【米国市場】ダウ平均は小幅上昇、米景気回復が抗議デモや米中緊張化よりも勝る

米国株式市場は上昇。国内で広がる抗議デモや新型コロナウイルス流行、米中の緊張の高まりを巡る懸念がくすぶるものの、米景気回復の兆候が材料視された。

製造業景気指数の改善が抗議デモと米中緊張化を勝る

フェイスブック(FB.O)、アップル(AAPL.O)、アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)が1─3%高となり、S&P総合500種(.SPX)とナスダック総合(.IXIC)の上昇を主導。ダウ工業株30種(.DJI)ではボーイングが上昇率トップだった。
キングスビュー・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ポール・ノルテ氏は「株式相場の回復はこれまでのようなペースでは続かない」と指摘。これまでの順調さは驚きで、理解が難しいとも述べた。

トランプ大統領は1日、全米で激化している黒人男性暴行死を巡る抗議デモにする各州知事の対応を批判し、より強硬な姿勢で臨むべきとの考えを示した。
ノルテ氏は「大半の投資家は、デモが経済を破壊することにはならないと話している。障害だが、新型コロナ流行ほど大きな問題ではない」と述べた。
暴徒化したデモ隊による略奪などが相次ぎ、小売大手のターゲット(TGT.N)とウォルマート(WMT.N)は前日、各地の店舗を閉鎖したと発表。アマゾンは一部の都市で配送業務を縮小した。

このほか、トランプ大統領が香港に対する優遇措置を撤廃する方針を示したことを受け、中国政府が国有企業に対し米国から大豆と豚肉の輸入を停止するよう指示したことが複数の関係筋の話で分かった。

一方、米供給管理協会(ISM)がこの日公表した5月の製造業景気指数は43.1と、2009年4月以来11年ぶりの低水準を付けた4月の41.5から上昇。各地で事業が再開する中、景気低迷の最悪期を脱した可能性を示した。
今週5日には5月の米雇用統計が公表され、新型コロナによる経済的打撃が新たに示される。失業率は19.7%に悪化すると予想されている。
S&P500の主要11セクターで下落したのはヘルスケア株(.SPXHC)のみ。ファイザー(PFE.N)が7.1%安。乳がん治療薬の後期試験が主要目標に届かなかった。

ギリアド・サイエンシズ(GILD.O)は3.4%下落。新型コロナ感染症患者を対象とした抗ウイルス薬「レムデシビル」の後期治験で、結果がまちまちだったと明らかにした。
ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を3.26対1の比率で上回った。ナスダックでは1.58対1で値上がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は99億5000万株。直近20営業日の平均は113億株。

制裁続けば第1段階の米中通商合意の破棄も

トランプ米大統領が香港に対する優遇措置を撤廃する方針を示したことを受け、中国政府が国有企業に対し米国から大豆と豚肉の輸入を停止するよう指示したことが、複数の中国側の関係筋の話で明らかになった。

一方、米国の貿易関係者らによると、中国の国営企業は1日、大豆類を最低18万トン購入した。出荷は10月か11月の予定で、この時期は米国産大豆が世界中で最も値ごろとなり、米国からの輸出がピークを迎えるという。
ある米国のトレーダーは、中国の輸入業者が10ー11月に必要な大豆の大部分をまだ調達していないとした上で「中国が大豆を必要としていることは確かだ」と述べた。
中国全国人民代表大会(全人代)が5月28日に「香港国家安全法」の制定方針を圧倒的賛成多数で採択したことを受け、トランプ大統領は29日、香港に対する優遇措置を撤廃するよう政権に指示したと明らかにした。

こうした中、複数の関係筋は匿名を条件に、米国産のトウモロコシと綿の大規模な輸入がすでに保留されていることを明らかにし、トランプ政権が追加措置を導入すれば、中国政府は他の米農産品にも対応を拡大させる可能性があると指摘。「中国政府は、香港を巡る米政府の方針に対応し、大豆や豚肉などを含む米国産の主要農産品の大規模な輸入を停止するよう主要国有企業に要請した」と述べた。

その上で、トランプ政権が中国に対し強硬路線を取り続ければ、最悪の場合、第1段階の米中通商合意が破棄される恐れがあるとし、「トランプ大統領が絶え間なく中国を攻撃している時に、中国政府が米国から物品を輸入できるわけはない」と指摘。米中間の緊張の高まりを反映し「貿易はある程度、停止される」との見方を示した。

今日の私見

大統領選挙を控えたトランプ大統領は、
復調をみせる株価と、経済活動再開を最優先としている。
そのため、昨年のような過激な言動も制裁も打ち出せずにいる。

但し、大統領選挙に苦戦すれば話は別だ。
米国の大統領選挙は、昔の話だが、勝つために戦争までする。
また、トランプ大統領が大統領選挙に勝った後に中国に対して更なる制裁を加える可能性もある。
いずれにせよ、米中の関係は悪化していくと予想する。

現在の市場に対するリスクとしては、

・新型コロナウィルス感染拡大の第2波
・米国大統領選挙
・米中対立
・新興国破綻危機

といったところだろう。

これから夏にかけて市場は閑散期に入るため、これによる下落も警戒したい。

出典

ロイター 6/1 米株上昇、景気回復の兆候で 抗議デモやコロナへの懸念続く

ロイター 6/1 中国、米農産品輸入停止を指示 第1段階通商合意破棄も=関係筋