貨幣

【5/20】政府と世間のギャップ -110円のとらえ方

4月の日銀金融政策決定会合で追加緩和を見送って以来、円は対米ドルで110円を割れる展開となりました。

110円は円安なのか円高なのか。

その評価はどうやら政府と世間でギャップがあるようです。


■政府内の警戒感は強くない

麻生太郎財務相は、一方向の為替の動きには断固とした対応をすると発言しつつ、適切な水準への言及を避けています。

いったん105円台まで円高が進んだ際も、経済への打撃を懸念する声は政府内で少なかったようです。

楽観視できる根拠はいくつかあります。

1つ目は、購買力平価でみた場合の現状の為替水準が、円高でないということです。

ドル/円の購買力平価は企業物価ベースでみれば103円程度で、現在の110円は円安水準と言えます。

2つ目は、安倍晋三政権発足から1年半が経過した2014年夏場まで100─102円程度で推移していましたので、当時と比較すると円安水準と言えます。

日本の産業構造が大幅に変わった点も影響しているようです。

国内雇用者の7割は非製造業が占め、利益総額も製造業の2倍となっているため、製造業が円高で減益になっても非製造業が増益になれば、日本経済全体として打撃にならない、とみています。


■アベノミクス逆転を警戒する世間

世間、というより市場関係者は現在の状況を警戒しています。

その先駆けとなったのがトヨタの減益です。

トヨタは先の決算発表で、4割減益予想を発表し、市場に衝撃を走らせました。

幸い、「トヨタショック」として市場は混乱しませんでしたが、悪状況であることに変わりありません。

円高で企業業績が悪化、株安につながり、株安がリスクオフの円高を招けば、いわゆるアベノミクス相場は逆回転を始めます。

市場関係者の中でも、105─110円のドル/円水準が日本経済に決定的なダメージをもたらすとの見方は少ないようですが、円安に支えられた経済状況で、円安の柱が外れた場合の影響は計り知れない、という見解です。


■適正は市場が決める

政府内でも適正な為替水準については「政府ではなく市場が決める」とも発言しています。

日本経済にとって「快適な水準はどこか」は、特定化を避けています。

為替に日本経済が依存するのではなく、強い日本経済を再構し、現在のような為替の動向で日本株が売買される状況を打破してほしい、というのが私見です。

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