英国EU離脱後の移行期間延長阻止へ

ジョンソン英首相は、欧州連合(EU)離脱後の移行期間について、2020年以降への延長を阻止する法案の成立を目指す。これにより、EUに来年末までの包括的な貿易協定締結を迫る狙いだ。

EUと新たな貿易協定締結に向けた交渉を開始

政府高官は17日、「われわれは政権公約で移行期間を延長しない方針を明確にした。離脱協定法案では、政府が延長に合意することを法的に禁止する」と述べた。
英国は来年1月31日のEU離脱が予定通り実現した場合、その後は移行期間に入り、EUと新たな貿易協定締結に向けた交渉を行う。
この移行期間は現行のルールでは2022年末まで延長が可能だが、延長を阻止する法案が成立すれば、交渉期間は10─11カ月となる。
ジョンソン首相の報道官は「極めて明確な日程に基づき、英国とEUは貿易協定締結に向けた交渉を進めていくことが可能だ」と述べた。

また、報道官によると、ジョンソン首相とフォンデアライエン欧州委員長はこの日電話会議を行い、期日までの貿易協定締結に向けて活力的に取り組んでいく方針で一致した。
英国は可能な限り早期に交渉を開始する考えを示す一方、EU側は3月までに開始したいとしている。

合意できなければ再び崖っぷち

先の英総選挙で与党・保守党が過半数を大きく上回る議席を確保したことから、ジョンソン首相には必要に応じて法を修正する柔軟性がある。しかし、EUはこれまでに、包括的な貿易協定の締結にはより多くの時間を要すると警告しており、ジョンソン氏にはEU側をけん制する狙いがあるとみられる。
EUの通商担当高官のサビーヌ・ウェイアンド氏は「すべてのシグナルを踏まえ、英国が移行期間を延長しない方針を真剣に受け止めることは賢明で、それに備える必要がある」とし、「2020年末までに合意に至らなければ、交渉は再び崖っぷちの状況に陥るだろう」と警鐘を鳴らした。
ウェイアンド氏は、英国のEU離脱後、欧州委は迅速に交渉を開始する用意があり、優先課題は明確と述べた。
ただ、専門家の間からは、1年弱の期間で包括的な貿易協定の交渉を完了させることは困難との指摘も聞かれる。

合意なき離脱を巡る懸念が再燃

この騒動をうけ、合意なき離脱を巡る懸念が再び高まり、英ポンドが急落。
ウエスタンユニオン・ソリューションズのシニア市場アナリスト、ジョー・マニンボ 氏は「英ポンドの圧迫要因となるEU離脱を巡る先行き不透明性が取引の最前線に戻ってきた」と指摘。
TD証券のシニア外為ストラテジスト、マゼン・イサ氏は「選挙前は世論調査の結果を踏まえ、楽観的な見方がポンド相場に織り込まれていた」とし、選挙前に積み上がったポジションの巻き戻しが出ているとの見方を示した。

総括

英国のEU離脱は、これまで市場的に軽視されてきたが、ここに来て注目が集まっている。
米中通商協議が第一段階に達し、矛先が変わってきた可能性もある。

米中貿易戦争ほど世界経済への影響はないと思われるが、世界経済の懸念材料の上位であることは変わらないので、動向を注意したい。

出典

ロイター 12/18 英首相、EU離脱後の移行期間延長阻止へ 貿易協定締結迫る

ロイター 12/18 NY市場サマリー(17日)