英国のタンカー拿捕と英国の経済状況

英国のハント外相は22日、英国のタンカーが原油輸送の要衝であるホルムズ海峡でイランに拿捕(だほ)されたことを受け、同海峡を航行する船舶の安全確保に向け欧州が主導する態勢の構築を目指すことを明らかにした。

米国に加えて、英国との緊張も高まってきた。

英国、イランに航行を阻害する権利は認められていない

イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRCG)」は19日、英船籍の石油タンカー「ステナ・インペロ」をホルムズ海峡で拿捕。英国が今月初めに、欧州連合(EU)の制裁に違反したとみられるイランの大型石油タンカーを英領ジブラルタル沖で拿捕したことへの報復措置の可能性がある。
ハント外相は議会で「国際法の下で、イランに同タンカーの航行を阻害する権利は認められていない。同タンカーに(イラン当局者が)乗り込む権利も認められていない。このため、今回の事件は国家による海賊行為だった」とし、「この重要な海域で、乗組員と積荷の保護に向け欧州が主導する船舶保護の態勢を構築したい」と述べた。

その上で、過去2日間で英国は数多くの国とこの件に関して建設的な協議を行ったと表明。米国が結成を目指す中東海域を航行する民間船舶を護衛するための有志連合をどのように補完できるか協議する意向も示した。ただ「英国はイラン核合意の保全にコミットしているため、米国が掲げるイランに対し最大の圧力を掛ける政策には加担しない」と述べた。

このほか、政府はすべての英船籍の船舶に対し、ホルムズ海峡を通過する前に政府に連絡するよう要請するとし、連絡を受け政府は「船団を組んで航行するなど、最も安全な航行の方法を助言する」とした。さらに、他国の船籍の船舶でも英国籍の乗組員が乗船している場合にも、安全対策の強化を呼び掛ける方針を示した。

イラン、国際規則を順守、対立望んでいない

イランのザリフ外相は22日、イランは対立を望んでいないとし、西側諸国に対し紛争が引き起こされれば終結は不可能になると警告した。

ニカラグアを訪問中のザリフ外相は、イランは国際規則を順守するために英タンカーを拿捕したとし、ジブラルタル沖で英国がイランのタンカーを拿捕したことに対する報復ではないと説明。「紛争を開始するのは容易だが、終結させるのは不可能だ」とし、「イランは対立を望んでいないということを(次期英首相の有力候補)ボリス・ジョンソン氏を含め誰もが認識することが重要だ」と述べた。
その上で「イランは相互尊重に基づいた正常な関係を望んでいる」と述べた。

英国がおかれている状況

少し話が変わるが、英国は現在国内経済低迷の危機にある。

英国立経済社会研究所(NIESR)は22日公表したリポートで、国内経済が低迷しており、景気後退に陥る確率が25%あるとの見方を示した。
NIESRは、合意なき英国の欧州連合(EU)離脱の可能性が現在、約40%であることを考慮すると、経済成長に対するリスクは「下方向に大きく傾いている」と指摘した。

NIESRはこれまで4─6月期の英経済がマイナス成長に陥るとの予想を示している。第3・四半期も同様にマイナス成長となった場合には金融危機以降で初のリセッション(景気後退)入りとなる。
英予算責任局(OBR)は18日、英国が本格的な景気後退に突入する可能性があると指摘していた。
NIESRの報告書によると、「英国がEUを離脱する予定の10月以降の見通しは非常に不透明で、秩序のない合意なき離脱となった場合は深刻な景気低迷の可能性がある」とし、2019年と20年の成長率見通しを従来の1.4%、1.6%からそれぞれ1.2%、1.1%に引き下げた。

平均的な英EU離脱シナリオに基づくと、英経済が2020年にマイナス成長となる可能性は30%という。
NIESRのディレクター、ジャジット・チャダ氏は記者会見で「合意なき英EU離脱後の数年間において明白な経済成長はない」と述べた。
またNIESRは英国の次期首相が離脱合意に至ったとしても財政面に悪影響を及ぼす可能性があると言及。「合意なき離脱となれば、財政規律の緩みは不可避とみられ、公共セクターの借り入れが国内総生産(GDP)の2%を超え、政府の財政目標を大幅に超過する可能性がある」とした。

合意なき離脱も辞さない

英国の、EUからの合意なき離脱の可能性は高まってきている。

英国のダンカン外務担当閣外相が22日辞任した。次期首相の最有力候補、ボリス・ジョンソン氏の欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」も辞さない姿勢に対する与党・保守党内の強い反発が浮き彫りになった。ダンカン氏はこれまでもジョンソン氏に批判的な立場だった。同氏はツイッター公開した書簡で「英国は欧州で知的にも政治的にも支配的な立場になり得たが、ブレグジット(EU離脱)の暗雲の下で日々を送らざるを得ないのは痛ましい」と表明した。

EUとの合意があってもなくても10月31日までに離脱するとのジョンソン氏の方針に抗議してマーゴット・デジタル・文化・メディア・スポーツ相が先週辞任している。
またハモンド財務相は21日、ジョンソン前外相が首相に就任した場合は辞任するとの意向を示した。

総括

今回は英国にフォーカスして記事もピックアップした。

かつての経済最先進国も、グローバリズムからナショナリズムに変化しつつえる。
というのも、英国がEUを離脱したがっている原因は移民問題にあるからだ。

米国もトランプ大統領に変わってから、米国第一主義というナショナリズムに変化した。

これまでグローバリズムが発展し、先進国の経済成長が一周した今の段階では、そのトレンドが内向きに、ナショナリズムに変わっている。

英国のEU離脱期限は10月31日。
また、波乱の展開となりそうだ。

出典

ロイター 7/23 英、欧州主導で船舶保護へ 有志連合との補完も協議=外相

ロイター 7/23 イランは対立望まず、「紛争終結は不可能」=ザリフ外相

ロイター 7/23 英経済は低迷、景気後退確率25%=国立経済社会研究所

ロイター 7/23 英閣外相が辞任、「合意なき離脱」への保守党内の反発浮き彫り

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