で確認された感染者の約半数を占める。米国に続いて他の複数の国も自国民を退避させる計画を発表している。乗客乗員約3700人の約半数は日本人。
英国も、乗船している自国民の退避措置に乗り出した。英外務省は声明で「必要な手続きを進めるため、乗船している英国民と連絡を取っている」と表明した。
一方、日本などで入港を拒否され、カンボジアに13日に到着したクルーズ船「ウエステルダム」では、下船後にマレーシアに移動した乗客の米国人から新型コロナウイルスの陽性反応が出た。マレーシア当局が発表した。

総括

新型コロナウィルスによる経済影響について、専門家がネガティブな見解を示し始めてきた。
移動、供給網遮断、工場停止が長期化してきたことによる影響も、企業から発表され始めた。
風が吹けば桶屋が儲かる、ことからここからその影響について企業から発表があるだろう。

これを一時的と見るか、慢性とみるか。

逆イールドが再び発生したことにより、新型コロナウィルスを景気とした世界経済リセッション、というストーリーも浮かんだがこれはさすがに思い過ごしだろう。

SARSのときを思い返せばここからの回復も見込めるが、これに期待したい。

出典

日本経済新聞 2/19 NYダウ149ドル安 アップルや中国関連に売り

ロイター 2/19 新型肺炎、中国本土の新たな感染者減少 専門家は慎重姿勢崩さず