【3/23】テロと株価② -地政学リスク
2016年が始まってから地政学リスクを考えさせられる出来事が昨年に比べて多いと感じています。
■地政学リスクとは
地政学的リスクとは、
ある特定地域が抱える政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりが、地球上の地理的な位置関係により、その特定(関連)地域の経済、あるいは世界経済全体の先行きを不透明にすることをいいます。
地政学リスクは大別して地域紛争とテロの2種類に分けられます。
前者は1月3日のサウジアラビアとイラン国交断絶、1月6日の北朝鮮における核実験(紛争とは違いますが)がこれにあたります。
後者は3月22日に勃発しましたベルギーのテロです。
3カ月で3件も発生しています。
■地政学リスクと株価の動き
1月4日~6日で日経平均は18,818.58円~18,191.32円と3日間で約627円も下落しています。
背景には原油安と中国経済懸念がありましたが、投資家心理を冷え込ます一要因となりました。
ベルギーテロの翌日の日経平均は17,066.27円~17,000.98円と約65円下落しました。
これらのことから9.11のアメリカ同時多発テロのような規模でない限り、地政学リスクだけで株価が大幅に下落することはないことがわかります。
地政学リスクが発生したら投資家心理としては「なんか怖いなー」くらいの感覚で、上値が重い転回に留まります。
しかし、今年初めのサウジアラビアとイラン国交断絶のように、その他の要因(原油安、中国経済)が重なれば一気に下落することになります。
■これからの地政学リスク
現時点で世界に潜む地政学リスクを国別に見ていきましょう。
-ロシア
2015年11月24日、トルコ軍機がロシア軍機を撃墜した事件がありました。
これにより同月30日にロシアはトルコに対して経済制裁を決定、地政学リスクを高めました。
ロシアとトルコの関係が緊張状態ですが、その他にもクリミア編入やウクライナ問題などなかなかの問題児です。
-トルコ
今注目の新興国の一つでEUにも加盟しようとしていますが、そうは簡単にいかなさそうです。
オスマン帝国時代から対立しているギリシャ、そしてキプロスとの関係がEU加盟の障壁となっています。
外交意外にも問題を抱えています。
トルコに住む、国なき民族クルド人の問題が深刻化しています。
昨年トルコはISIL(イスラム国)に対して空爆を行い、ISILと対立する、ように見せかけましたが、実は真の狙いはクルド人の排除です。
トルコとISILは対立関係にありません。
なぜなら、共通の敵であるクルド人が存在するからです。
現大統領であるエルドアンは露骨にクルド人排除に動いています。
その報復として、クルド人によるテロが勃発したのです。
トルコの成長力はすばらしいですが、その裏にはたくさんの血が流れています。
-サウジアラビアとイラン
サウジアラビアもイランも国教はイスラム教ですが多数派の宗派が異なります。
サウジアラビアはスンナ派、イランはシーア派で両派は対立しています。
両国の国交断絶はサウジ政府によるシーア派聖職者ニムル師の処刑と、それに憤ったイラン市民によるサウジ大使館の襲撃です。
今後対立が深刻化すると中東紛争の激化につながります。
-ISIL
国ではありませんが地政学リスクとISILは切っても切り離せない関係です。
ISILはシリアとイラクが現在の勢力範囲ですが、これを拡大するために今日も活動中です。
ISILの最終目的は世界をイスラムの国とすることなのです。
ISIL(イスラム国)と名乗っているのはそのためです。
テロの範囲も広がっています。
難民に乗じて侵入し、フランス、ベルギーといったヨーロッパでテロを行いました。
また、インドネシアでもテロを行い、アジア圏も視野に入れています。
日本へのテロは今のところなさそうですが厳重注意が必要です。
-中国
中国も油断なりません。
中国は内情としてウイグル自治区の独立問題を抱えています。
2009年にウイグル騒動が勃発し、死者100名を超す惨事となりました。
また、2013年にはウイグル人が自動車で天安門に突入し、自爆した事件も発生しています。
中国発のテロの可能性もゼロではありません。
■地政学リスクは予想できない
地政学リスクほど予想できないものはないです。
為替以上に難しいでしょう。
それだけ世界は問題を抱えており、ふとしたときにそれが弾けてしまうのです。
しかし、地政学リスクはそれと向きあう機会かもしれません。
解決できない問題はないと信じ、見守っていきましょう。